たぶん、規格外③
重いドレスを脱ぎ、少し動きやすいドレスに着替える。
特に着替える必要もないように思うが、魔法を試してみたい、というカリナの気持ちを汲み取ったレティが着替えるように勧めたのだ。
公爵家の広い敷地の端に、その植物園は存在した。
ガラス張りでドーム型のその建物は、受付で入場料を払いたくなるような立派さだった。
「こんなところで魔法の練習をしてもいいの?」
予想外の場所に連れてこられた上に、その建物の立派さに驚きを口にすると、レティちゃんが微笑んで答える。
「はい、こちらはカリーナ様が造られたドームでございますから。表向きはただの植物園としておりますが、内側からも外側からも魔法は通りません。彫刻などはカリーナ様の力ですぐに元通りに直せますし、植物たちも急速回復するようになってますので、自由にご利用いただけます。」
「きゅ、急速回復……?」
つまり植物に対して魔法を使える仕様ってこと?カリーナちゃんなんてものを造ったの……!?
それに壊れたものをすぐに元通りに直せる、って言った?それはこの世界でどの程度の魔法なの?
早速中へ入ると、外観に負けず劣らず、立派な植物園が広がっていた。
前世で見覚えのあるようなものあれば、全く見たことのないようなものもある。
中でもこちらに笑いかけているように見える植物の姿はなんとも奇妙だった。
「……ほんとにここで魔法使っていいの?」
あの笑顔の植物に攻撃魔法をしたら怒るのだろうか?見て見たいような見て見たくないような、ダメと言ってもらえれば止められるはずだった好奇心の背中を、レティちゃんは押してしまった。
「はい。ぜひあちらの植物に向かってお試しくださいませ。そうですね、手始めに炎の槍をイメージして手をかざし、ファイアと口にしてみてください。」
もう止められない。怒らせたい……!逸る気持ちの前に、一つ気になったことを問いかける。
「それってファイアジャベリンとかじゃないの?ファイアって言うだけでいいの?」
この際、手始めがファイアボールではないことや、いかにも上級っぽいファイアジャベリンをいきなり使わせようとしていることは置いておく。たぶん全部突っ込んでたら前に進めない。
「カリーナ様は属性を口にするだけで、希望の魔法を再現されていました。一般的には詠唱後のファイアジャベリンが正しいですね。」
「なるほど……?」
カリーナちゃんって本当に規格外なんだ。
私と似てるって言っていたけど、スペックが桁違いに異なるんですが……。
「まあいっか。では早速。ファイア。」
思考を停止することが特技になりそうだ。
考えてもしょうがないので抑え込んでいた好奇心をサクッと解放する。
かざした手のひらの先に魔法陣が浮かび上がり、そこからイメージした通りに炎の槍が飛び出した。
炎の槍は手をかざした方向……つまり例のニコニコプラントへ当たる。
当たった直後は炎やら煙やらで植物を視認することはできない。まだかまだかとワクワクしていると、レティちゃんが口を開く。
「カリナ様、ぜひ一度ピアスをお外しください。」
そういえばルイス団長が魔法制御だかなんだかって言ってたな。
耳を触ると、着替えの時にレティちゃんが付けてくれた大ぶりのおしゃれピアスが耳たぶに垂れ下がっている。そこからもっと上、右耳の軟骨のあたりにリング型のイヤーカフのようなピアスが付いていることに気づく。
「ええ、そちらのピアスです。」
「これ取ってもいいの?」
「こちらのドーム内であれば構いません。外ではお控えくださいね。」
じゃあ取ってみるかと呑気ピアスを外すと、炎と煙が落ち着いたニコニコプラントが顔を覗かせた。
やはり、ニコニコプラントはオコオコプラントになっていた。




