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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
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第九十話「逃げられない」

 私は魔王の城を出て、自分の実家へと一直線向かっていった。

 今は長期休暇だし、学校に居ても特にやることも無いから、実家でゆっくりしようかと思った。

 

 以前なら気が張っていて、実家なんて帰る余裕なんて無いとか思っていただろう。

 でも、今は心に余裕ができている。

 これも、自分の感じる負担を分け合おうとしてくれた先生のおかげだ。


「疲れた・・・・・・」


 家に向かって歩き続けているが、結構距離が遠そうだ。

 だいたいの場所は分かっているが、それ故に辿り着くまでの遠さに、心折れそうになる。


「ウェルフに連れてって貰えばよかったー!」


 私は地面に仰向けになった。

 ウェルフはおそらくまだ魔王城に居る。

 私も急ぎの用があるわけではないから、まだ城に滞在することはできた。


 でも、あの城の主人に迷惑をかけたくないから、さっさと外に出たんだ。

 あまり弱音を吐いてはいられない。


「それでも、疲れるのは疲れるなー」


 私は立ち上がり、家へと向かって進む。

 正直、今日中に帰れるかどうか怪しいかもしれない。

 お金も多くあるわけじゃないし、最悪野宿とかしないといけないかも。


 そう思いながら進んでいると、突然目の前に、鎧姿の男が数人現れた。


「おい、そこの女。止まれ」


「わ、私?」


「お前以外の誰が居る」


 全身武装した男たちが、私を取り囲む。

 何だろう、逃げ場を無くされたような人の配置だ。

 ちょっと怖い。


「な、何これ」


 鎧の男たちは、剣や槍を持って私を牽制してくる。

 一体何のつもりだろう。

 心当たりがない。


「たったさっきのことだ。魔族が多く居る城から、お前が出てくるのを確認した。お前を危険因子として捕らえることにする」


「え、え、え?」


「何をとぼけた顔をしている。いいから素直に従え。ヒューゼ王国の法によって、罪人のお前を裁く」


 鎧の男の一人が、私の腕を掴んで、手錠をかけようとする。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 素直に従えと言われても、逮捕すると言われては、素直になれるわけがない。

 私は掴んできた手を振り解く。


「あまり調子に乗るなよ」


 鎧の男の一人が、私の髪を掴んで引っ張り、私を地面へと倒した。

 そして、上から私を押さえつけ、腕を後ろに持ってきて、手錠をかけた。


「私、何もしていないのに・・・・・・」


「何かしてるしていないじゃない。お前が魔族と関係が深い可能性がある事が、反逆の可能性ありと見て、然るべき対応をする必要があるんだ」


「そ、そんなこと言われても・・・・・・」


「ごちゃごちゃうるさいんだよ、魔族に肩入れする女が」


 男は私の頭を強く殴る。


「ぐうっ!ううっ・・・・・・」


 強烈な衝撃のせいで、だんだん意識が遠のいていく。

 私、別に反逆の意思なんて無いのに。

 また、偏見によって、こんな目に遭っちゃうんだ。

 

 誰、か、助け、て・・・・・・。




 イル先生の家に訪れてから、俺はしばらく魔王城に居た。

 何だか、魔王城に戻ってから、やけにどっと疲れが襲ってきて、少し休みたい気分だった。


 魔王室で、特に何もやることなく椅子に座っていると、トントンとドアからノックが聞こえてきた。


「失礼いたします。マモンです」


 来訪者は、マモンのようだ。


「入っていいぞ」


 入室を許可すると、まもなくマモンが部屋に入ってきた。


「失礼いたします」


 マモンは深々とお辞儀をした。


「それで、要件は何だ?」


「はい。ウェルフがもう城を出るとのことで、それを知らせようと」


「そうか。ウェルフとは色々話せたか?」


「それはもう。あいつもあの女の子のことを楽しそうに話してましたよ」


「それはよかったな」


「はい」


 ウェルフは自分が大切にしたいと思う居場所を見つけたいと言った。

 どうやら、ウェルフにとって、シックは大切な人になったみたいだ。

 俺としても、自分の教え子が、ウェルフみたいな強い奴が味方なら心強い。

 とはいえ、シックは大怪我を負って金城にきたし、ウェルフを凌駕する敵が居るのも確かだが。


「どうしますか?ウェルフはまもなく城を出て行きますが、ディザ様もウェルフの見送りをしますか?」


「そうだな・・・・・・」


 正直、どっちでも良いとは思った。

 でも、シックはもう城には居ないなら、ウェルフに会いに行っても、シックに出会うことはないだろう。

 なら、自分の部下の友人だし、会うとするか。


「俺も行くとするか。ウェルフのとこまで案内してくれ」


「承知しました」


 マモンは深々とお辞儀をした。

 それから、部屋の外の方へと振り返り、ドアへと向かっていく。


 しかし、部屋を出る直前に、外からドタドタと走ってくる音が聞こえて、それからすぐにドアからガチャりと音が鳴った。

 中に入ってきたのは、アイリスだった。


「た、た、た、大変ですっ!ディザ様っ!」


「いきなりどうした、アイリス」


 アイリスは息を切らしながら、深刻な顔だった。

 こういう時は、だいたい本当に大変な事が起きている。

 俺は覚悟を決める。


「シックちゃんが、魔王の部下とみなされ、国家反逆罪で死刑が決まったらしいですっ!」


「・・・・・・何?」


 アイリスが言う大変なことは、俺が想像し得る度合いを大きく凌駕していた。

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