第九十一話「理不尽に、理不尽に潰される」
「どうしますかっ、ディザ様っ」
「どうにかすべきではあるな・・・・・・」
俺は魔王室で頭を悩ませていた。
シックが魔族側と勝手に決めつけられ、それで処刑が決まったという話だ。
もちろん、自分の教え子だし、見殺しにするわけにはいかない。
それに、放置したままだと、闇属性の印象が悪くなっていくに違いない。
だが、だからと言ってどうすればいいのか。
魔族の手下じゃないと証明する方法なんてあるのだろうか。
俺が出てきて、シックを保護することもできるかもしれないが、それは効果的なのだろうか?
結局不審なままじゃないだろうか・・・・・・。
「何か手はないのか・・・・・・」
「すまねぇ、オレ様が一緒に行動していれば、こんなことにはならなかったかもしれねぇのに」
ウェルフは心底後悔した顔をしている。
だが、ウェルフに問題があるわけではない。
こんな境遇に陥らせた奴が悪い。
「とりあえず、俺が勇者としてシックの釈放を要求してみるか。現状円満に終わる策が思いつかないし、最悪の流れだけは止めるつもりだ」
「すまねぇ、オレ様は何もできなさそうで・・・」
魔族であるウェルフが、人族のところに行くことはできない。
今回の件も手を出すことは難しいだろう。
「気にするな。悪いのはお前じゃないんだから」
「本当にすまねぇ・・・・・・」
ウェルフの申し訳なさそうな表情はそのままだが、本当にウェルフは悪くない。
全部、こんな世の中にした超上会が悪い。
本当にろくでもないやつらだ。
「ウェルフはこのまま城に居ろ。アイリス、シックが囚われている場所は分かるか?お前は姿変えられるし、ついてきてもらうぞ」
「了解ですっ」
アイリスは敬礼をした。
「私は一応情報を集めておきます。何か付け入る隙があるならば、それを活かしましょう」
マモンは今回の件の詳細を調べてくれるようだ。
そこからどうにかできる策が見つかるならば、それが一番だろう。
「ああ、助かる。だが、あまり時間もかけていられないし、待ち続けるつもりはない。情報は魔王城に一度戻ってから聞くことになるかもしれない」
シックを取り返すのが成功しても失敗しても、シックが人族よりも魔族に肩入れしているというのは、明らかに虚偽だ。
虚偽であることを証明できれば、闇属性の悪印象が強まることは無くなるだろう。
情報の入手は早いほどいいが、今回は遅くても、まだ利用することができる。
「承知しました」
マモンもそれを何となく理解しているのか、すぐに了承した。
「早速行くぞ、アイリス」
「はいっ」
俺はアイリスに連れられて、シックが捕まっているところへと向かい始める。
目が覚めると、私は牢屋に入れられていた。
手首には手錠がされていて、両腕が頭の上に吊るされている。
完全に身動きが取れない。
「目が覚めたか、女」
牢屋の外に居る、鎧を着た男が私に話しかけてきた。
「明後日にはお前の処刑が執行される。残りの人生、その汚い箱の中で満喫するんだな」
「しょ、けい・・・・・・?」
今、処刑って言った?
処刑ってことは、私殺されるってこと?
「ああ。お前は魔族側の人間だからな。野放しにすることはできない」
「ちょっと待って!誤解だって!」
このまま素直に従っていたら、本当に殺されてしまうかもしれない。
とにかく、何とかしないと。
「じゃあ、お前がワーウルフに背負われて魔王の城に入り、そこから無事な状態で出てきたのはどういうことだ?」
「・・・・・・っ!」
そこまで知られているのか。
それなら、いよいよ弁明のしようがない。
必死に言い訳を考えようとするも、そんな決定的な部分を見られては、どうしようもない。
「ねぇ、魔族ってそんなに嫌われるべきものなの?」
何か隙はないかと、とにかく言葉を出し続けないと。
「魔族なんて嫌われるべきものだろう。むしろ、どうして一緒に居られるんだ?」
「別に、襲ってこない魔族だって居るよ。そんな魔族とは仲良くしたっていいでしょ。何か悪いことがあるの?」
「何を言っている?魔族なんて嫌われるべきものだと、さっきから言っているんだが」
「・・・・・・」
男は本気で言っているようだ。
もう一切話が通じる気がしない。
価値観がそもそも違うんだ。
「闇属性が虐げられてる世の中も、こんなふざけた理由なんだろうな・・・・・・」
私は小声で呟いた。
「今何か言ったか?」
「何も」
男に聞かせるつまりなんてさらさらない。
はぁ、私こんなつまらない理由で殺されちゃうのか。
イーニの時もそうだったけど、私ってすぐ死にそうな目にあっちゃう。
何だろう、やっぱり調子に乗っちゃったところでもあるのかな?
「ずいぶん静かになったな。死の覚悟でもできたか?」
「おかげさまで」
こんなくだらない考え方の男の相手をしたって、疲れるだけだ。
何だか、死を受け入れた方が気が楽にも思えてくる。
イーニの時は、死の恐怖で泣きそうになっていた。
でも、今は涙が出そうもない。
絶望に近い感覚で、虚無感がある。
偏見で救われない人を減らすために頑張っていたのに、私はその偏見に殺されようとしている。
私、何か悪いことしたのかな?
私が死ねば、何か大きな変化でも起きるのかな。




