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第二話 魔法の仕組み

「…で、どうするんですかこれから」



 ナナシが封印されていた泉からだいぶ歩いた。

 休憩は何回かとっていたが、体力の無い俺には苦行に過ぎない。

 それに、木陰こそあれど今は夏の初めだ、森に入ることを考えて長袖を着てきたこともあってかなり辛い。



「とりあえず今日はここらへんで野宿をしましょう。泉の周りは結界が張られていたようだったので安全でしたが、この辺りの探知は終わっていませんし、魔力を使ってしまって逆に探知されてしまうようなことは避けたいです」



 野宿…

 冬よりは夏の方がマシだが、死ぬつもりで森に入ったのでロープぐらいしか持っていない。

 下着を貫通して服にまで汗がしみ込んで張り付き気持ちが悪い。


 夕方になってきたころ、幸いにもちょうど良い小川があったのでここで野宿をすることにする。


 ナナシには何かと知識があるらしく、器用に木の棒で火を起こしてプロ顔負けの焚火を設置すると、そこら辺から食べられる野草やキノコの類を集めて焼く、蒸すなどの簡単な料理を作り始めた。

 料理の合間に、小川の岩を俺が持ち上げ、ナナシが魚を捕まえるという共同作業で何匹か小さい魚を捕まえる。


 そうしている間に出来上がったらしく俺たちは川から上がると、ナナシは俺に大きな葉で包まれたキノコの蒸し料理を差し出してくる。

 手でつかめるぐらいに冷ましてから火の通った謎キノコと謎の葉を口に入れると、案外美味しい。

 木の棒に差した魚も焼きあがったらしく、交互に味わう。


 ああ、塩が欲しい。

 こんなにも調味料を欲した瞬間は今までに無いだろう。


 腹が空いていたこともあって黙々と食べてしまったが、ナナシが全く手をつけていないのに気が付いて食べる手が止まる。



「食べないんですか?」



「私は食べなくても生きていけますから、気にしないでください。食事は娯楽扱いなので」



「そうなんですか」



 食べているところをじっと見られているとなんだか心地が悪い。

 そんな俺の心を読んだのか、ナナシは立ち上がって寝床になりそうな場所の石をどける作業に取り掛かり始めた。


 しかし、二人で食べるものだと思い込んでいた。

 この量を一人で食べきるのはだいぶ辛い…


 そう俺が考えてしまった瞬間に、ナナシがよそよそしく作業をやめて帰ってきた。



「…食べるの手伝ってくれるんですか」



「ギルさんが食べきれないなら…」

 


 ナナシは残っている焼き魚を食べ始めた。

 恐ろしいことに骨ごと砕いて食べているようで、ガリガリという音が聞こえてくる。

 二人で話すこともなく黙々と食べていると、ナナシが唐突に話しかけてくる。



「私…もうギルさんの友だちですか?」



「と、友?」



「その…嫌だったらアレなんですけど…私はギルさんと対等な関係ですので、関係を言葉にするなら友だちかなと思いまして…」



「俺と神様のあなたが対等な関係…?」



「私一人では何もできませんし、私が目的を達成したときにはギルさんもこちら側にくるかもしれませんので、対等だとは思うのですが…どうですか?」



 そう言われると少し納得してしまうが、友というほど親密ではないし、力に差がありすぎるので全然対等ではないのではという気持ちもある。

 それに、俺のプライバシーだけ侵害されまくっているし…

 


「嫌では無いですけど…それなら心を読んでくるのはやめてください…」



「そしたら、友だちになってくれますか?」



「…分かりました、友だちになります」



 何でこいつはこんなに友という関係になりたいのかという疑問はさておき、心が読まれなくなったのは良い収穫だった。

 勇気を出してみるものだと、しみじみ思う。



「人間は友だちになったら、もっとこう…仲の良い感じの話し方をお互いにするんだよね。よろしくね、ギルさん、いや…ギルくん…?」



「ギルでいいですよ、俺もナナシって呼ぶので」



「じゃあ、ギル。よろしくね。ギルもその…敬語だっけ?やめてよ」



「わ…分かったよ」



 気まぐれで殺されるかもしれない相手に敬語やめるのは怖すぎる。

 まだこいつが何で封印されてたのかの詳しい理由も知らないし、ひどい扱いを受けるかもしれないという底知れない不安は払しょくできないままだ。



 そんな会話をしているうちに二人で料理を食べきって、近くの草木に引火しないように念入りに水をかけて消火する。

 本当は魔獣除けで火をつけておくべきだが、夜中も暑いこの時期に火の近くで寝るなんて最悪な夜は過ごしたくないし、ナナシが見張りをしてくれるらしいので問題は無いらしい。


