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一歩前へ~ハプニングはお腹いっぱい!~

我が子のトラブルに何とか決着がつき、インヴェルノ王国へ戻ったダンテ。

だが、王たる父が倒れたと聞き──




 エリアは別室でぐずぐずと泣いていた。

 今も暴力沙汰は苦手なエリアが、我が子がそれに巻き込まれたとなると心は安定していられないのは分かる。

 というわけで、エリアと話をしよう。


 ハンカチはフィレンツォが渡してたので、私が渡す必要は……あるな、もうべちょべちょだ。

「エリア」

 より水分を含めるハンカチを渡すとエリアはそれで涙を拭い始めた。

「デミトリオの怪我はもう大丈夫ですよ」

「……本当ですか?」

「本当です、私が昨夜治癒魔術を使ったのですから」

「よかった……」

 安心するエリアの手を私は握る。

「エリア貴方にわびなければなりません」

「ダンテ様、何をですか?」

「デミトリオに、貴方の出自等を伝えました」

「!!」

 エリアの顔が真っ青になる。

「デミトリオは言いました、『だから母上は自分への卑下が強かったですか』と」

「……デミ、トリオは」

「貴方を嫌うようなそぶりはありませんでしたよ。というかその後私の学生時代の行動をぶっちゃけて『過激』と言われましたから」

「……」

「デミトリオは人の痛みを知る貴方から生まれた優しい子です。大丈夫です、デミトリオと話してきてください、そしてその内容を聞かせてください」

「……はい」

 エリアは決心したようで、デミトリオの医療部屋へと向かった。



 しばらくして、エリアが帰ってくると、穏やかな表情をしていた。

 目元は赤くなってはいるが。

「ダンテ様、デミトリオは本当に優しい子です」

「だろう?」

「……ただ、ダンテ様」

「なんだい?」

 ちょっとむくれた顔でエリアは私を見る。

「同じような事になったら『何も言わずに右ストレートで殴ってから股間を蹴ろ』はないです」

「私そうしてたからなー」

「もう」

 むくれたエリアが可愛かったので頬をつつくと余計にむくれた、可愛い。



 デミトリオが退院し、屋敷に戻ると、他の三子が熱烈な歓迎。

 というか、無事を喜んでデミトリオを抱きしめていた。

 くぇえええええと声が聞こえたので、フィレンツォ達に言ってディアナ、ブルーナ、アルフィオを引き剥がした。

「嬉しいのは分かるが、力は加減するように」

「はい、お父様」

「はい、お父様」

「わかったよ、父様」

「宜しい、では私達は帰るから、皆仲良くな」

「「「「はい!」」」」



 そうして私とエリアとフィレンツォは、メーゼを出発した。





 王国に戻り、城に戻ると、仕事が山積みになっていた。

 その書類の横でエドガルドが灰になっていた。

「え、エドガルド?!」

「だ、ダンテか……父上が寝込んで仕事がな……」

「わ、分かりました私も手伝います! ちなみに、寝込んだ理由は?」

「……馬鹿らしいかもしれんが、駄々をこねた父上に母上が、『嫌いになっちゃいますよ?』と言ったのが原因だ」

「母上ェ……」

「母上も反省している……」

「取りあえず、父上が復活するまで仕事を片付けましょう!」

「あ、ああ」

「ただし、エドガルドは少し休んで」

「……すまない」

 エドガルドがソファーで仮眠するのをみると私は、書類に目を通し始めた。


 公務はやっているので何とか対処できた。


 問題はだ。

 父上がいつ復活するかだ。

 冗談とは言え最愛の母上に「嫌いになっちゃいますよ」何て言われたのだ、復活はいつだろう?

 とか考えてて一週間がすぎ──


「すまん、皆に迷惑をかけた」

「「本当ですよ」」

 父上の公務全部やってきた私とエドガルドがそう言って父上をジト目で睨んだ。

「エドガルドと私でギリギリなんですよ、退位なんてまだまだ先です」

「そうです父上、私とダンテでギリギリなのを押しつけて退位するおつもりですか?」

 事実、何とかなった程度なので疲労困憊の私とエドガルドは父上に文句を言った。

「す、すまん……退位はもう少し先にする」

「「当分先です!!」」

 私達はそう言って休息部屋へと移動した。


 既に休息部屋にいたエリア達に軽く微笑んでからベッドにぼふんと倒れる。

「ダンテお茶はどうだ?」

「すみません、今はすごく疲れているのでいりません……」

「そ、そうか」

 私はそう言って意識を暗転させた。





「あー父上なんなのあの母上限定での豆腐メンタル!」

『母限定の豆腐メンタルもあるがな』

 夢の中で神様に愚痴る。

「全く向こうの世界の本でも読んでなきゃやってらんないよ!」

 神様は夢の間だけ向こうの世界の本を読ませてくれる。


 向こう──前世の世界の本を。


「まったく、どうしてこうも大変な仕事があるのかな」

『まぁ、いろいろあるからと言っておこう』

「マジか」

 私はふぅと息を吐く。

「うちの子達大丈夫かねぇ?」

『安心しろ、それは大丈夫だ』

「マジですか」

『まぁ、それぞれ特色のある伴侶を選ぶぞ』

「へー……」

 どんな伴侶を子ども達が選ぶのか楽しみになってきた。

「ところでブルーナの伴侶は?」

『ステファノだ』

「だよねー」

 納得してしまう。

 他にも色々と言いたいことはあるが、今は読書を楽しもう。

 そう思いながら本を読みつつ、神様とだべる私であった。





 伴侶達とゆっくりしつつも、父上の公務を手伝う日々をおくって半年ほど。

 我が子達も学校になじんでいればいいなぁと思う頃である。

 何故かディアナから、私宛に手紙が来た。

 手紙を開けると以下のような内容が書かれていた。





 お父様へ

 元気にしていらっしゃるでしょうか、お体には気をつけて。

 実は最近、リアーナ嬢とデミトリオが良い関係になりつつあるのでご報告に参りました。

 最初はぎこちない二人ですが、今では微笑ましいほどです。



 追伸

 ブルーナはステファノ様一直線です。相変わらずです。





 本当はもっと難しく書かれていたのだが、簡略化しまくるとこうなる。

「リアーナさんと、デミトリオがか……」

 個人的に悪くないと思った。

 王族としてまだ気弱なデミトリオをリアーナさんなら支えてくれるのでは無いかと思ったのだ。


「……デミトリオが?」

 エリアに言うと戸惑うような発言をした。

「まだ、あの子には早いのでは……」

「大丈夫ですよ」

「なぁところでディアナとアルフィオの事は書かれてなかったか?」

「いえ、全く。ディアナとアルフィオに関しては何も」

 アルバートの言葉に私はそう返した。


 何も書いてないが、何かある、そんな気は皆していた。







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