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全能無垢の最強賢者 ~「人の心がない」と追放されたので竜のメイドを雇ってみたら運命の相手だった件~  作者: epina


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第18話 無双その3

「到着したぜ」


 一時間ほど歩いただろうか。

 イッチーが街道から少し離れた場所に切り立つ岩山を指し示した。

 そこにぽっかりと大きな横穴が空いている。


「普通の自然洞窟に見えるが……」


 実際に近くまで来てみると、これがダンジョンの入り口とはとても思えない。

 

「そうかい? こう見えて中身はちゃんとダンジョンなんだぜ」


 ふむ。

 確かに横に「ダンジョン注意」の立て札がある。

 俺が今まで見てきたダンジョンの入り口はこう、禍々(まがまが)しい門のデザインが多かったからな。

 こういうのもあるのか。


「さーて、ここでウィスリーちゃんにワンポイントアドバイスだぜ。ダンジョンは一定周期で中身の構造が変わる。だから何度入ってもワクワクが味わえるってぇわけだ」

「うんうん!」


 イッチーの説明にウィスリーが目を輝かせる。


「モンスターの出現位置や罠の配置も変わっちまう。だから、俺たちでも油断はできない。ウィスリーちゃんもアーカンソーさんの指示なしに勝手に動いちゃ駄目だぜ?」

「ん、わかった!」


 どうしてこのダンジョンに繰り返し来ているのかと思ったら、攻略に手こずっていたわけか。

 おそらく相当に難易度が高いのだろう。


「なるほど。完全に理解した」


 そういうことなら俺も気合を入れなくてはな。



 ◇ ◇ ◇



「わぁー」


 洞窟に入るやいなや、ウィスリーが感嘆の声をあげた。


「なるほど。確かにこれはダンジョンだ」


 幻想的な風景だった。

 壁や天井は入り口と同じく岩肌だが、青白い光を放つキノコがそこかしこに生えている。

 だが、異様に大きい。普通の自然洞窟に生えているキノコとはまるでサイズが違う。

 この中で一番背丈のあるサンゲルよりもさらに高かった。


「あちし知ってる! あのとんがりは『しょーにゅーどー』だよね!」

「おお。嬢ちゃん、よく知っておるの」

「ウィスリー女史は意外と物知りなんだぜ」

「意外は余計っ! これでも一族では『ずのーは』で通ってたんだったんだから!」


 ニーレンとサンゲルにからかわれたウィスリーがプンスカプンと怒りをアピールする。


「鍾乳洞なんてよく知っていたな」


 俺も素直に感心したのでウィスリーを褒めたたえる。


「ん! ねーちゃが教えてくれた!」

「姉がいたのか」

「うん。あちしが言うこと聞かないとすぐに怒るけど、すっごく優しくて大好きだった。もう会えないけど……今もお屋敷で元気に働いてると思う!」


 ほんの少し寂しそうな眼差しを見せたが、すぐに笑顔に戻った。

 健気だウィスリー。


「よしよし」

「にへへー……」


 頭を撫でてやるとウィスリーの表情がにへらっ、と崩れる。

 大きな尻尾もゆーらゆーらと揺れていた。

 イッチーがニヤニヤしながら肩をすくめる。


「おいおい、おふたりさん。ここはもうヤバくて危険なダンジョンなんだぜぇ? イチャついてる時間は――」

「大丈夫。この周辺は絶対に安全だ」

「え? まぁ、だいたい入り口付近は安全地帯なことが多いけどよぉ……」


 俺が力強く請け負うと、イッチーが鼻白んだ。


「ま、いいや。じゃあ先に進もうぜぇ」


 イッチーの先導で俺たちは一本道を進んでいく。

 道幅は狭く、ふたりが並ぶのが精いっぱいだ。


 陣形は、重戦士のサンゲルと盗賊イッチーが前。

 中央に戦士のニーレン。

 ウィスリーと俺が殿(しんがり)……一番後ろを務めている。


「止まれ」


 ある程度進んだところで、俺は全員に聞こえる声で注意を促した。


「通路の途中に罠がある」

「えっ、ご主人さまわかるの!?」

罠探知(トラップサーチ)の魔法は永続化(パーマネンシィ)してあるからな。視界に入れば自動でわかる」


 ウィスリーを始め、ニーレンとサンゲルも驚いている。

 イッチーが口笛を吹いた。


「そいつは助かるねぇ。んじゃま、あとは盗賊の俺が罠解除を――」

「それには及ばない。もう解除した」


 魔法式の罠であれば魔法解除(ディスペル・マジック)を。

 機械式の罠であれば名もなき念動魔法で起動スイッチをちょちょいと破壊してやればいい。


「お、おう。そうか……おかげで楽ができたぜぇ」

「それはよかった」


 イッチーが礼を言ってくれた。

 その割には笑みが引きつっている気もするが。

 ともあれ、安全になった罠を踏み越えて先に進むと。


「止まれ」

「オイオイ、また罠かぁ?」


 イッチーがうんざりした顔をする。


「いや、この先のエリアに敵対的なモンスターがいる。脅威探知(エネミーサーチ)に引っかかった。数は四」

「ワシらの出番というわけだの」

「腕が鳴るんだぜ」

「待て」


 ニーレンとサンゲルが武器を構えたので、先に進もうとする全員を制止した。


「露払いもせずに直接向かうのは危険だ。まずはモンスターを弱らせなくては」

「弱らせるつったって、どうするんだよ?」

「任せろ」


 イッチーへの解答として、いつもどおりに指をパチンと打ち鳴らす。

 すると俺の周囲に回転する円形の刃が敵の数と同じだけ出現した。


「こんなときのために開発したオリジナル魔法……全自動浮遊回転刃フルオート・フライングソーだ。俺の脅威感知(エネミーサーチ)と連動して、完全自律戦闘を行なう」


 俺が命じるまでもなく回転刃(ソー)が通路の先の闇へと消えていった。

 ほどなくして切り刻まれるモンスターどもの悲鳴が聞こえてくる。


「ふむ。どうやら大した敵ではなかったようだな。反応がすべて消えた」

「そ、そうかの……」

「俺たちが出る幕じゃなかったんだぜ……」

「ああ。パーティメンバーの消耗はできるだけ抑えた方がいいからな」


 何故か落ち込んでいるニーレンとサンゲルに俺は力強く頷き返した。


「よくわかんないけど、ご主人さますごーい!」

「フッ、そうか?」


 ウィスリー、そんなにキラキラした瞳で見つめないでくれ。

 照れちゃうじゃないか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 追尾機能付き気円斬の量産ですね
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