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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
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第八十九話「無属性の闇」

 イル先生の家の訪問を終えた俺とアイリスは、街にあるレストランで、一度食事をすることにした。


「どうでしたかっ?イルさんに会ってみてっ」


「そうだな、久しぶりに会えた感動はあったけど、最後に秘密を抱えてると直接言われては、モヤモヤが残ったままだな。アイリスは何か知ってるか?」


「いえ、私も分かりません・・・・・・。あの人がどうして色々なことを知っているのか、全くの謎ですっ」


 アイリスにも分からないらしい。

 アイリスだって結構様々なことを知っている方だが、さすがに全てを知っているというわけではないか。


「なあ、アイリスは何で世界の真実を知ってたんだ?」


「私、ですかっ?」


「ああ」


 アイリスもそうだ。

 精霊のことだって知ってるし、光の精霊の場所だって知っていたし、世界の真実だって知っている。 

 いつもははぐらかされてしまうが、今の雰囲気なら正直に話してくれるんじゃないだろうか。


「私、実はすごく長生きなんですっ。それこそ、人族と魔族が生族だった百二十年前も生きてました。長生きだから、人族と魔族になった経緯も知ってますし、光の精霊も出会う機会があったから、場所も知っていましたっ」


 アイリスは真剣な面持ちで語る。

 だが、どうも違和感を感じる部分がある。


「待てよ、ヒカリンはアイリスとかいうのは知らないって言っていたが、どういうことなんだ?」


「そ、そうなんです。えーと、言葉の綾というか、何というか・・・・・・。とにかく、長生きだから、精霊の居場所も聞いたことあるって感じですっ」


 アイリスは慌てた様子で、破茶滅茶なことを言いだす。


「つまり、話せないことがあるということか」


「はい・・・・・・」


 アイリスは申し訳なさそうにする。

 まあ、今に始まったことじゃないから、あまり気にしてはいないが。


「まあ、俺も色んな奴に秘密にしていることだってあるしな・・・・・・」


「その、超上会の女の人が言ってた話ですかっ?」


「そう、だな・・・・・・」


 アイリスはおそらくサノンのことを言っているだろう。

 サノンは俺が殺した一人の妹だった。

 そして、俺が人殺しということを暴露した。

 アイリスはどう思っているのだろうか。


「お待たせしましたー!」


 絶妙に悪いタイミングで、二人の料理が運ばれてきた。

 海に面した街なので、俺は魚の煮付けを頼んだ。

 アイリスは海鮮パスタを頼んでいる。


「い、いただきますっ」


「いただきます」


 とりあえず、目の前の食事に手をつけることにした。

 魚には濃い味がしっかりと染みている。

 その柔らかい身は、口の中に入れるとほろほろと崩れている。

 それもまた、口全体へと味を渡らせ、香ばしい香りは鼻を通り抜けていく。

 なかなか悪くない。


 アイリスもフォークを手に、クルクルと回して、パスタ麺をフォークに絡ませて、口に運んでいた。

 

「あ、美味しい・・・・・・」


 美味しいとは言うものの、顔はイマイチ暗い顔だった。


「どうだ?自分の主人が人殺しだった感想は?」


 俺の意地悪い問いに、アイリスはフォークを止め、しばし沈黙を続ける。

 少しした後、アイリスは口を開いた。


「魔族だって、色々命を奪ってきていますっ。人族が人族を殺したとしても、それが悪いと断定することは、ないですっ」


 アイリスは一言一言、言葉を選ぶように、慎重に話す。

 その様子は、まるで真意を隠すかのように、怯えた話し方にも聞こえる。


「もしかして、これも知っていたのか?」


「はい・・・・・・」


 アイリスは相変わらず申し訳なさげな表情だった。


 半ば当てずっぽうで聞いてみたが、どうやら俺が人殺しだと既に知っていたらしい。

 普通ならこの話題に既に触れてそうなものだが、わざと口にしなかったのは、俺が話題にされたくないだろうという理由でなく、自身の身を守るためだったのだろうか。

 別にイラつきはしないが、少々がっかりな気持ちにはなってしまう。


「で、どこで聞いたんだ?話は」


「え、えっと・・・・・・」


 アイリスは言いづらそうにしている。


「また、話せないことか?」


「いや、そういうわけではないんです・・・・・・」


「なら、話してくれ」


「は、はい・・・・・・」


 アイリスは小さく息を吸って吐いた。


「あの・・・イルさんから聞きました・・・・・・」


「イル、先生が・・・・・・?」


 衝撃だった。

 どこからどう話を知ったのか?

 超上会が俺が人殺しだと知ってるのは、まだ調査の結果ということで、把握しててもまだ理解できる。


 じゃあ、アルから聞いたのか?

 アルからイル先生に話して、アイリスに話が伝わったのか?

 

「イル先生は何で知っているんだ?アルから聞いたりしたのか?」


「いえっ、アルベルトさんが人魔和平委員会に入る前から知っていましたっ。それこそ、事が起きてすぐぐらいに・・・・・・」


 背筋が凍る。

 口が急激に渇いてきた。

 俺は一度水を飲んだ。


 分からない。

 何も分からない。

 イル先生は何者なんだ?

 自分の好きな先生、恩師。

 その人を信じていないわけではないが、あまりにも得体が知れなくて、正直恐怖してしまっている部分もある。


 結局、それからお互い一言も喋ることなく、食事が終わった。

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