七話
教室へ戻るとちょうど大河が凛に話しかけているところだった。どうやら連絡先を聞いているらしい。
「ちょっと大河!無理やり連絡先聞いたりして凛が嫌がってるでしょ!やめなさいよ!」
2人の間に割って入るようにして現れた1人の女生徒。華奢で丸い顔立ち、目はクリクリでショートヘア。凛とは違うベクトルの可愛い系の美少女である。確か名前は…
「なんだ彩乃!突っかかってくんじゃねえよ」
「2人とも落ち着いてー、あやちゃん、私別に嫌じゃないから大丈夫だよ。」
「でも…」
「ほら、お前はお呼びじゃないんだ帰った帰った」
「あっそ!別にいいし、放課後私たち2人で遊ぶ約束してるから。ねー?凛ちゃん?」
「ねー」
「おい!お前いつの間に凛ちゃんとそこまで仲良くなったんだ?」
「あんたには関係ないでしょ」
「ちくしょー!俺も行きてー!」
大河はそう言うと俺の方に目をやって、
「いいこと思いついた。じゃあ太郎も誘って4人で遊ばないか?これなら男女2:2で丁度いいし。太郎も行きたいだろ?」
すると凛もそれに乗っかって、
「賛成!4人で遊ぼう」
大河め、俺を巻き込みやがって。とは言っても入学初日にそういった親睦を深めるイベントに参加できるのは願ってもない話である。俺はその誘いを二つ返事で快諾した。
「どうも、初めまして田中太郎です。君は確か成瀬彩乃さんだよね?合ってる?」
「うん、合ってる。それと彩乃でいいよ。堅苦しいのは嫌。」
「そっか、じゃあ俺も太郎でいいよ。ごめんね、2人で遊ぶ約束だったんでしょ?」
「気にしないで、大河が言い出したことだし」
「そっか、ありがとう。そういえば2人はとても仲が良さそうだけど、どこで知り合ったの?地元が一緒とか?」
「別に仲は良くないけど、小学校の頃からの腐れ縁なんだよ」
「幼馴染ってやつ?」
「まあそんな感じ」
こんな可愛い幼馴染がいるなんて、大河のやつ正直羨ましい。
その後、クラスで委員会決めなどが行われた。ちなみに俺は図書委員になったらしい。正直話し合いをあまり聞いていなかったので気づいたらなってた感じだ。多分大した仕事はしないだろう。多分。そういえば女子の方の図書委員は彩乃だった。知っている人と組めるのは心強い。そして凛と大河はうまいこと委員会決めを潜り抜け、無事無職の地位を獲得していた。許せねえ。