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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
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第八十五話「優しさ」

「アイリスさんですよね?私です。ヒューゼ王国で悪魔に襲われた時、アイリスさんに助けてもらったシックです」


「えっと、あの、その、うんっ、覚えてるよっ、シックちゃんっ」


 アイリスさんはあたふたした様子だった。

 改めて見返すと、人族と全く同じ姿になっている。

 目をゴシゴシして、もう一度見ても、やはりたった先見た姿とは違う。


「ど、どうしたのっ?」


「いや、なんか見た目が違って見えて・・・・・・」


「わ、私はずっとこうだよっ!」


「ふーん?」


 もしそうなら、どうしてこんなに焦ってるのだろうか。

 まあ、何となく察することはできるが、隠したがっている以上、触れないようにしておこう。


「アイリスさんって、レイス先生と一緒に居ましたよね。どうして今ここに居るんですか?」


「え、え?そ、それは。えーと、何で?ってこと?だよねっ?」


「はい、そうです」


「え、えーと、それは、趣味?そう、趣味でここに居るっ!」


「なるほど」


 全くなるほどではないが、とりあえず同意してみる。

 明らかに不自然な反応だ。


「アイリスさんって、レイス先生とどういう関係なんですか?」


「レイスさんですかっ?あの人は、あの人は・・・」


 慌てた様子から一転、急にアイリスさんは落ち着いた。


「まあ、私が仕えたいと思う人、ですねっ」


 アイリスさんは優しい声色で語った。


 魔王が一体誰なのかは、何となく察することはできた。

 アイリスさんは全然誤魔化せていないし、多分この城に居るってことは、主人とやらもこの城に居るってことだ。

 

 でも、こんなに隠したがっているなら、私がいちいちこれ以上首突っ込むわけにはいかないな。

 まだ完治はしていないかもしれないけど、この城からはさっさと出て行って、また人族のところで生活していこう。


「アイリスさん、一つだけお願いしたいことがあります」


「何っ?」


 アイリスさんは可愛らしく、首を傾げる。


「この城の魔王に、助けてくれてありがとうございますって伝えておいてください」


「了解っ!」


 アイリスさんは笑顔で敬礼した。


 私はもう城を出るために、一度休ませてもらっていた部屋へと戻る。

 私が出た時には誰も居なかったが、部屋にはウェルフが待っていた。


「どこ行ってたんだ?」


「ちょっと城の中の探索」


「魔族いっぱい居るのに、平気なのかよ?」


 ウェルフはちょっとだけ心配そうにする。


「うん。むしろ楽しかったよ。色々とお話ししたし」


「ならいいんだが、相変わらず図太い精神してんな」


「ふふっ、凄いでしょ」


 私はドヤ顔とピースサインをウェルフに見せつける。


「別に褒めてはねぇよ・・・・・・」


 ウェルフは呆れた様子だった。


「そうだ、私もう帰るよ。ウェルフはどうする?」


「もう帰るのか?まだ完治してねぇんじゃねぇか?」


「別にこれぐらいは平気。いつまでもお世話になるわけにもいかないしね。ウェルフも帰る?」


「いや、オレ様の友人がここに居るからな。そいつとはまだ話せてねぇし、もう少しだけ居るつもりだ」


 ウェルフは穏やかな表情で話す。

 きっと、本人にとってかけがえのない友人なんだろう。


「そう。なら、私だけ帰るね」


「おう」


 ウェルフの短い返答の後、しばらくの沈黙が訪れる。


「・・・・・・何だよ。帰るんじゃないのか?」


 沈黙に耐えきれなかったウェルフが、私に話しかける。


「私たち、また会えるよね?」


 ウェルフとはここでお別れだ。

 出会いは突然だった。

 次に会えるかどうかの保証もない。

 本当はさよならなんてしたくないけど、私たちは人族と魔族。

 一緒に居るべきではないだろう。


「生きてたら、また会えるだろ」


 でも、ウェルフは私が一番嬉しい言葉をくれた。

 人族や魔族なんて関係ない。

 お互いが一緒に居たいと思えば、それだけでいい。


「じゃあね、ウェルフ」


「また会おう、シック」


 私とウェルフはお互いに拳をぶつけた。

 そして、私は魔王城から出て、ヒューゼ王国の育成学校の寮へと歩いていった。




「すみません、ディザ様・・・・・・」


「どうした。何があったんだ」


 アイリスが今まで見たことないほどに、深く落ち込んでいる。

 何があったか流石に不安になってしまう。


「あの女の子に、私がここに居ることがバレました・・・・・・」


「アイリスって、間違いなくシックに覚えられているよな」


「はい・・・・・・」


「はぁ・・・・・・」


 頭が痛くなってきた。

 結局、俺が魔王をやっていることは察せられたのかもしれない。

 これからシックに会わせる顔がない。


「そういえば、シックちゃんが、魔王に伝えて欲しいことがあるって言ってましたよっ」


「伝えて欲しいこと?」


「助けてくれてありがとうって」


「・・・・・・そうか」


 シックはきっと俺が魔王だということには気付いているだろう。

 でも、伝えたいことがこれだけってことは、気を遣ってくれているのだろうか。

 俺は随分と優しい人に恵まれている。

 今は、その優しさは本当に要らない。

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