十話
ファミレスを出ると外はすっかり陽が落ちて暗くなっていた。帰り道が別なので大河と彩乃とはそのまま駅前で解散し、俺と凛は改札を抜け電車に乗った。電車はかなり空いていたので俺たちは座席に並んで座った。不動ヶ峰高校の最寄駅は郊外にあるため、通勤ラッシュ、帰宅ラッシュには縁が遠い。そこは非常に高評価ポイントである。駅前があまり栄えていないので、放課後の遊びは多少制限されるが。
「いやあ今日は色々あって疲れたねー太郎」
「ほんとだよまさか一発目から遅刻するなんてなあ」
「でも遅刻したおかげで私と仲良くなれたでしょ?」
「遅刻したせいでお前と仲良くなる羽目になるなんてなあ」
「あーひどい!そう言うこという人には私の連絡先教えてあげないから」
そういえば凛とはまだ連絡先を交換していなかったな。
「いつ俺が欲しいなんて言ったんだ」
「そういう顔してた」
大河みたいな顔ということだろうか?大河と俺では顔のジャンルがまったく違う気がするが。
「そんなわけないだろ」
「じゃあ、いらないの?」
少し悲しそうな表情を浮かべる凛。
「うそうそ冗談。交換しよう」
「だよねー」
俺がQRコードが映されたスマホの画面を凛に見せると凛はスマホのカメラでそれを読み取った。すると早速、凛からメッセージがきた。
『よろしくー!』
これは俺の持論だが、連絡先を交換した最初のメッセージでスタンプを送られるより文字を送られる方が嬉しい。なんかスタンプってあなたと会話する気ないですよって感じしない?俺だけ?それはさておき、
『よろしく』
俺も凛にメッセージ。
隣にいるのにLINEを通じてのやり取りは少しこそばゆい。
凛がなにやらこっちを向いて笑みを浮かべるのでどうしたのか尋ねると、
「なんか入学して最初に仲良くなれたのが太郎でよかったなって」
と言った。ちょっと待ってくれと。待てと!こんなの俺以外だったら落ちてるだろ!こいつ自分の可愛さを分かっててやってるのか?だとしたらとんでもない悪女じゃないか。
「あ、ありがとう俺もよかった凛と仲良くなれて」
凛の言葉に少し動揺してキモい感じになったがこれは俺の本音である。彼女の飾らないストレートな物言いには人として非常に好感が持てる。そうこうしているうちに電車はうちの最寄駅に着いた。
「じゃあ俺ここで降りるから」
「そっか、今日はありがとう!また明日ねー」
「うん、また明日」
電車を降りて後ろを振り向くと凛がこっちを向いて手を振ってきた。全くかわいいやつめ。俺も周りの目を気にしつつ軽く手を振り、降りた電車が出発するのを見送った。




