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妊娠期、そして二人の出産

ダンテは伴侶達のケアを一人でこなそうとして祖母と母上から説教を喰らった。

妊娠時のケアを頼れる相手に頼るよう善処する。


そんな最中、エドガルドが破水し──




 目を覚ますと、祖母の顔が目に入った。

「お、御祖母様?!」

「孫が無理してると聞いて、息子の監視を他に任せてこっちにきたのだ」

「そう、私も無理をしてると聞いたわ」

「母上?!」

 母上と祖母が両方にっこりと笑ってない笑顔で私を見る。

「「父親の自覚はあるのに、どうしてこうも無理をするのかしら貴方(お前)は」」





 小一時間ほど説教喰らいました。

 伴侶が五人いるようなものなのに、何故一人で抱え込もうとする。

 頼れるものは頼れ、それができんなら過労死するぞ。

 等など色々と説教を受けて疲れました……





 その間に侍女さんや、フィレンツォ達がエドガルドやエリア達のお世話をしてくれてたのは助かったけど……

 説教は耳にいたいことばかり。


──もっとしっかりしないとなぁ、あと無理しすぎないように──



 その日から、祖母と母上も一緒になって伴侶達の世話をした。

 まぁ、最初は祖母に関しては恐れ多いと皆が断ったが「孫の伴侶の世話くらいさせておくれ」と優しく話しかけて祖母も受け入れるようになった。

 母上はエドガルド中心だ、母上は私とエドガルドの仲をお見通しだったわけだが、それをエドガルドは申し訳なく思っており、母上に泣きながら謝るのを母上はたしなめ、親として励ましていた。


 父上が聞いたらひっくり返ったらしいが、なんとか納得してくれた。


『ま、まぁ確かにエドガルドのダンテへの対応はそのなんだ、兄弟愛を凌駕していたと今更ながら思う。うむ、うむ、お前達が良いならそれで良い。私は何も言うまい』


 とのこと。


 心広いな、本当。

 まぁ、動揺もしてたけど。





「ダンテ、側にいてくれ、怖いのだ……」

「分かりました、エドガルド。貴方の側に」

 エドガルドは不安になりがちで、私の存在を求める。

 しかし、エドガルドの側ばかりにはいられない、そういうときは──

「エドガルド、不安なのね」

「母上……」

 私と母上が交代し、母上がエドガルドに付き添う。

「ダンテ、少し休みなさい」

「はい、母上」

 部屋を出て、ソファーに座り、雪花茶を口にして一息つく。

 少しだけソファーに横になり、10分程仮眠をとってから、起きて他の伴侶達の所へ行く。


 エドガルドは侍女達にも見せられないので伴侶達とは別扱いなので別室なのだ。

 だからエドガルドは私と母上と祖母が交代で見てる。


 エリア達公式伴侶に関しては問題ないのだが。


「体調は大丈夫ですか?」

「エリアがちょっと崩し気味だ、側にいてやってくれ」

「ええ、そうです」

「頼む」

「分かりました」

 伴侶達の部屋に入ると、エリア以外がそう言い出し、私はエリアの側に寄る。

「ダンテ、様」

「顔色が悪いですねエリア。今ホットミルクでも持ってきましょう」

「はい……」

 フィレンツォにホットミルクを持ってこさせ、エリアに渡すとちびちびと飲み始めた。


 私はそんな彼が愛おしくて頭を撫でた。


 ふと気配を感じると、クレメンテ、アルバート、カルミネが近づいてきていた。

 驚く私に、クレメンテが言う。

「……私達も撫でてください」

「──勿論です」

 私はクレメンテ達の頭や頬を撫でた。

 それで満足したのか、各自ベッドに戻っていった。





 つわり等の体の不調を訴えてはそれに対処して、不安があれば側にいて。

 そういうことを繰り返して雪解けの季節がやってきた。



「ダンテ……」

 不安そうなエドガルドが私に声をかけた。

「どうしたのですか、エドガルド……って破水してる?!」

 私は慌ててフィレンツォを呼び、車椅子に座らせて分娩室に一緒に入ります。


「ダンテ、怖いのだ、手を握ってくれ……」

「分かりました、手を握りますとも」


 手を握らせ、出産の時を待つ。

 出産時、息む度にミシミシと骨の音が聞こえたのは気のせいじゃないはず。


 荒い呼吸を繰り返すエドガルドの側で私は彼を励ますことしかできなかった。



「お生まれになりました!」



 その声に、エドガルドも私も、一気に脱力した。

 安堵したとも言うべきか。

 出産が終わったので、母上と祖母と父上が入ってきた。

 父上が出産の場にいると落ち着かないとエドガルドの申し出で父上はつまみ出されてたので若干涙ぐみ方がおかしい。


──どんまい父上──


「男の子か? 女の子か?」

「両性具有の子でございます」

「ロンディナと同じか!」

「はい」

「さんて、名前を考えなければな」

「ああ、ダンテ。ゆっくりと考えよう」

 赤子を抱いて嬉しそうにするエドガルドを見てほっとした。



「へー! 両性具有の子か」

「名付けが大変そうだな」

「ええ、実際エドガルドが名前のどうするか悩んでますよ、私も」

「良い名前をつけてあげてくださいね」

「はい」



「ダンテ」

「何ですか、エドガルド」

「この子につけたい名前があるんだ」

「言ってください」

「セシリオ」

「良い名前です」

「そうか、有り難う」

 エドガルドの腕の中で眠る赤ん坊──セシリオに私は声をかける。

「どうか、良き人生をセシリオ」

 セシリオはふにゃりと笑ったような気がした。





 それから一週間後、今度はクレメンテが産気づいた。

 前と同じように分娩室へと連れて行ったが、今度は私の腕を掴まず棒を掴んだ。


 出産は長丁場になったがなんとか男の子が生まれた。


 代わりに掴んでいた棒はひしゃげていた。


「ダンテの腕を掴まなくて良かった」


 と、クレメンテは呟いた。

「出産とは大変ですね……応援しかできなくてすみません」

「いや、側にいてくれただけでいい」

「ところでこの子の名前は何にする?」

「ブルーノはどうでしょうか?」

「ふふ、ブルーナとほぼ同じだな、だがそれがいい。そうしよう」

 名前は似た名前になってしまったが、クレメンテは満足そうだった。


──そういえば、姉二人は名前がちょっと似てたっけ──


 そんな事を思いながらクレメンテが抱いている赤ん坊の頬を撫でた。







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