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秋の国へ~兄弟の絆~

秋になったので別の国基アウトゥンノ王国へとやってきたダンテ達。

それをクレメンテの姉達が出迎え──




 夏が終わり、秋が来たので私達はアウトゥンノ王国へとやって来た。

「「ようこそお越し下さいました、ダンテ殿下」」

 出迎えたのはエルヴィーノ陛下ではなく、クレメンテの姉たちだった。

「ミリアム殿下と、ミア殿下。出迎え感謝致します」

「姉様達……兄上は?」

「陛下は仕事です、押しつけました」

 少し暗い表情をしていたクレメンテの目が丸くなる。

「どうして、ですか」

「あの馬鹿……じゃない、陛下は貴方の事となると周囲が見えなくなって迷惑を被るのですよ、全く頭いいのに馬鹿なんですから」

「ミリアム姉様、少し言い過ぎです」

「ミア、これくらいがいいのです」

 瓜二つとも言ってよい二人の会話に、私達は苦笑いを浮かべるしかなかった。


「──では、案内をさせて頂きますね」

「有り難うございます」

 ミリアム殿下はエルヴィーノ陛下の監視に戻ると言ったので、ミア殿下が案内をして下さった。


 案内された屋敷は他のと同じく、広く立派だった。


「ダンテ殿下、クレメンテを、弟をお願いしますね」

「分かりました」

 ミア殿下はそう言って立ち去ると、私達は屋敷で休憩モードに突入する。


「ミア殿下は細かく屋敷の説明をしてくれたな」

「ああ、風呂も全員で入れるくらいだし、ちょうどいいな」

「ところでクレメンテ」

「な、なんでしょう」

 アルバートがクレメンテに声をかける。

「お前さんも大変だなぁ、兄と色々あって。俺とカルミネは弟と色々あったから何かあったら力になるぞ」

「……有り難うございます。でも、貴方達とは事情が違うので……」

 クレメンテはそう言って部屋へと引っ込んでしまった。

「事情が違うからこそ力になれるんじゃないかって言おうと思ったんだがなぁ」

 アルバートが頭を掻いた。

「クレメンテの件はエルヴィーノ陛下の自業自得なので、私達は見守るしかないですかね……」

「そうでもないと思うぞ」

 カルミネがそう言った理由が私には分からなかった。





『カルミネの言葉にも一理ある』

──なら一体どうすれば?──

『時を待て』

──はぁ……──


 神様にぼかして言われて、困惑。

 この神様言わないときが多いんだよなぁ。


『お前の性格が原因だと何度もいってるだろう』

──はいはい、私の性格悪くてすみませんね!──





「それより、この国には収穫体験できる果樹園があるのだろう? そこへ行ってみないか?」

「いいですね、皆さんもそれでいいですか」

 アルバートの提案に私は乗っかる。

「ぼ、ぼくは、たべきれそうにないのでその……」

「いいですね、一度行ってみたかったんですよ」

「面白そうだな」

「今の時期ならグレーナが良さそうだな」

「カルミネ様、お詳しいですね。エリア様大丈夫ですよ、食べきれなかったら持ち帰ればいいんですから」

 フィレンツォがまとめるようにいう。

「そう、なんですか?」

「ええ、そうなんですよ」

「じゃあ……」

「ではフィレンツォ、手配をしてくれ」

「かしこまりました、ダンテ様」

 フィレンツォが早速手配をしだした。


 数分すると、少し困り顔でフィレンツォが戻ってきた。

「どうしたんです?」

「いえ、ほとんどの果樹園が他に予約している人がいるので悪目立ちするのを防ぐ為、エルヴィーノ陛下に連絡したところ、王家の果樹園に来て欲しい」

「エルヴィーノ陛下はいらっしゃるのですか?」

「いえ、仕事を山積みにされてできないのでミナ殿下が代わりに」

「……それにしましょう、ダンテ」

 クレメンテの言葉に私は頷く。

「──分かりました、フィレンツォ。それで」

「かしこまりました」

 フィレンツォがいなくなると、クレメンテがため息をついた。

「どうしたのです、クレメンテ」

「いえ……少しだけ、兄の事を……」

「仲良くしたいのかー?」

 アルバートが口を挟むと、クレメンテはなんとも言えない表情で首をふった。

「分からない。私は、兄とどうしたいのか、分からなくなってしまった」

 困り果てた顔でクレメンテはそう言った。

「兄のしたことは私を守る為とは言え許せないけど、だけども……」

「……」


『フィレンツォの所に行って、エルヴィーノに果樹園に来るよう連絡しろ』

──え?!──

『後は、ふたりきりにさせてやれいいな』


 神様からの突然の助言に戸惑いながら私はフィレンツォの所に行った。

「すまない、どうしてもエルヴィーノ陛下とお会いしたいのだ。明日果樹園に来て欲しいと」

「……クレメンテ様の事ですね」

「ああ」

「かしこまりました、何とかしてみます」

「ありがとう」


 フィレンツォの通話を見守り、私も通話に出てエルヴィーノ陛下に来るようになんとかしてもらった。


──大丈夫なのかなぁ──

『大丈夫だから言ってるのだ』


 神様の言葉はあれど、心配なので取りあえず今日はクレメンテと眠ることにした。

 エルヴィーノ陛下──兄と会う不安を取り除く為、優しく触れた。



 翌日。

 王家の果樹園につくと、エルヴィーノ陛下とミナ殿下がいた。

「お二人ともお出迎え感謝致します」

「いえ、こちらこそ、我が儘をいってすみません」

「いえいえ、我が儘を言ったのはこちらですので……」

 等と会話を繰り返しつつ、誰と果物を取るか話し合いをした結果──


 クレメンテがエルヴィーノ陛下と自分からペアになった。

 私は他の皆と一緒に取ることになった。


「この葡萄(ぶどう)美味しいですね」

「どれもほどよい甘みがいいですね」

「……あのクレメンテとエルヴィーノ陛下は……」

「そっとしておきましょう」


 私達とは離れた場所で、果実をもぎながら何か話をしている二人をエリアと私は見つめる。

「本当、二人だけでいいのか?」

「いいんですよ、二人でお話をさせてあげましょう」

 不安そうな他の三人にもいい聞かせて、果物をもいで口にしたり、土産のバッグに入れたりした。





 大分時間が経つと、クレメンテが戻ってきた。

 エルヴィーノの表情は遠目に見ても良い表情をしていた。

 クレメンテの表情も晴れやかだった。

「何を話してきたんだ?」

「秘密、です」

 カルミネの言葉にクレメンテはそう返して私に近寄って手に何かを置いた。

 黄金色の葡萄だった。


「ここの葡萄で年に二、三個とれるかとれないかの葡萄です。……父の時は全くとれませんでしたが、兄になった途端豊作になったらしいので、皆で後で食べましょう」

「ええ、そうしましょう」

 私は黄金色の葡萄をバッグにしまうと、クレメンテの頬を撫でた。

 クレメンテは目を細め、うっとりとした表情で私を見つめた。



 屋敷に戻って食べたその葡萄はどの葡萄よりも美味しかったし、エルヴィーノ陛下からも同じく差し入れが来た。


 通話先で「ダンテ殿下、クレメンテの伴侶が貴方で良かった。貴方に感謝を」と言われた。


「クレメンテ、お話できて良かったですね」

「貴方のおかげです、ダンテ」

 そう言って彼は私にキスをして、部屋に戻っていった。


 私はその感触に確かめながら自室に戻り、今日はエドガルドと眠りについた。







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