別に怒ってないよ
「皆は準備出来た?ソウヤは特に無いと思うけど…」
(『ソウヤは特に無いと思うけど…』はいらんわ!!!)
「はい。玄関に置いてあったエコバックも持ちましたし完璧です」
「んじゃ、行こうか!」
「「「「はい」」」」
ガチャッ
「いつも通り歩いて行こうか。あっ、でもボクは怪我しているから少し遅れるかも知れないけど気にせず先行ってていいからね」
「………」
「ほ、本当にヘマしただけなんですか?お姉ちゃんなら『ヘマ』位の傷だったらそこまでならないはずです」
ルルはいつもか細い声だが、今はそれに加えて不信感があった。
「あはは、本当はね昨日夜遅くまで起きていてそのボーっとしていたまま戦ったらこの通り怪我をしてしまってね。怪我をした理由がそれなんて格好悪いから嘘の事を言っちゃったんだ。ごめんね」
まるで用意してあった台詞をそのまま言ったような胡散臭さがあった。
「それなら、そうって言えばいいのに…。別に笑ったりなんかしないよ」
ルルはポソポソと言った。
「ごめんって」
「別に怒ってないよ」
◇◆◇◆◇◆
「着いた〜〜!」
歩いて20分、ショッピングモールに到着。
「まずはお菓子屋さんでクロへの手土産を買わなきゃ!!」
「そうですね」
ショッピングモールを少し歩いてすぐにお菓子屋さんがあった。
「よし!ボクは見てくるけど皆は好きにしてていいからね!」
ルルカがそそくさとお菓子屋に入っていった。
「何処か行きたい所ある?特にソウヤ」
「いえ、特に無いですよ。ノアさん」
「わ、私も、と、特に無いです…」
「はいはーい!私、クレーンゲームやりたい!」
クレアが手を挙げながら元気良くピョンピョンと跳ねる。
「あ!こんな所に居たのか、90-A!!3年も探したんだぞ!」
おじさん特有の低い声が響く。それとほぼ同時にクレアが自分の身を抱くようにしながら振り向いた。
「け、研究員さん…」
可愛く元気なクレアの声は震えていた。
「どうかされましたか?」
見かねたノアさんが研究員と呼ばれるおじさんとクレアの間に入る。
「コイツは俺等のモルモットだ。なんでお前らと居るのか分からないが返して貰う」
「い…嫌。ノア…」
クレアはノアさんに縋り付く。
(俺はどうするべきか…?ルルはいきなり現れたおっさんを怖がってるし…。そうだ!!)
思いついたと同時にお菓子屋さんに駆け込みお目当ての人物を探す。
「ん?ソウヤどうした?そんなに急いで」
お目当ての人物は空の店のカゴを片手に話しかけてきた。
「ルルカ!!!早く来て下さい!!!」
「え?何?ちょっと待ってカゴ置いてくっから」
俺の焦りが伝わったのか少年の声で返答が帰ってきた。
「はいはい、どうした?」
「く、クレアが…!」
「ほほう、クレアか」
「とにかく、付いてきて下さい!!」
「うん、分かったよ」
急いでお菓子屋さんから出るとルルは頭を守るようにしゃがみ込み、ノアさんは力ずくでクレアを奪おうとしている研究員のおっさんを止めていた。
「フフ、誰の許可で私の専属メイドを触っているのかな?」
ルルカの声は変わらず少年の声だったが怒り、例えるならばグツグツと煮込まれている激辛ソースがにじみ出ているように見えた。
「なんだよ、あんちゃん!!盗人から俺の私物を取り返そうとしてるだけだから口突っ込むんじゃねえよ!!」
「それは失礼した。だが、その『盗人』は私だ。だが、その子は『物』では無い。よって私は盗人ではなく幼気な子供を誘拐犯から守ろうとするヒーローだ」
「お前が今の持ち主か!!だが、俺は誘拐犯じゃねぇ!!コイツは俺の子供みたいなモンだから良いんだよ!!」
「ふむ、ならば虐待する親から守るヒーローかな?」
「ごちゃごちゃうっせえな!!いいか?俺は国から認められてる研究員だ!だ!か!ら!お前なんか日の目を見れないようにも出来るんだぞ!!!」
「その言葉そっくりそのまま返そう。汚らしい耳をかっぽじってよ〜〜く聞け!!私の名はルルカ・オファーリエ!!この国の第1王子だ!!!」
「!!!!?」
「は?はあああ!??」
俺もびっくりしたが、俺よりびっくりしたのは研究
員のおっさんだった。
(え?でも待てよ、『王子』?『王女』じゃないの?ルルカって女だろ?何か諸事情でもあるのかな?)
「わ、分かった!!偽の王子なんだろ!!お、俺の動揺を誘うために!!嘘ついたんだろ!!」
「いやいや、そんな事したら不敬罪で打首だろ。流石にそんな馬鹿な真似はせんよ」
「う、嘘つけ!!」
「う〜む、どうすれば信じて貰えるだろうか…?あ!今、貴殿を打ち首にするって宣言すればいいか!」
顎に右手を当てて悩んだと思ったら、ニパーっと太陽の様に笑いながら恐ろしい事を言い始めた。
「そ、それだけは勘弁を!!!」
さっきの威勢はどうしたと誰もが思うくらい、床に額を擦り付けいっそ清々しい土下座で許しを請っていた。
「打首にされたく無いなら私の目の前から消えろ」
低く『はい』以外は認めないと感じさせる声だった。
「は、はいーーー!!」
素早くショッピングモールから出ていった。
「さてと、第1王子の事は内密にによろしく。ソウヤ」
「え?でも、あんな大声ではっきりと『第1王子だ!!』って宣言していたから俺が黙ったって無意味じゃ…?」
「あぁ、その事ならだいじょーぶ!!ボクが魔法で幻影をかけて周りは映し出された『ボク等』を見ているだけだから。でも、ソウヤはボクの隣に居るからかけにくくて。だから、諦めてこうやって聞いてもらったんだ〜!」
すっかりいつもの中性ボイスになっていた。
「……分かりました」
「うん!約束ね。もし、万が一、人に話しちゃったらボクは君を」
ルルカの綺麗な指で俺の首を左から右に首を切るようになぞる。
「からね?」
「ぜ、絶対に喋りません…!」
死人顔負けの青白さで固く誓う。
(こ、こここここ、殺される!!!!)




