たぶん、規格外①
さて、場面は変わりまして私が今いるのは客室。
やけにしっかりした椅子には長い背もたれがあるというのに、私はといえば背筋を伸ばして浅く腰掛けているところ。
着慣れないドレスに着替えて、履き慣れないピンヒールを履いて、ドキドキしながら部屋を移動したけれど、カリーナちゃんの身体にはこれが普通みたいで、転びそうになったり歩き辛かったりということはなかった。
そしてさっき初めて鏡を見たけれど、とっても美しいお顔だった。照れちゃった。
悪役令嬢だと分かりやすいくらい綺麗な顔のクルクルブロンドヘア。ヒロインは黒髪かピンク髪の守りたくなるかわいい系に違いない。
中央に花の飾られた大きなテーブルを囲み、向かいには甲冑もといチェルティ団長が座っている。
壁際にはメイドと執事が数名と、チェルティ団長とはまた別の甲冑が数名控えている。
前世の記憶しか持ち合わせないカリナにとっては意味のわからない状況ではあるが、レティちゃんがすぐ後ろに控えてくれているので、まだ正気を保っていられる。
「大変お待たせいたしましたわ。」
カリナが口を開くとチェルティ団長がすくっと立ち上がり、声をあげて応える。
「先ほどは大変失礼いたしました。気が急いてしまいました。」
なるほど、そこまで非常識な人ではないらしい。
「構いませんわ。私何も気にしておりません。誰にだって大なり小なりミスすることはありますもの。」
「寛大なお心遣いに感謝いたします。」
「さて、わざわざ訪ねてきていただいたご用件をお伺いしても?」
こくりと頷くと、チェルティ団長は椅子に腰かけ話し始めた。
「単刀直入に申し上げます。ご不快であることは承知の上で、カタブレア公爵令嬢には学園をお辞めにならずに在籍していただきたいのです。」
はい、きました。公爵令嬢。悪役令嬢ポジションじゃないですか。カリーナちゃん苗字カタブレアって言うんだ。肩フレア。カタブレア。覚えられそう。
「お嬢様。」
何も答えずカタブレアについて考えているとレティちゃんの声が降ってきた。
チェルティ団長に目をやると真剣な眼差しで願うようにこちらを見ている。
えーっと、なんだっけな。カタブレア公爵令嬢に学園を辞めさせたくないって話?
あの婚約破棄パーティーは卒業パーティーじゃなかったってこと?それともお前は卒業できないからなってこと?
困ったな。何も分からない。
考えあぐねてレティちゃんを見上げると、レティちゃんは微笑み、それと同時に扉が開く。
「失礼するよ。大切な娘の大事な話だろう。私も同席させてもらうよ。」
「(きっと)お父様!(ね!)」
「これは……カタブレア公爵。お忙しいとお伺いしておりました。わざわざお時間をいただきありがとうございます。」
私の父は外面だけ良くて、実際私の進路には興味なんてないくせに、良い学校に行かせることだけは譲らなかった。
きっと同じようなお父様ってことだよね、カリーナちゃん。
「私のためにありがとうございます。けれどお父様もお忙しい身、私一人で大丈夫ですわ。」
先制攻撃だ!帰れ!
「何を言う。一大事だろう。一緒に話を聞こうではないか。さて、団長殿はどんな話を持ってきたのかね?」
「はい、カタブレア公爵令嬢に学園を辞めないでいただきたく参上いたしました。」
「先日の歓迎パーティーでネリオドラノの坊ちゃんが何やらやらかしたようだが。」
「はい、すでにネリオドラノ公爵家には停学の通達が届いているはずです。」
「退学ではなく停学か。まあ謹慎ではないだけよいか。」
お父様が口を開いた途端、チェルティ団長と畳み掛けるように会話が続いていく。入る余地がない。
でもおかげさまで少し状況が分かった。きっと碌でもない親なんだろうけどいてくれて助かった。さんきゅーパパ。
「しかしカリーナの能力を隠すからこんなことになるのではないか?傷つくのはうちの娘なんだぞ。」




