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親と王位

伴侶やエドガルドを気遣うダンテ、そんなダンテの元に父である国王がボイコットを起こしたと聞かされ──




 夜、伴侶達が寝静まった後、一人仕事をしているエドガルドの所へ私は行った。

「エドガルド」

「!!」

 エドガルドは驚いた表情を浮かべた。

「最近、エリア達ばかりの側にいて貴方の側にいれませんでしたから」

「ダンテ……気遣いは有り難い、だが今は不安体な彼らの側にいてあげてくれ」

「分かりました、では」

 私はエドガルドの頬に口づけをして、その場を離れようとしました。

 すると、エドガルドが私の腕を掴み、私の口にキスをしました。

「エドガルド……」

「すまない、我慢ができなかった……」

「いいんですよ」

「……他の皆を頼む。孕めぬ私は、皆がするべき仕事をするだけだ」

「エドガルド……貴方も無理をしないで。私にとって、貴方も大切な伴侶なのですから……」

「分かっている……有り難う、ダンテ」

「いえ……」

 私はそう言って立ち去り、ベッドに戻り、寝ようとするとカルミネが起きていたらしく手を掴んできた。

「エドガルドか?」

「……分かります?」

「分かるとも」

 カルミネはさも当然のように笑った。

「孕める俺達とは違って、彼奴は孕めないんだ。お前との子を。複雑だろう」

「……」

「大方、仕事に没頭してるってところだ」

「何でそこまで読めるんですか」

「当たり前だ、同じ『伴侶』なんだからな」

 カルミネは皆を起こさないよう小声のまま続けた。

「俺達がするべき事をしている、違うか?」

「ええ、その通りです」

「やれやれ、出産と育児が一息ついたら彼奴に貸し全部返さなきゃな」

「カルミネ、貴方も無理はしないで下さい」

「しないさ、お前じゃないんだから」

「うぐ」

 ぐうの音も出ない。

「お前の母君、アデーレ王妃はすごいな。夫の首根っこも捕まえておいて、私達の面倒も見てくれる」

「いやぁ、母上は超人だと思いますよ、御祖母様の話から察するに」

「……お前も才能は超人の部類だが……無理するというか精神面に不安があるからな」

「はははは……」

 事実なだけにどうしようもない。

 まだ私の悪癖は完治していないのだ。

 それどころか、子どもが生まれたら悪化する可能性が高いと私は思っている。



 子育てしない親を、親とは呼ばない。



 と、私が思っているからだ。

 実際そうだと思う。

 だから、それで無理をする可能性を否定できない。

 今も不安だ。


──私は親になれるのだろうか?──


 と、そんな事を考えていると、カルミネが私の頬を撫でていった。

「安心しろ、お前は親になれるとも」

 そう言ってカルミネも眠りについた。

 私は少しだけ気が楽になった気がして、横になり、そのまま眠りについた。





「……そういや、男性妊娠する場合どうなるんですかね?」

『オメガバースという奴があるだろう、あれっぽく体が作り替えられる』

「なるほど」

『伴侶になった時点で、四人はそれっぽく体が変化していた、本人も気づかずにな』

「ほへー」

 神様の言葉に、間の抜けた声しかでない。

『さて、伴侶が妊娠中なわけだが、問題が発生するぞ』

「え゛」

 私は嫌そうな声を上げる。

『まぁ、単純な事だ。お前の父上がボイコットするのと、お前に対して体を売る──つまり繋がりを作ろうとする輩が出る、程度だ』

「結構ヤバいんですがー?!」

 私は悲鳴じみた声で叫ぶ。

『大丈夫だ、お前ならどうにかできるだろう』

「助言をくれー!」

『助言といっても、思って事を正直に言えばいい、それだけだぞ?』

「それがむずいー!!」

『そんなことは知らん』

「おにー!!」

 この神様、時折鬼と思いたくなるような発言をするので私は胃袋が痛い。

 頭痛がする。

『とにかく、今までの経験を生かしてきっちりと言ってやれ』

 神様のその言葉を最後に私の意識は覚醒する。





 目を開けてぼーっとしていると、扉が開いた。

「ダンテ様!」

「どうしたフィレンツォ?」

「御父君が、国王陛下が自室にこもりました!」

「はぁ?」

 思わず変な声が出た。


 どうやら仕事続きで母上……妻も若干冷たいという事で自棄になってボイコットとして部屋に閉じこもったらしい。

 エドガルドや、祖母、母上が説得しているが応じないという前代未聞の状態にあった。

 私は部屋の伴侶達をフィレンツォと侍女達に任せて父上の部屋へと向かう。


「いい加減にせんか、この馬鹿者! 子どもか?!」

「父上、自分の立場をご理解下さい」

「貴方、今は大変な時期なのよ、分かってちょうだい」


「御祖母様、母上、エドガルド。私に任せて貰えないでしょうか」

「ダンテ……」

「いや、しかしな……」

「貴方は伴侶の側に……」

 色々と心配して下さるのは有り難いが、神様が言ったのだから私がやらなければならない。


 エドガルドと、祖母、母上に離れて貰い、父上には私の気配だけを感じ取れるようにしてもらう。

「父上、聞こえますか?」

 返事はない。

「父上とこうやってお話しするのは久々ですね」

 返事を求めることなく、淡々と話しを続ける。

「父上、貴方が王になったのはエドガルドが生まれた後だと聞きました。またエドガルドが生まれるまで時間が非常にかかったと」

 咎めるつもりはなく、事実だけを語る。

「父上は母上が大好きなんですね。本当は王様なんかやってないで母上と一緒にいたいんですよね」


「でも、それがダメだった」


 私は首を振る。

「父上、貴方は王族であり、次期国王だったから」

 そして私は言う。

「もしかしたら父上、貴方にとって私達息子は煩わしい存在なのかもしれませんね、母上との時間を奪う存在ですから」

「そんなことはない!!」

 ここで初めて父上が否定の言葉を発した。

「父上。私の伴侶達が身ごもり、母上は貴方の側だけでなく、私の伴侶達の身を心配しなければなりません。こればかりはすみません、伴侶達の願いに押されて彼らを孕ませたのは私なのですから」

「……ダンテ、お前は伴侶達とどうしたい?」

「……まだ分かりません、ただ一つ言えるのは」


「子どもらの親として、伴侶達と子を育て、共に歩みたいのです」


「……お前は、我が儘になったな」

「ええ、我が儘になりました。昔は諸事情でいい子でいなければならなかったですが、今それをする気はありません、ですから本心で父上と語りたいと思いました」

「……」

「と、言ってもこの我が儘もフィレンツォと母上からすれば可愛いものでしょうね」

「私の我が儘が大人げないとでも?」

「そうではありませんよ」

 父上の言葉を否定する。

「ただ、父上。貴方は今どんな理由があれ、国王なのです。民から慕われる立派な国王陛下。その責務を投げ出すことは御祖母様や母上の顔に泥を塗るに等しいでしょう」

「……分かっている」

 うつむくような小さな声で父上は言う。

「だから父上、一人で抱え込まされないで頼れる人を頼りましょう、皆がそれを待っています」

 私の言葉に、父上は漸く部屋から顔を見せた。

「ジェラルド!」

「父上!!」

「貴方……!」

 三人が駆け寄ってくる。

「後は三人に取りあえずお任せします」

 遠くで話を聞いていただろう三人に言うと、そろって頷き、父上に語りかけ始めていた。


 私は一人、ゆっくりと通路を歩いて伴侶達の元へと向かった──






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