 柔らかい芝生に寝転がり寝ようとするが、どうも緊張して寝ることができない。

 気を紛らわそうと、ずっと抱いていた疑問をナナシに投げかける。



「…ナナシは、どれくらい強いんだ?」



「どのくらいか…魔法の知識は結構あるほう?」



「まあ…基本的なことは義務教育で習うしな」



 この世界のほとんどは魔法によって支えられている。

 火を起こしたり水を出したり、人間が想像できる範囲の「こんな魔法があったら便利だな」といったものは昔から研究され、民間人でも多少は使えるように魔法が開発されている。


 全ての魔法の形式は決まっていて、まず魔法の中身を決める単語を唱える。

 例えば、火を起こしたかったらまず最初に『火炎(ファイア)』と唱える。


 その次に、魔法の強さを決める数字のようなものを唱える。

 大昔、まだ神が人間に干渉していたという時代に伝えられたという古い文字だ。


 弱いものから順にα(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)と続いていき、23、24程の強さがあったと思う。

 しかし、現在人間が使えるのはほんの一部でしかなく、一般人はβ(ベータ)まで使えたら良いほう、軍に所属している魔法騎士なんかはギリギリ4番目のδ(デルタ)、今までの人類の最高記録は6番目のζ(ゼータ)までだ。

 

 そして最後に、火を起こしたいところを凝視する。ファイアの場合、そこに燃料があれば燃えるが、空中を見た場合一瞬火が起こって消える。



 まとめると、


 1.魔法の種類を唱える


 2.その魔法の強さを唱える


 3.使用者の魔容量が足りていれば、魔法が発動する



 魔容量というのは直接目には見えないが、存在だけは認められている容器のようなものだ。


 魔法という水を注ぐたびに容器は満たされていき、水が溢れてしまうと耐え難い眠気と疲労感に襲われてしまい、魔法を完全に使えなくなる。

 明確な限界こそ無いものの限界を大きく超えてしまうとほぼ気絶のような眠りに落ちてしまうため、魔法の使用には感覚と経験が必要である。


 それを一般的には魔容量と呼んでいる。


 一回で魔容量を大きく上回ってしまうような魔法は、そもそも使うことができないという制約もある。

 自分の訓練が足りていない場合、適当にζ(ゼータ)なんて唱えても何も起こらない。



「神にも位のようなものがあってね、第一位、第二位、第三位、第四位があるんだけど、第四位は11番目のλ(ラムダ)、第三位は17番目のρ(ロー)、第二位と第一位は24番目のω(オメガ)まで使えるの」



「俺たちが使ってる魔法が一気にしょぼくなったな…」



「だって世界作るときに使ったりしなきゃいけないから…私が使うのはλ(ラムダ)までだから、魔法の級数に関してはあまり期待しないでね。自身があるのは剣術のほうだからさ」



 ナナシが第四位、神の中では下だが、人よりは圧倒的に強いじゃないか。

 やはりあの絵画と同じようなことをして封印されたとかじゃないか?


 もしナナシの言っていることが本当なら、もっと上の神にチクったりはできないのだろうか。



「ナナシより上の…第二位とか第一位に告発することはできないのか?」



「まあ確かに、神同士の争い、ましては封印なんて御法度だから一発アウトだろうけど、第一位は大昔に死んで、第二位のほとんどが後を追い、実質的にこの世界を管理している第三位は遊んでるか寝ているか好きに過ごしているだろうから期待はできないね」



「そうか…」



「だからこそこっちも自由に動けるから良かったのかも」



 ナナシも俺の隣に仰向けになり、夜空を眺める。


 本当に神がそんな杜撰な管理をしているだろうか。

 俺を騙すためにそう言っているのではないのか?


 まあいいか。

 もしこいつが捕まったり、また封印されたりしたら、俺は被害者として泣きつけば何とかなるだろう。



「明日は森を抜けて、ヒューダル王国に行くよ。あの国は何か悪い予感がするし、情報を得られると思うんだよね」



 だから早めに寝なよという声を聞きながら、半ば現実逃避をするように俺は本格的に目を閉じた。

 この世界ではは8歳ごろに基礎学校に入学すること義務付けられていて、3年程で卒業できる感じです。卒業した後は家業を手伝って将来的に継ぐ人がほとんどでしたが、最近では家業のない家が増えてきている影響でギルのように就職をしたりするのが基本になってきています。才能のある人は国から招待され、魔法学校などのより高度なことが学べる学校で数年間勉強した後に国の機関に就職したりします。

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