表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
99/175

第九十一話「理不尽に、理不尽に潰される」

「どうしますかっ、ディザ様っ」


「どうにかすべきではあるな・・・・・・」


 俺は魔王室で頭を悩ませていた。

 シックが魔族側と勝手に決めつけられ、それで処刑が決まったという話だ。


 もちろん、自分の教え子だし、見殺しにするわけにはいかない。

 それに、放置したままだと、闇属性の印象が悪くなっていくに違いない。


 だが、だからと言ってどうすればいいのか。

 魔族の手下じゃないと証明する方法なんてあるのだろうか。

 俺が出てきて、シックを保護することもできるかもしれないが、それは効果的なのだろうか?

 結局不審なままじゃないだろうか・・・・・・。


「何か手はないのか・・・・・・」


「すまねぇ、オレ様が一緒に行動していれば、こんなことにはならなかったかもしれねぇのに」


 ウェルフは心底後悔した顔をしている。

 だが、ウェルフに問題があるわけではない。

 こんな境遇に陥らせた奴が悪い。


「とりあえず、俺が勇者としてシックの釈放を要求してみるか。現状円満に終わる策が思いつかないし、最悪の流れだけは止めるつもりだ」


「すまねぇ、オレ様は何もできなさそうで・・・」


 魔族であるウェルフが、人族のところに行くことはできない。

 今回の件も手を出すことは難しいだろう。


「気にするな。悪いのはお前じゃないんだから」


「本当にすまねぇ・・・・・・」


 ウェルフの申し訳なさそうな表情はそのままだが、本当にウェルフは悪くない。

 全部、こんな世の中にした超上会が悪い。

 本当にろくでもないやつらだ。


「ウェルフはこのまま城に居ろ。アイリス、シックが囚われている場所は分かるか?お前は姿変えられるし、ついてきてもらうぞ」


「了解ですっ」


 アイリスは敬礼をした。


「私は一応情報を集めておきます。何か付け入る隙があるならば、それを活かしましょう」


 マモンは今回の件の詳細を調べてくれるようだ。

 そこからどうにかできる策が見つかるならば、それが一番だろう。


「ああ、助かる。だが、あまり時間もかけていられないし、待ち続けるつもりはない。情報は魔王城に一度戻ってから聞くことになるかもしれない」


 シックを取り返すのが成功しても失敗しても、シックが人族よりも魔族に肩入れしているというのは、明らかに虚偽だ。

 虚偽であることを証明できれば、闇属性の悪印象が強まることは無くなるだろう。

 情報の入手は早いほどいいが、今回は遅くても、まだ利用することができる。


「承知しました」

 

 マモンもそれを何となく理解しているのか、すぐに了承した。


「早速行くぞ、アイリス」


「はいっ」


 俺はアイリスに連れられて、シックが捕まっているところへと向かい始める。




 目が覚めると、私は牢屋に入れられていた。

 手首には手錠がされていて、両腕が頭の上に吊るされている。

 完全に身動きが取れない。

 

「目が覚めたか、女」


 牢屋の外に居る、鎧を着た男が私に話しかけてきた。


「明後日にはお前の処刑が執行される。残りの人生、その汚い箱の中で満喫するんだな」


「しょ、けい・・・・・・?」


 今、処刑って言った?

 処刑ってことは、私殺されるってこと?


「ああ。お前は魔族側の人間だからな。野放しにすることはできない」


「ちょっと待って!誤解だって!」


 このまま素直に従っていたら、本当に殺されてしまうかもしれない。

 とにかく、何とかしないと。


「じゃあ、お前がワーウルフに背負われて魔王の城に入り、そこから無事な状態で出てきたのはどういうことだ?」


「・・・・・・っ!」


 そこまで知られているのか。

 それなら、いよいよ弁明のしようがない。

 必死に言い訳を考えようとするも、そんな決定的な部分を見られては、どうしようもない。


「ねぇ、魔族ってそんなに嫌われるべきものなの?」


 何か隙はないかと、とにかく言葉を出し続けないと。


「魔族なんて嫌われるべきものだろう。むしろ、どうして一緒に居られるんだ?」


「別に、襲ってこない魔族だって居るよ。そんな魔族とは仲良くしたっていいでしょ。何か悪いことがあるの?」


「何を言っている?魔族なんて嫌われるべきものだと、さっきから言っているんだが」


「・・・・・・」


 男は本気で言っているようだ。

 もう一切話が通じる気がしない。

 価値観がそもそも違うんだ。


「闇属性が虐げられてる世の中も、こんなふざけた理由なんだろうな・・・・・・」


 私は小声で呟いた。


「今何か言ったか?」


「何も」


 男に聞かせるつまりなんてさらさらない。

 

 はぁ、私こんなつまらない理由で殺されちゃうのか。

 イーニの時もそうだったけど、私ってすぐ死にそうな目にあっちゃう。

 何だろう、やっぱり調子に乗っちゃったところでもあるのかな?


「ずいぶん静かになったな。死の覚悟でもできたか?」


「おかげさまで」


 こんなくだらない考え方の男の相手をしたって、疲れるだけだ。

 何だか、死を受け入れた方が気が楽にも思えてくる。


 イーニの時は、死の恐怖で泣きそうになっていた。

 でも、今は涙が出そうもない。

 絶望に近い感覚で、虚無感がある。


 偏見で救われない人を減らすために頑張っていたのに、私はその偏見に殺されようとしている。

 私、何か悪いことしたのかな?


 私が死ねば、何か大きな変化でも起きるのかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