ボクはお姉さんだ!
―5年前
小学校にて
「なんでお前は髪が紫なんだよ!」
「せんせぇー、こいつ髪染めてまーす!」
小学4年生の男の子2人が紫色の髪の男の子を指差す。
「ちがう!染めてない!元々こういう髪の色なんだ!」
紫色の髪の男の子は怒る。
「でも、お前の母ちゃんと父ちゃんの髪の色は栗色だろ。やっぱ、染めてんじゃねぇの」
「やめなよカワイソウだろ?」
「それもそうだな!」
クスクスとほとんどのクラスメイトが小馬鹿にしたように笑う。
《この時の俺はいじめが中学になってもっと酷くなるのを知らなかった…。》
―塾にて
「そこはさっき教えた通りにやればできるはずですよ」
3回間違えてようやく解けたプリント。これは、『塾に通っていればできて当然』らしい。
(俺は出来損ないなのかな?)
―公園にて
いつものようにお母さんと待ち合わせの公園のベンチを探す。
(あ、ベンチに座ってる人がいる。でも、そこが待ち合わせの目印だから、近くにいないと)
「ぐーーぐーー」
(べ、ベンチで座って寝てる…)
ボサボサの白髪で髪型はショート。服装は黒色のジーンズに灰色のパーカー。バッグの中からメモ用紙みたいのがはみ出ていた。
【15時にショッピングモールで集合】
今の時刻は午後4時だ。大遅刻である。
(どうする…。起こすか?でも、知らない人に声をかけたらお母さんに怒られるかも…)
「お、お兄さん。もう夕方の4時だよ」
(声をかけてしまった…)
「ぐー、んあ、え、もう4時!」
赤い瞳で中性的な声だった。
「お兄さん、待ち合わせに遅刻なんじゃないの?そのメモには、15時に集合って書いてあるよ」
バッグからはみ出ているメモを指差す。
「これは、前のメモだからいいんだよ。それより起こしてくれてありがとう、ソウヤ君!」
「え…、な、名前!?」
(この人とは初対面で名前も名乗ってないのに…)
「ん?名前がどうかした?」
「な、なんで名前を知っているんですか?俺とお兄さんは、初対面でしょ?」
声の震えをこらえて聞く。
「それは、ボクが魔法使いだからだ!」
ベンチに座ったまま、右手をピースにして右目の付近にかざす。
「お兄さん!そういう冗談じゃなくて、何で名前を知ってるか聞いてるの!」
「冗談じゃない、ほんと!後、ボクはお姉さんだ!」
口を尖らせるお兄さんこと、お姉さん。
「あ、仕事の途中だった!」
ベンチから勢いよく立ち上がる、お姉さん。
「ソウヤー、帰るわよー!」
公園の入口付近からお母さんの声が聞こえた。
「ソウヤ君、お母さんが来たみたいだね。じゃあ、次は君が死んだら会いに来るよ。またねっ!」
「あ、ちょっと」
白髪で赤い瞳のお姉さんは、煙のように消えてしまった。
(なんで名前を知っていたのか聞いてないのに…)
「ソウヤ、帰るわよ」
俺の手を引き歩き出すお母さん。
「お母さん、あのね、いつもの待ち合わせのベンチで白髪の人がいてね、それで…」
「そんな事はどうでもいいから今日、テストがあったでしょ?何点だった?」
「…87点です。」
「学力テストでもないのに87点?!はぁ、お母さん本当はこんな事言いたくないんだけどね。ソウヤ、塾をサボってるでしょ?だから、そんなに点数が悪いのよ。」
「…はい、次は頑張ります」
(チっ、塾は1度もサボったことないのに決めつけやがって!)
2回目で慣れてきました!
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