終わらせて欲しいのです
「はい、これを☓☓☓にあげる〜!」
(…?うん?何時もの夢?…あぁ、疲れてベッドに倒れ込んだら寝ちゃったのか…)
ルルカの母親がチョーカーをルルカの首に着ける。
(あ!あれ、ルルカがデカイ亀の魔物と戦ってた時に着けてたやつだ!)
「良いのですか?貰ってしまって」
「えぇ!いいのよ〜!だって、コレを着ければ私の物って直ぐ分かるでしょ〜?ペットには首輪が必要だものね〜!」
「はい。そうですね。有り難く頂戴致します。それと、私に似合う首輪を探してくださり感謝しか無いです」
「いや〜ん!良いのよ〜!あ、それと、私の前では一人称は『ボク』にして頂戴〜!」
「…理由をお聞きしても?」
「その方が、『物語』通りだから〜!」
「分かりました」
「うんうん!聞き分けの良い子で助かるわ〜!それに比べて☓☓ちゃんってば聞き分けが悪くて悪くて!嫌になっちゃうわ!この間なんか私みたいなフリルのドレスを着ていて、腹が立ったからナイフでフリルの部分だけ切ったら『お母様、酷い!!』ですって!!私が魔王城では1番偉いのに口答えして、ホント、頭の悪い子は嫌だわ〜!」
ルルカ(幼児)は困ったように眉を下げていた。
確かにルルカの母親はフリルが沢山ついた淡いピンクのドレスを好んで着ていた。
「ほら、もう良いわよ。さっさと下がって」
「はい」
扉を開けて廊下に出た。
「☓☓様、今日も家庭教師に怒られたんですって」
「えっ!?今日も!?」
「コラ、声が大きい!」
「あ!ごめんごめん。それで、今日は何のレッスンだったけ?」
「ダンスよ。第一王子殿下は教師のダンスを見ただけで完璧に踊って、あの堅物ダンス教師がベタ褒めしてたのにね」
「ダメよ、そんなこと言っては」
「えぇ?でも、否定はしないんだ〜?」
「うっ…!」
「ホント、殿下は魔法さえ撃てれば魔王になれたのにね〜」
「きっと、☓☓様がお腹の中で魔法が撃てない様にしたのよ。魔力を吸い尽くして!!」
「えぇ!?何て、酷い!!」
「ホントよね!」
侍女達があること無いことを好き勝手に話す。ルルカは特に気にせずスタスタと歩いていたら、ヴァンさんが立っていた。
「こんにちは」
「あぁ、お前か」
どうやら2人はこの頃から知り合いらしい。
「素敵な首輪ですね」
「はっ、思っても無いことを良くペラペラ喋れるな」
「フフフ」
「はぁ。どの道、コレを着けられた時点で逃げられなくなったしな」
「それはどういう意味で?」
「この首輪、と言うより付いている赤い飾りに『自我が徐々に消えていく魔法』と『☓☓様の言う事に逆らえなくなる魔法』が掛かっていてな。私は☓☓様の事は好きでは無いんだが、1年間着けていれば心酔して仕舞うだろうな」
「なら、こうすれば良いのでは?」
ルルカの首に着いていたチョーカーを取る。
「貴方の母上の前だけ着けていれば良いでしょう?」
「それもそうだな。返してくれ」
「どうぞ」
ルルカが差し出した手にチョーカーが乗ると、それをルルカの上着のポケットに仕舞った。
「話は変わりますが、貴方の『物語』の敵役が見つかった様ですよ。近々、『お友達』として紹介されるでしょう」
「1つ、提案って言うより、質問がある」
「何でしょう?」
「他の奴が敵役になれないのか?」
「なれるでしょうね。そこで、私からお願いがあります」
「ん?何だ?民の願いは極力叶えてやるようにと躾けられてるからな。私が叶えられるものなら、叶えてみせよう」
「貴方の『物語』の敵役を私にしてくれませんか?」
「理由は?」
「遠い昔、私には好きな人が居ました。その方に瓜二つな貴方の手で私を終わらせて欲しいのです」
「う〜ん、私とて兄の様な存在のお前を殺したくないのだが…それがお前の願いなら叶えて見せよう」
「有難うございます」
(『兄の様な存在』…?それに、『物語』って何なんだろう?敵役とか言っていたし…)
「帰る前に私からも質問が」
「良いぞ。答えられるものなら答える」
「妹さんはどうするのですか?」
「……。アイツはこの『物語』には登場させない」
「結構な重要キャラなのに?」
「あぁ、しかも、登場さたら最後、力不足で死ぬのは見えてる」
「そういう『物語』では?」
「そうだ。だから、私は極力アイツには冷たい態度をとっている。そうすれば『主人公』と関係無いモブになれるからな」
「確かに、そうですね。では、そろそろ帰りますね」
「またな」
「えぇ、また」




