ルミ様!!
日が沈みきった住宅街を素通りし、森に入る。幼いルルカの視点だからか家や木は大きく見えた。
「ハァハァッ、ルミ様!!」
「な〜に?ルルカ」
森の中でルルカの母親は黒いローブを身に纏い、寝ている住宅街に住んでいる人達(6人)を縄で縛っていた。
それを紅い円の中に放り込もうとする。
「何をなさろうとしているんですか!?」
ルルカの声で1度止まった。
「何でも良いでしょ〜?」
「答えてください!!」
「分かったわ〜。仕方の無い子ね〜!この子達を生贄にして、魔神様を呼び出そうって思って〜!そうしたら、私とあの人の仲を引き裂いた魔王様は対応出来ずに死ぬもの〜!」
にこやかに答える。それに対して青ざめるルルカ。
数刻前のルルカとルルを見ているようだ。
(『あの人』って誰だろう…?)
「正気ですか!?沢山の民達が死んでしまうんですよ!!?」
「良いわよ別に。たかが平民でしょう?私は死なないんだから気にする事は無いわ〜!」
穏やかな声だった。
「承認しかねます!!『たかが平民』なんてもう数年前の話でしょう!!今は平等の時代です!!法律も陛下と私で変えました!!ですので…!ですので、それを足蹴にする様な台詞は止めて頂きたい!!!」
「グチグチネチネチ煩いわよ!!!」
取り乱しキレるルミ様。
「もう良いわ貴方と話してるだけ無駄!さっさとやって仕舞ましょっ!」
再度投げ入れようとした。
「止めろ!!!」
ルルカが止めに入ったが幼い子供が大人に勝てる筈も無く男性が円の中に放り込まれてしまった。
「ぎゃあああ!!!いだい゙!!いだい゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙!!!」
「!!!」
円の中に入った男性は突如、火も上がってないのに肌が焼け爛れて悶え始めた。
ルルカは自身の身は顧みずに円の中に入り、男性を外に放り出す。
「ぐっ…!」
肌が焼けるように痛い。記憶を読んでいる俺にもその痛さが伝わる。
(痛い!痛い!!痛い!!!それに熱い!!!酷い火傷を負ってるみたいに!!!)
「私の邪魔をしないで!!!役立たずで魔法もロクに使えないクセに!!!私に楯突かないで!!」
円から出てきたルルカに浴びせた言葉は酷いものだった。
「何とか言ったらどうなのよ!!」
パンと頬を叩く。
「貴方の答えを聞かせて下さい。今直ぐこの凶行を止めるか否か」
「絶対に止めないわ!!私がどれだけ我慢してこの時を待っていたと思っているのよ!!それに平民共が死ぬだけで私の夢が叶うのよ!?こんな絶好のチャンスを逃すはず無いわ!!!」
「…分かりました。それが貴方の答えならば、私はそれ相応の対応をしましょう。第一王子としてでは無く…愚かな母親の子供として」
ぶ厚い雲がルルカの感情に合わせたように月を隠す。
「私を馬鹿にしているの!?」
「ルミ様、お覚悟なさいませ」
巨大亀を殺した時に使用した桜色の刀を取り出し構える。
「私を殺す気!!?あ、貴方のだ〜い好きなルルが悲しむわよ!私の事を優しい母親だって信じてるあのアホガキが!ねぇ〜?だから殺さないで〜?」
甘い声になる。
「これ以上、貴方…王家に恥をかかせない様にする為です。腹を括って下さい」
表情から感情が抜け落ちる感覚がする。
「酷わ〜!親を殺すの〜?」
「その判断を私に下させたのは貴方でしょう」
刀を握り直しルミ様に近づく。
「や、止めて!!死にたくない!死にたくないの!!」
「…………」
「お願い、止めて…!」
「もう手遅れなのですよ」
タンと軽やかに踏み込む。
「ごめん…お母様…」
ルミ様に刃が届く直前に消え入りそうな声で呟いた。
ゆっくりと袈裟斬りにされた体が傾いていく。
「…………」
ぶ厚い雲から水が零れ落ちる。その中でルミ様の遺体の側に膝を付き、まだ温かい手を握る。
「貴方の凶行を止められなかった私も同罪です。地獄で先に待っていて下さい。今直ぐとは行きませんが私も…」
_参りますので




