たぶん、主人公②
「わあ、ヨーロッパの街並みだ〜!」
公爵家の建物やすでに目にした人々もそうだったように、街中でも洋風の建物や人々が目に映る。日本で暮らしていたカリナには目新しくうつり、まるで海外旅行に来たような気分だった。
「ヨーロッパって?」
「あ、前世の……前に暮らしてた国からずっと遠いところだよ。いつか行ってみたいなと思ってたの。」
「ふぅん。じゃあ僕と来られてよかったね。」
カリナが前世の話を言い淀んだことに気づき、レヴィが優しく笑う。
「カリナ、何かお揃いのものを身につけようよ。なんだか不思議とそうしたいんだけど、どう?」
それが憐れみからか、愛おしさからなのか、カリナにも、そしてレヴシオン本人にも分からないそのセリフは、それでもカリナを抱きしめた。
「うん、すごく嬉しい。私もそうしたいな。」
なぜか少ししんみりしてしまって、反省する。
実質、カリナがこの世界で行動するのは今日が二日目だ。落ち込んでしまっても仕方がなかったが、カリナは前を向きたかった。
「ねえ、あっちから美味しそうな匂いがする!食べ歩きってしてもいいのかな?見に行こう!」
心配させないように、不安だと悟らせないように、笑顔で二人に呼びかける。
私は幸せだ。私は恵まれている。そう言い聞かせて。
しばらく街を散策すると、城門の前に差し掛かった。
そういえばこの世界にはモンスターとかいるのかな?冒険者とか、討伐とか、みんなで一狩り行ったりするのかな?
「ねえ、レティちゃん、門の外って……。」
「きゃー!」
カリナが口を開くと同時に門が開き、血塗れの男たちが数名入ってきた。
辺りはざわつき、穏やかだった街並みが一変する。
「誰か回復魔法を使える人はいないか!もうポーションも残っていないんだ!」
「回復だけじゃない!はやく騎士団へ報告だ!魔獣の数が多すぎる!手が空いてる騎士や魔法使いを集めてくれ!」
聞く手間が省けた、と言うのは野暮だろう。
カリナは回復も魔獣も私が、と言い出したいのをぐっと堪え、レティちゃんに急ぎ尋ねる。
「レティちゃん、近場の洋服屋さんってどこ?」
レティの案内で少し古びた洋服屋へ駆け込む。
「突然ごめんなさい。今とても急いでいます。顔の隠せるものは何かあるかしら?変装をしたいの。悪いことはしないわ。」
「あらあら、美人さんだものね。変な男に追いかけられているのかしら。」
少し年配の女性が手を動かしながら受け応える。
「素敵なドレスを着ているんだもの。こんなのはどうかしら?」
その手には、ヴェールのついた白色の花冠が握られていた。
白のヴェールは幾重にも重なり、ある程度顔の認識が阻害されるようだった。
「素敵ね!ありがとう!こちらを頂戴。支払いはこの子がするわ。先に行くわね!」
「あらあら、急いでいるのね。気をつけてね。」
素敵な店員さんでよかった。
さて、これで私がカリーナ・カタブレアであることは一目では判断がつかないはず。
そうだ、認識阻害魔法とか使えないかな。
って言っても魔法名思いつかないな……。
「ヴェール。……とか。」
どの程度効果があるかは分からないけれど、やらないよりはいいよね。
カリナが門前に戻ると、怪我の大小あれど、怪我人の数が増えて集まっていた。
そして彼らは揃って口にしていた。
「あの人がいれば魔獣はもう大丈夫だ。」




