学園の話
「ん゙ん゙、冗談はさて置き。オレが好きな物語を聞かせてやる」
(一人称が『オレ』になった…。それだけ、信頼してくれたのか)
「あぁ、聞かせてくれ」
俺はベッドに腰掛ける。ヴァンも隣に座って来た。
「本を今持ってなくてな。オレの言葉で想像してくれ」
「はいはい。それで、どんな話なんだ?」
「今は撤廃された貴族階級がある、14歳の少年少女の学園の話」
「貴族階級…」
(じゃあ、前世ではその頃に俺は生きていたのか…?)
「登場人物は4人。伯爵令嬢の何でも出来る天才少女ルカとルカの妹で内気なルルナ。侯爵令息の文武両道だが魔法だけが使えないヴァン」
「えっ!?お前が登場人物なの!?」
「まぁまぁ、最後まで聞け。最後にルカの恋人で平民のアーサー。因みにこの物語は実話を元にしている。後、この4人だけは名前を覚えておけよ」
「直ぐ忘れる程、馬鹿じゃない」
「フフフ、そうか。じゃあ、物語に移るな」
「あぁ!」
「貴族階級がまだ撤廃されていない時代に生まれた、伯爵令嬢の天才少女、ルカ。ルカは魔法も勉学も剣術も1度教われば全て覚えて自分のものに出来ました。その妹、内気なルルナは人前だと緊張してしまい、喋れなくなりましたが、剣術だけはルカ以外に負けた事がありませんでした。そのルルナには家同士で決められた婚約が取り付けられました。お相手は侯爵。ですが内気なルルナはその婚約を拒みます。そこで、心優しいルカは『アタシが侯爵様の元に行く!!』と大人達の前で宣言しました。大人達はその心意気に酷く感動し、婚約者はルカに決められました。ルカは侯爵令息の婚約者に会いに行きました。そこで婚約者のヴァンというルカと同い年の子が大人も頭を抱える問題をスラスラ解決していたのです。ヴァンは『何見たんだよ』と凄みます。『凄いわ!私以外でこんなのを解ける人が居たのね!!』ルカは目をキラキラと輝かせましたがヴァンは『小馬鹿にしてんのか?笑いたければ笑えばいい。どうせ、オレは神童と呼ばれているお前には勝てない』と冷たく言い放ちます。それでも、ルカは『そんな事ないわ!!私は神童じゃないもの!それに貴方は、努力してるのでしょう?』その言葉にヴァンは目を開きます。『何で知ってる?』『その、手に付いているインクよ。それを見れば努力してるんだなって分かるわ!だから、貴方は凄い人なのよ!』ヴァンは酷く驚いていました。今までその様な事を言われなかったからです。それからヴァンはルカに懐き、贈り物も沢山しました。
その後3人は貴族学園に入り、楽しい学園生活を送っていました。ですが、それは2度目の夏休みにいきなり崩壊したのです。
ルカは『好きな人が出来たから婚約を解消して欲しい』とヴァンに直接言いました。『何で…?嫌だよ…!絶対に婚約解消なんてしない!!』ヴァンは婚約を解消しませんでした。ルルナにも同じ事を言われました。それでも、解消はしませんでした。
夏休みが開けましたが、婚約解消はせずただただ仲だけが冷えていきました。
それから少し経ったある日、ルカの好きな人がヴァンに会いに来ました。なんと、その男はアーサーと言い、平民ですが学園の生徒会長でした。『ヴァンさん、ルカとの婚約を解消してほしい!』それを食堂で叫びました。『婚約解消はしない』一言だけ言い、ヴァンは食堂から出ていってしまいました。
ヴァンはルカの事を依存と言っても良い程、重く愛していました。『他の奴にルカは渡さない』その一心で婚約解消の話は全て断っていました。それを、学園の先生から言われても、クラスメイトに言われても、しつこくアーサーに言われても。
学園を卒業する頃にヴァンは婚約解消を余儀なくされました。理由は周りの学友達から愛し合うルカとアーサーを引き剥がしたからと虐められ、遠ざけられたからです。ですが、ヴァンは考えました。大好きなルカを自分のものにする方法を。『殺してしまおう。アーサーを…!』ヴァンはその瞬間、黒いオーラに包まれ、練習しても使えなかった魔法が使える様になりました。
闇夜に紛れ、アーサーとルカがデートしている最中に後ろから禁忌とされている闇魔法で殺害しました。ルカは魔法が使えたのでヴァンを直ぐに捕らえる事が出来ました。『何で、アーサーを殺したの…?』『君を自分のものにしたかったから』酷薄に笑うヴァン。憤る、ルカ。『ルカもオレが殺してあげる』闇魔法を使い、ルカを殺しに掛かります。ルカは光魔法を使い必死に抵抗し、後から来てくれたルルナと共にヴァンを封印しましたとさ。お終い」
(何なんだ!!この話!!浮気を正当化してるだけじゃないか!!)
