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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
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第八十四話「調査」

「ディザ様、あの女の子、ディザ様に会いたいらしいニャ。お礼が言いたいとか」


「そうか・・・・・・」


 シックの面倒を見ていたケイシーが、魔王室へとやってきて。


 とうとう、危惧していた場面に遭遇してしまった。

 シックを魔王城で世話をし始めた時から、このことは恐れていた。


 人族なのに魔族の長をやっているなんて、そんなの知られるわけにはいかない。

 そもそも俺が魔王になったのは、人族での俺の地位を上げるため、魔族をコントロールして、好きなように行動しようと思っていたからだ。

 それなのに、魔王だなんてバレてしまっては、俺が人族に受け入れられるようなことなんてわけがない。


「その女はもう体調は大丈夫なのか?」


「うーん、もうちょっと休んだ方が良いとは思いますニャ」


「そうか」


 もう大丈夫そうなら、城にいつまでも居させないで、早く帰らせようと思っていたが、それは難しいらしい。


「俺はその女と会う気はない。部屋で大人しく休ませておけ」


 城に居たとしても、俺と会わなければ問題ない。

 あの部屋でずっと休ませておけば、心配無いだろう。


「あ、あの、それが・・・・・・」


「どうした?」


 ケイシーがちょっと焦った顔になっている。

 嫌な予感がする。


「あの女の子、勝手に部屋を出て行っちゃって、どこに居るか分からないですニャ・・・・・・」


「はぁ・・・・・・」


 思わずため息が出た。

 怪我も完治してないだろうに。

 

「俺はしばらく、この部屋に籠る。部屋の入り口も幻覚で見えないようにする。俺に用がある時は、アイリスを通すようにしてくれ」


「了解ですニャ」


 それだけを言って、ケイシーを部屋から退室させた。

 少しの間、窮屈な日が続きそうだ。




「よし、探索するぞ」


 私は、休んでいた部屋の中から許可も無く勝手に出ていた。

 多少腹の痛みは残っているが、まあ動くことはできる。

 魔王の情報を少しでも集めよう。


 とりあえず、部屋の直ぐ近くに掃除をしているスライムが居たので、この子に聞いてみよう。


「こんにちは。ちょっと話してもいい?」


「こんにちはデス!お話、いいデス!」


 スライムは元気そうに返事をする。

 年齢とかは見た目じゃ分からないけど、結構若そう。


「私を助けてくれた魔王のこと、教えてほしいんだけど」


「ディザ様のことデスか?いいデス!僕が知ってることなら、何でも教えるデス!」


「ディザ様?魔王の名前は、ディザって言うの?」


「はいデス!」


 レイス先生のフルネームは、確かレイス・ディーンだ。

 ディザなんて名前じゃない。

 じゃあ、魔王がレイス先生だってのは、私の勘違いなのかな?


「その、ディザって人。どんな人なの?」


「すごく優しい人デス!僕たちのことにも気を配ってくれてて、この前は幻覚?みたいなので、僕に綺麗な景色見せてくれたんデス!」


 スライムは、自身の主を誇らしげに語る。

 魔王が部下に慕われているということが、しっかりと伝わってくる。


「そうなんだ。その幻覚って、やり方とかって分かる?」

 

「僕は闇属性を使えないから、詳しくは分からないけど、なんか闇に覆われたってのだけは、分かるデス」


「闇に覆われる・・・・・・」


 私もよく周囲の情報を得るために、闇を周りに漂わせることはするが、それに似たような感じだろうか。

 それにしても、その範囲に全くの別の景色を見せるなんて、私には想像ができない。

 それに、そんなことができるなんて、私はレイス先生から教えられていない。

 やっぱり違うのだろうか・・・・・・。


「教えてくれてありがとう。助かった」


「ワーーーイ!」


 スライムの頭を撫でると、嬉しそうに喜んだ。

 ちょっと可愛いかも。


 次に、私は近くに倉庫っぽいのがあったので、そこの倉庫番に話を聞いてみることにした。


「こんにちは、今時間ある?」


「ン?人族か。どうせ暇だし、話ぐれェなら付き合うぜ」


 倉庫番をしているのは、リザードマンだった。

 ここには、色々な魔族が居るっぽいな。


「ねぇ、魔王の話を聞きたいんだけど」


「お、ディザ様か?あの方ァ、すげェ人だ。俺が初めてその力を目にした時、とんでもねェ奴と出会ッたと、俺は感じたな」


 リザードマンは目を輝かせて、魔王について語る。

 この人にも、魔王は慕われているみたいだ。


「その時、どんなことしてたの?」


「聞いて驚くなよ。人形を闇で覆ったと思ったら、次の瞬間には、それが消えてンだ。初めからそこにはねェんじゃねェかッてぐれェにな。跡形も残ってねェんだよ」


 リザードマンはやけに興奮したように語る。

 確かに、それは初見の感動はすごいだろう。


 でも、私は一度それを見たことがある。

 レイス先生がやってくれていた。

 けれど、確かにすごいことだけど、闇を飲み込んで対象を消すことは、基本的なことだ。

 これでは、判断はできない・・・・・・。


「なンだ?あンまりすごくねェってか?」


 リザードマンは不愉快そうな顔で、私のことを睨んでくる。


「い、いやそうじゃなくて!凄すぎて、ついボーッとしちゃった感じ!」


「そうかそうか!だよなァ!すげェよなァ!」


 リザードマンは嬉しそうにしている。

 よかった、変に機嫌を損ねなくて。


「色々教えてくれてありがとう。じゃあね」


「おう!」


 私はリザードマンと別れを告げた。


 次はどこに行こうか。

 魔王の情報はそれなりに集まりはするけど、断定できるような要素はない。

 どんな魔族にどんな話を聞けばいいのだろう。


 色々考えながら歩いていると、見慣れた顔の人が居た。

 いや、前は人だと思っていたけど、今見ると、羽やら角が生えている。

 明らかに魔族だった。


「アイリス・・・さん・・・・・・?」


「あっ、やばっ」


 魔王城で出会ったのは、私が以前に助けてもらった、アイリスさんだった。

 

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