たぶん、規格外⑥
カリーナの召喚に応じて契約した規格外のドラゴンが、召喚主を探している。
……えー?これってやばくなーい?
手に負えるのか分からない未知の生物に、召喚主は妖精になりましたと言ってどうにかなるのだろうか。いやむしろどうにかなってしまうかもしれない。この屋敷ごと。
「ねえ、聞こえてる?カリーナはどこ?おーい。」
ドラゴンがカリナの瞳を見つめて問いかけてくる。またもや背中に汗が滴る。目覚めてから今日一日、ギリギリの戦いが多すぎる。詰め込みすぎだ。
「……目の前に、」
目の前にいるのがカリーナに決まっているでしょう。
「……いるのが、」
いるのがカリーナに決まっているでしょう。
「……カリーナに、」
カリーナに決まっているでしょう!!!
「召喚されたカリナです。」
目の前にいるのが、カリーナに召喚されたカリナです!!!!!
自分でも何を言っているのか分からなくなり、目を細め口を狭め、この場から存在を消す。
カリーナはどこ?なんて確信を持って聞いてきている強大な相手に、目の前にいるじゃないの!と開き直る勇気はなかった。
いらないよね、そんな勇気。
「は?」
ドラゴン様が呆れた声を出す。
ですよね〜〜〜!
心の中で両目から滝のような涙を流して同意する。意味わからないよね。何言ってるんだろうね、この小娘は。
ただドラゴンを見てみたい、そんな些細な願いだった。まさかこんなことになるなんて。
……やるか。もう戦うしかないか。さっき魔法の練習したからきっとなんとかなる。
長年生きているらしい個体とどれだけやり合えるかは分からないけれど、せめてレティちゃんを筆頭に屋敷の人が逃げる時間くらいは稼ぐよ。
腹を括り「レティちゃん、下がって。」と口にしようとしたその時、レティちゃんが先に口を開いた。
「発言をよろしいでしょうか。カリーナ様は妖精になりました。」
「じゃあこの子は?」
「カリーナ様が召喚されたカリナ様で違いありません。」
レティちゃんは淡々と、ことの経緯を話した。
それで納得するのか〜!?大丈夫なのか〜!?と内心ヒヤヒヤしているカリナをよそに、ドラゴンが笑う。
「ふぅん。なんだか面白そうだから僕がカリナの学園生活の護衛をしてあげようか。」
突然の前向きな提案に腰が抜けてしゃがみ込む。
「……えっ……えっ!?護衛!?……というか怒ったりとか契約白紙とかそういうのはないですか……?私カリーナちゃんじゃないんですけど……。」
「カリーナじゃないけどカリナのこと気に入ったからいいよ。召喚された者同士仲良くしようよ。」
敵に回らなくてよかった〜〜〜!!!
カリーナちゃんが強いのは分かってるけど、私がドラゴンに勝てるかどうかは話が別すぎてもう嫌になってたところ〜〜〜!!!
「ねえ、僕の名前はレヴィオン。カリーナが付けてくれたの。僕の名前を呼んでいいのはカリーナだけ。……だったけど、カリナも呼んでいいよ。」
「いいんですか……!?」
「敬語もやめてよ。友だちとして学園生活したいな。」
「え、それならお言葉に甘えて……。レヴィオン、今日からよろしくね。」
まさかこんなにも頼もしくてかわいい友だちができるなんて!
鞭多めの一日にやっと訪れた飴。ふわふわと夢心地で幸せを噛み締めていると、「念のため確認させていただきたいのですが」とレティちゃんが口を開く。
「ドラゴン様もご存知の通り、カリーナ様の能力は秘匿扱いでございます。ドラゴン様と契約されていることも、ほんの数名しか知りません。差し出がましいとは思いますが、少し工夫を加えないと今の話は難しいかもしれません。」
こんなかわいい子連れて学園生活はっぴー!と思っていたのに、ドラゴンとの契約も内緒な感じなのね。
「そっか……。それなら残念だけど気持ちだけ受け取っておこうかな。護衛を申し出てくれて、楽しい学園生活を夢見させてくれて、ありがとう。レヴィオンの部屋に毎日顔を出すから、友だちではいてほしいな。」
なんで気に入ってもらえたのかはよく分からないけど、カリナとして初めてできた友だちだもん。学園生活は残念だけど、友だちでさえいてくれたら十分だよね。
「……少しの工夫ね。ねぇ、こういうのはどう?」




