ようこそ!
(俺の服は中学の制服のままなんだな…。血も付いてないし。お姉さんも公園で会った時と同じ服だ。見た目も変わってなさそうだな)
そんな事を考えながらお姉さんを見る。
「ソウヤ君、身長高くない?」
手を引かれながら歩いて5分間。ずっと無言だったお姉さんがようやく口を開いた。
「まぁ、学校の背の順だと後ろの方でしたが…」
(もしやこの人歩いている間ずっと考えていた?)
「最近の若い子は身長が高いものなのか?それともボクが小さ過ぎなのか?」
俺の身長は172センチ。
お姉さんは…150センチ位だろうか。
(変に突っかかってきたら嫌だし話題を変えよう)
「そういえば今何処に向かっているんですか?」
「ボクとソウヤ君が初めて会った場所。そこに魔界の入口があるから、そこから入る。ほら、見えてきたよ」
(あ…。ここって確か、小学生の頃、塾終わりに公園でよくお母さんを待った場所だ)
「あの、どうやって魔界?に行くんですか?」
「こうやって」
お姉さんは右手を前に突き出し、そこからキラキラ光る粒が集まり、瞬く間に扉の形になる。
「おぉー!」
「フフン、すごいでしょ!さっ、行こ!」
ズンズンと俺の手を引き進む。扉をくぐった先は夕方のように薄暗い事を除けば普通の住宅街だった。
「え、午後3時なのに夜のように暗い…」
「ここは、いつも暗いよ。街灯がついてないね」
パチンと乾いた音の後に街灯がつく。普通の街灯と違い、色は赤だった。お姉さんは手を後ろで組み、俺の方に体を向け口を開いた。
「ようこそ!魔界へ!」
歓迎するよとでも言いたげな満面の笑みだった。