「ルカって野郎はクズだな。悪女だ。悪女!ヴァンは全然悪くない!浮気したルカが完全に悪い。比率はルカ9ヴァン1くらい!!しかも、封印までするって酷すぎやしないか!?ヴァンの封印が解けて出れたからまぁいいが…」
「そこまで怒ってくれてオレは嬉しく感じるよ」
「それに、嵌めたのはアイツ等だし、暴走した理由は俺が死んだからだろう!?」
「そうだな…」
(ん?何言ってんだ?俺)
「オレの為に怒ってくれた奏夜には真実を教えてやる。
オレが婚約を解消しなかったのは相手、つまりはルカの家が金銭的に余裕が無かったからだ。オレの家が支援していたが、それが切れるとなると、間違いなく没落する。だから、オレの一存では婚約を解消出来なかった。
そして、闇魔法が使える様になったのはアーサーを殺す為じゃなくて、奏夜の前世の人が殺されたからだ。
魔王がお前を捕らえたと聞いた時は本当に血の気が引いたよ。急いで魔王城に向かえば、お前は騎士達に押さえつけられ、首が落とされる直前だった。オレは『止めてくれ』と叫んだが魔王は聞く耳を持たず、更には『お前が闇魔法を使える事を黙っていたから、コイツが死ぬんだ』なんてほざいて、オレはその時、闇魔法は疎か通常魔法すら使えなかったのに…!もう弁明をしても信じてくれないって思ったから『誰から聞いたんだ?』って聞いたんだ。そしたら『アーサーとルカから聞いた』だとよ。自分でもあり得ないくらい憤怒したのは覚えてる。その後、お前の首を目の前で切られ、怒り狂って魔王城を荒らしまくってルカとルルナに封印されたんだよ。んで、30年くらい前に出てきたんだよ。それと、魔物も悪魔も長寿だから今もまだアーサーは生きてる」
「よし!今直ぐ、会いに行ってアーサーの野郎を殺そう!」
「待て待て、早まるな!」
「大丈夫だって、バレないように殺すから!」
「殺す事が良くないんだぞ!!?」
「分かった、殺すのは止めて半殺しにするよ…」
「駄目だ!!」
「止めないでくれ!」
夜中にやいのやいのと五月蝿く騒ぐ。
「どうしたんですか…?」
ルルが控えめに扉を開けて、声を掛けてきた。
俺がアーサーを殺しに出ようとしているのをヴァンに右腕を引っ張られ、止められていた。
「「あっ…」」
俺とヴァンがハモる。
ルルの顔はどんどん険しくなっていく。
(ヤッベ、怒られるかな…?『騒ぎすぎだ』って)
「お母様の敵…!」
「そうだった!そういう事になってるんだった!!すまん、奏夜!また明日!!」
意味深な言葉を残し、窓から出ていってしまった。
「騒がしいけど、どうかしたの〜?」
ルルカがひょっこりと顔を出す。
「あぁ、なるほどね」
ルルカは1人納得するなりスタスタとルルに近づく。
「お姉ちゃん!!ヴァンが!ソウヤさんの部屋に居たの!!」
「そうなんだね」
素っ気なく返すとルルカは右手のひらをルルの顔の前に翳す。
「お姉ちゃん??」
「………」
無言でルルの顔に手を翳すルルカの瞳が鈍く光った直後にルルの体がゆっくりと傾いた。
「えっ!!?人を殺した!!?」
「いや、殺してないよ。気絶させただけ」
「何故!?」
「ヴァンの落ち着ける場所が見つかったのに邪魔しちゃ悪いなって」
「なるほど…」
「それに、『お母様の敵』はボクだし」
「……?」
「あはは、気にしないで。じゃっ、お休み」
「はい、お休み…?」
ルルを抱き上げたまま、出ていってしまった。
(ホントにどういう事か分かんねぇけど、取り敢えず寝るか…)




