またな
「ひっく…グス…」
俺等が固まっていたら、いつの間にかルカは泣き止んでいた。
「そこまで反省してくれるなら、8分の1くらいは許そう」
「グスッ、どうしだら許してぐれるのよ…!」
「いや、だから8分の1は許したって」
「たった8分の1じゃない!!」
涙は完全に引っ込んだらしい。
「それだけお前がオレを怒らせたって事だ」
(あんだけ泣いて謝っても8分の1…ヴァンの怒りは凄まじいな…)
「そんな…!」
「フン、2分の1許して欲しいなら、ルルカとの会話を全て聞かせろ」
「分かった…」
(そうだ。会ったって言ってたもんな)
「さっき言った通り、5年前に扉を勢い良く開けて…」
_過去
「たのもーーー!!!」
身なりの良い白髪の子が叫びながら、入って来た。
「!!!?」
「ハッハッハー!私はルルカ!!貴方の生まれ変わりと言われてる、天才少女だ!!!」
ピースを右目の横に添える。
「はぁ!!?私は生きてるわよ!!!だから、貴方は生まれ変わりなんかじゃないわ!!!」
私は日頃の鬱憤を八つ当たりにする様に否定する。
「分かっているとも。だが、私もこの噂は心底嫌でね」
やれやれと顔を横に振る。
「そうよね!?高貴で高潔な私と下賤で卑劣な貴方と比べるなんて烏滸がましいにも程があるわ!!!」
「王族だから下賤では無いが…卑劣と言う言葉は甘んじて受け入れよう!」
胸を張り堂々と言い放つ。
(このガキ、今何て言った…?王族…まさかね…)
「ん゙ん゙、本題だ。私は貴方を馬鹿にしに来た」
キリリと『私は至極真面目だ』と言いたげな顔をする。
「はぁ!!!?」
本日2度目のマジギレ。
「や〜いや〜い、傲慢で卑怯な英雄〜〜私を殴れるものなら殴ってみな〜〜!」
「馬鹿にするな!!!」
私は殴りかかるが難なく躱され、私が地面に転がった。
「ふむ、武術は人並み以下だね」
「この!!」
起き上がり顔めがけて殴りかかるが、躱され鳩尾に拳を一発入れられた。
「カハッ…!ゲホゲホ!!この私を殴るなんて…!」
「罪人風情が『この私』か…ククッ、面白いね」
「私は罪人じゃない!!」
「だが、それはどう説明する?」
左足に着けられた枷を指差す。
「こ、これは…」
「まっ、愛だの恋だので行動した愚かな貴方には分からないか」
「っ…!あ、貴方だったら何で行動するのよ!!?」
「正義と欲望。だから卑劣という罵りは甘んじて受け入れるって言ったんだよ」
「訳分かんないわ!『正義と欲望』?ほぼ反対のところにある言葉じゃない!!!」
「私は正義と言う穢れが無く見えるもの、欲望と言う純白がなく見えるもの。これらは似て非なるものだと思うがね」
瞳を閉じ、何かに対して追悼している様だった。
「???」
「分からなくて結構だよ」
優しげに目を細める。
「何よ、その言い方」
「気を悪くさせるつもりは無かったんだけど…」
ムスッとした私を見てクスクスと笑う。
扉の付近に歩いていく彼女を見て私は『うるさいのがやっと帰る』とホッとしていた。
ドアノブに手をかけた後、彼女は暫し考えクルリとこちらを向いた。
「最後に1つ。それは相応の結果だ。けど、私もそっちに行くから待ってて」
数秒の間だけ赤い瞳が妖しげに鈍く光り、その後笑顔を貼り付けてドアノブを捻り出て行ってしまった。
私は何故か背筋がゾッと冷えていく感覚に小首を傾げていた。
(何でこんなガキに私が恐怖してるの…?)
_現在
「こんな感じよ」
「なるほど…」
ヴァンは首を捻り何かを考えていた。
(『正義』ってルルカは何を示しているんだろう…?『欲望』は自分がルルに殺される事とかだろうな…)
「話したわよ」
「ん?あぁ、半分許してやる」
ルカはガッツポーズを決めていた。
「奏夜」
ヴァンが俺の方に体を向ける。
(『正義』…う〜〜ん…考えても思い付かないな…)
「奏夜」
(最早、『正義』とは何だ…?)
「奏夜」
トントンと肩を叩かれてようやく我に返る。
「え…?あ、何だ?」
「もう用は済んだから、ここを出るぞ」
「分かった!」
「上りは大丈夫だよな?コケたりとか…」
「気を付けて行けば大丈夫だろ!…多分」
注意されたのにコケた前科がある為、言い切れない。
「…やっぱ、先に出てろ」
ヴァンは少し悩んだ後、俺を掴み外に放り出す。
「ぎゃあ!」
俺は無様な悲鳴を上げ、放り出された。
「もう2度と来なくていいわよ?」
ルカはシッシッと虫を払うように手を振る。
「ははは、嫌がらせには来るかもな」
「来なくて良いって言ってるじゃない!!!」
ギャンギャンと噛みつくように言うルカを横目にドアノブを握る。
「またな」
振り返りざまに優しげに婚約者だった頃の表情で、声音で微笑みかける。
「…またね」
ぶっきらぼうに、吐き捨てる様に告げた。
ちょ〜〜遅くなりました!!




