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命の尊さ

冬になり、ついにエリアの出産が始まる。

しかし、出産は難航し──




 どたばたしながらも冬がやってきた。

 一番最初の子、ブルーナは「まぁま」「ぱぁぱ」と呼ぶことがある。

 本能的なのか、クレメンテの方を「まぁま」と呼ぶ、呼ばせようとしたことはないのだが、謎だ。


 冬になって、まだ生まれないとまた不安になりつつあるエリアを皆で励まし、早く生まれますようにと思っていた冬の半ば。

 ついにそれは訪れた。

「ダンテ様、つらいです……」

「おい、エリア。破水してるぞ!」

「フィレンツォー!!」

「かしこまりましたぁ!」

 もうお約束となっている車椅子を掴んで滑り込んでくるフィレンツォ。

 芸術的すぎるけど、ギャグっぽいなと今更ながら思った。

「エリア、車椅子に座って……」

「は、はい……」

 エリアを車椅子に座らせ、そのまま分娩室へとゴーする。


「ダンテ様、怖いです……!!」

「大丈夫、エリア。私が側にいます」

 エリアが私の手を握る。


 出産は難航した。

 なかなか赤ん坊が生まれない。


「ダンテ殿下、エリア様のお腹を軽く押してください」

「は、はい」

 私はエリアのはらを軽く押し、エリアはそれに合わせて力んだ。


 ずると、小さな赤ん坊が出てきた。

「赤ん坊が息をしてません!」

「「!?」」

 エリアの顔色が青ざめた。


 人工呼吸が行われ、そして──


 ふぎゃあふぎゃあ


 赤ん坊の泣き声が漸く響いた。

「僕の……赤ちゃん……」

「エリア様の赤子は調子が良くありません、またエリア様の容態も良くない為、私達で様子を見させてください」

 私は彼らが嘘を言ってないのを理解して、頷いた。


「よぉ、エリアは?」

 アルバート達がやってきたので説明をする。

「別室で治療中だ、ともによくない状態らしい」

「見舞いに行った方がいいんじゃないか?」

「そう、ですね。そうしましょう」


 皆でエリアの見舞いに行く。


「あ……ダンテ様に皆さん……」

「大丈夫そう、じゃないな」

 クレメンテがエリアの頭を撫でる。

 出産で疲れ切っているようだった。

「僕の……赤ちゃんは……」

「男の子だそうです、そちらで医師の治療を受けています」

 私がそう言うと、エリアは泣き出した。

「え、エリア?」

「ごめんなさい、他の皆さんと違って、元気な子を産めなくてごめんなさい」

「エリア……」

「この馬鹿エリア、謝る必要がどこにある?」

 私が何か言おうとする前にクレメンテが言った。

「お前は必死になって産んだんだ、そして赤ん坊は今生きている、それだけで十分だろう」

「クレメンテ……」

「エリア、お前は立派だよ、私達より長い間赤ん坊を腹の中で育て、そして産んだんだ」

「ありが、とう、ござい、ます……」

 ぐずぐずと泣き出したエリアを皆で慰める。


「ダンテ様、ちょっとこちらに」

「はい」

 医師に呼ばれて赤ん坊のところへと行く。

「ダンテ様、申し訳ございません。赤ん坊の容態があまりよくなく……魔力的に波長の合いやすいダンテ様に治療を頼みたいのです」

「ど、どうやって?」

 突然の事に混乱する私。

「ダンテ様の生命力を少しずつ赤ん坊に分けていただきたいのです」

「わ、わかりました」

 私はたまにSNSで見かける、管を鼻につけられた赤ん坊をみる。

 真っ赤で、ひ弱なその子に、ゆっくりと、ゆっくりと慎重に生命力を分けていく。


「はい、もう大丈夫ですよ」

「ほ、本当ですか?」

「はい」

 もぞもぞとエリアから絞った乳を口にする赤ん坊を見て私はほっとする。

「ダンテ様、今後の事も考えてエリア様の食生活、そのほか諸々見直していただきたいのです」

「分かった、そうしましょう」

 私は医師の言葉にそう答える。


「──という訳だ、フィレンツォ」

 医師から話された内容をフィレンツォに伝える。

「確かにエリア様だけが、成績がギリギリでしたからね」

「特に体力関係が酷かった」

「かしこまりました、今からエリア様の食生活を見直し、そして落ち着いた頃に体力をつけていただく方針で行きましょう」

「頼んだぞ」

「ええ、でも。子育ての時点で体力はつきますから、大丈夫かと思いますが……念には念を入れましょう」

「ああ」


──生まれてきた子ども達、子どもを産んだ伴侶達、可能な限り、無理をせず愛し、慈しもう──


 私はそう自分に誓った。





「エリア、大丈夫かい?」

 エリアの元へ行く。

「はい、ダンテ様……赤ちゃんに直接授乳できないのは辛いですが、赤ちゃんが少しずつ元気になってくれて嬉しいです」

「そうか、それは良かった」

 医療者達に囲まれた赤子をちらりとみてから私はエリアの頬を撫でた。

「エリア、したいことはありますか?」

「……早く、赤ちゃんを……だっこしたいです」

「そう、ですか」

 私は医療スタッフ達の元により、たずねる。

「あのすみません、いつ頃赤ん坊を抱き上げられるでしょうか?」

「エリア様がですか?」

「はい」

「一週間後になるかと、それまでにはダンテ様のおかげでこの子も容態が安定するでしょう」

「分かりました、有り難うございます」

 礼を言って、エリアの元へ戻る。

「一週間後だそうです、それまでは我慢しましょう」

「はい……」

 少しだけ寂しげな表情をしているエリアの頬を撫でる。

「エリア……」

「僕がもっと健康に産んであげれたら……」

 私はエリアの両肩をそっとつかみ、目線を合わせる。

「エリア、それは違います。赤ん坊は必ずしも健康に生まれてくるとは限らない、生まれてくること自体が奇跡なんです」

「ダンテ様……」

「だから、精一杯愛しましょう、あの子を。貴方と私の子を」

「はい……」

 手を握る。

「ではあの子の名前を考えましょう。男の子だそうですから」

「あの、ダンテ様。一緒に考えてくれませんか?」

「ええ、いいですとも、勿論」

 そう言えば、エリアは少しだけ嬉しそうに笑った。





 一週間後、漸く赤ん坊はエリアの腕に抱かれることができた。

 小さな小さな、命。

 小さな赤ん坊を、エリアは大事そうに抱きかかえていた。

「デミトリオ、大きく育ってくださいね……」

「エリアとダンテで考えたのか」

「ええ」

「俺もそうすりゃよかったかなー?」

「じ、次回ということで」

 私はそう言って目をそらす。

 跡継ぎがたる証を持つ子どもが生まれていないのだ、仕方ない。

 子どもたくさん欲しいなーなんて思ったから生まれなかったのかなーとも思わないでもない。


『その通り正解だ』

──げ、マジですか──


 寝耳に水とはこのことだ。


『愚王の場合、もしくは子を一人しか産まぬと決めた場合は証の子は第一子だが、子どもをたくさん持つ場合はどうなるかは分からん』

──あの、エドガルドのような事態は──

『安心しろ、お前の子どもらではおきん』

──良かったぁ──


 心底そう思った。





 何はともあれ、生まれてきた子ども達。

 無事に育ってほしいものだ。








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