たぶん、規格外⑦
レヴィオンが何か唱えると、レヴィオンの口から煙がもくもくと現れ、レヴィオンの全身を包んだ。
その煙は瞬く間に広がり、先ほどレヴィオンが飛んでいた位置から垂直に床まで、細長い煙が出来上がった。
そして煙が徐々に薄れて全容が見えるようになると、そこにはレヴィオンの鱗と同じ黒色の髪を持つ人間が立っていた。
「久しぶりに人型になったな。服装とかどう?この時代にあってる?」
サラサラストレートな黒髪はつい触れたくなるような輝きを放っている。センター分けから覗く黄金の瞳に見つめられ、思わずドキッとする。
「さすが……と申しますか、そのようなことも出来るのですね。お召し物も素敵でございます。後ほどサイズを確認の上、着替えを手配いたしますね。お二人の学園生活への懸念はもうございません。」
「うん、よろしくね。」
かわいいドラゴンを連れての学園生活!と思っていたらイケメンが出てきてしまった。なんてこった。
これ、レヴィオンが攻略対象だったりしない……?攻略対象との積極的な交流は避けたいんだけどレヴィオンの護衛は心強いしなあ……。
カリナが驚きと困惑とで少し頭を抱えながら唸っていると、攻略対象予備軍の黒髪イケメンがコツコツと足音を立て近づいてきた。体を屈めてカリナの顔を覗き、瞳をじっと見て言った。
「カリナ、僕に学園用の人の子っぽい名前付けてよ。」
突然の無茶振りに目を見開く。たぶん口も開いている。
「え、えっ?名前?私が?」
「うん、カリーナはレヴィオンって名前をくれたけど、他の人に呼ばれたくないから。」
なるほど。カリーナちゃんとレヴィオンの絆は強いと見た。
「レヴィオン……。レヴィ……。レヴ……。レヴシオン……とかどう?」
ドラゴン名と人型名で差があり過ぎても覚えにくいし。前世で気に入っていたゲームのキャラ名だけど……いかがでしょうか。
「ふぅん。レヴシオンね。いいじゃん。」
レヴィオン改めレヴシオンは何度か名前を繰り返して口にする。
そして気に入ったのか、納得したのか、にっこり笑った。
「ありがとカリナ。レヴィオンからあまり離れない名前を選んでくれたんでしょ。人型の時、カリナはレヴィって呼んでよ。ねえレティ、家名もどうにかできるよね?」
「レヴシオン様を縁戚として迎え入れるよう、旦那様に進言いたします。」
「レティの優秀なところ大好きだよ。レティは僕のことレヴって呼んでいいよ。それから分かってると思うけどレヴシオンの姿の時は縁戚として振る舞ってね。」
「はい、かしこまりました。レヴ様。」
レヴシオンの言葉には、ドラゴンだと悟られないように、という含みがあった。
ドラゴンとしてのプライドもあるだろうに、カリナの立場をよく理解して、配慮してくれていることが嬉しくて、カリナは思わず抱きついた。
「レヴィ、ありがとう。私自身はあなたに会ったばかりだけど、あなたのことが大好きよ。」
レヴシオンの胸に顔を埋め、温もりを感じる。なんて頼りになる温もりだろう。
「不思議だね、僕も知り合ったばかりのカリナのことを愛おしく思っているよ。」
そう言うと、レヴシオンはカリナを優しく抱きしめ返し、まだ痛々しい包帯のある頭を撫でた。
二人は短いような、長いような時間をそのまま過ごした。
「レティ、カリナが寝てしまったらベッドまで運べばいい?」
優しい声が上から降ってくる。
まさか寝ませんよ、と思っていたのに身体が動かない。一日の疲労が随分溜まっていたらしい。
大丈夫、自分で行くよ。と言ったのは心の中だけで、次に目を覚ますと目に映るのはまた天蓋と手元のフリフリだった。




