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全能無垢の最強賢者 ~「人の心がない」と追放されたので竜のメイドを雇ってみたら運命の相手だった件~  作者: epina


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第110話 徴収

 それから五分後。


「お前たち」


 物品探査ロケート・オブジェクトでピケルの武具を追跡した俺は、人気(ひとけ)のない路地を選んで連中を待ち伏せた。


「はぁ? お前、わざわざ先回りしてきたわけ?」

「マジうっざ」

「なになに? 見逃されてたの理解できなかった感じ?」

「装備の代金を払え」


 連中を無視して用件を告げると、連中は一様に面倒臭そうな顔をした。


「なんなのお前。ピケルちゃんの何?」

「そもそもなんの権利があって、俺等に絡んできてるわけ?」

「そーそー、お前無関係じゃん」

「いいや、俺は関係者だ」


 連中の言葉を否定してから、今度は一枚の書面を提示する。


「これは権利書だ。ピケルと契約して『太陽炉心』の権利と土地を買い上げた」

「は?」

「なんだこいつ、何言って――」

「つまり『太陽炉心』はもはや俺の店だ。だからオーナーとして不採算要因を排除しなければならない」


 権利書を虚空へ放ると、自動で次元倉庫インベントリに収納された。


「今までのような甘い経営方針は破棄された。ツケは一切認めない。だから、お前たちが持っていった装備品の代金をすべて払え。拒否するなら、装備をすべて没収した上で法的手段に訴える」


 ここまで脅せばさすがに装備を返してくるだろうと淡い希望を抱いていたのだが、そう甘くはなかった。


「お前、マジでイカれてんの?」

「ドワーフの店とか、搾取するためにあんだろ」

「共有財産じゃん」

「つーかお前、今の立場わかってんの?」

「こっちは六人だぜ」

「そもそもどこ支部よ?」


 どうやら俺の説明では理解できなかったらしく、どうでもいいことを聞いてくる。


「俺の拠点(ホーム)は十三支部だ」


 素直に答えてみると、連中のひとりが「プッ」と吹き出したのを皮切りに全員が腹を抱えて笑い出した。


「馬鹿だこいつ、マジで馬鹿だ〜!」

「ウケる~っ!」

「あのね、俺等は第九支部なわけ!」

「お前ら底辺とは違って日々を明るく暮らす()()()なわけよ!」

「どうせピケルちゃんから店を買ったって話もハッタリだろ」

「帰れ帰れ。痛い目に遭いたくなかったらな!」


 この期に及んで自分たちの立場を理解できていないのか?

 まさか、ここまで愚かな連中とは思わなかった。


「お前たちの意見は聞いていない。払うのか? 払わないのか?」


 最後通牒を突き付ける。

 すると連中はやる気満々の様子で俺を取り囲んだ。


「もう面倒だ」

「やっちまおうぜ」


 武器を構えているということは、どうやらここで俺を殺すつもりらしい。


「そうか。代金を踏み倒すというのだな。それなら、オーナーとして国に認められた権利を執行する。これは冒険者同士のいさかいではないため、以後お前たちは犯罪者として扱われる」

「言ってろよ」


 どうでもよさげな声とともに長剣による斬撃が俺めがけて振りおろされる。

 こちらを殺しに来ているのかと思いきや……足運びの基礎すらなってない、完全に舐めきった攻撃だ。

 避けてくれと頼まれているようにしか感じられない。


 ならば遠慮なく、すれ違いざまに奴の振るった長剣に触れる。


 すると――


「まずひとつ」


 奴の手から長剣が消えた。


「えっ、俺の剣、どこに! この野郎、何しやがった!」

「ふたつ」


 無視して次は別の戦士の斧を。


「みっつ」


 槍を。


「よっつ、いつつ、むっつ」


 盾を。

 篭手(こて)を。

 肩当てを。


 連中が『太陽炉心』から持ち出した武具を立て続けに回収していく。

 ついでに全員の毛髪も抜き取っておいた。


「なんだ……こいつ、何しやがった!?」

「動きがまったく見えねえ……」

「暗黒魔導士がどうしてこんなに素早いんだよ!」

「ていうか、俺らの装備はどこいったんだ!?」


 混乱する輩ども。

 俺は空間から武具の一部を露出させてタネを明かした。


「お前たちの武具は『太陽炉心』の未清算品。いわば俺の持ち物だから、触れさえすれば次元倉庫(インベントリ)に回収可能だ。もちろん、こんなこともできる」


 パチンと指を鳴らして転送(アポート)を発動。

 連中のひとりから兜が消えて俺の手元へ。

 そのまま他の武具と一緒に収納した。


「これで今日の分は全部だが。お前たちの装備している他の武器防具もほとんどが『太陽炉心』の商品だ。とはいえ、もう売り物にはできないから……そうだな。有り金から代金分を徴収させてもらうとしよう」

「ふ、ふざけんな!」

「俺らの武器を返しやがれ!」


 当然の権利を主張しただけなのに、素手になった連中のうちふたりが殴りかかってきた。


「……返せだと?」


 すれ違いざまにふたりの首筋に手刀を打ち込む。


「それはこちらのセリフなんだがな」


 気絶したふたりがどさりと倒れた。

 残りの四人が啞然(あぜん)とする。


「な、なんだこいつ」

「何者なんだ……」

「ああ、自己紹介が遅れたな。俺の名はアーカンソーという」


 どうせ信じないだろうと思いきや、連中は血相を変えて騒ぎ出した。


「“全能賢者”アーカンソーだと?!」

「いや、そんな、まさか!」

「国家英雄がどうしてこんなひどい取り立てを!」

「装備を取り上げられたら冒険者としてやっていけねえ!」


 ふむ?

 イッチーたちのときもそうだったが、力を見せた後だと信じてもらえる傾向にあるようだ。

 今後はそうしていこう。


「どっちみちお前たちは犯罪者だ。冒険者は続けられん」

「それじゃ金なんて払いようが……」

「何を言う。お前たちの体があるじゃないか。幸い奴隷商人にはいいツテがあってな。きっと高く買い取ってもらえるだろう」

「ひいいいい!!」

「売り飛ばすのだけはご勘弁を〜!!」


 少しばかり脅しただけのつもりが、残りの四人はほうほうの体で逃げ出した。

 このまま追いかけてもいいのだが……。


「まあいい。装備も戻ったし、このふたりを捕まえただけでもよしとしよう。連中の毛髪もある。もう、どこにも(のが)れられん」


 生命探査(ロケートライフ)で居所を突き止めてから当局に知らせれば、連中の手は後ろに回る。

 俺の言葉を信じてもらえない可能性もあるが、そのあたりはシエリにも協力をあおいで王権から圧力をかけてもらおう。


「さて、帰るか」


 もしかしたらウィスリーたちを待たせてしまっているかもしれない。

 気絶したふたりを窃盗犯として突き出してから『太陽炉心』に戻ろう。

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