第八十三話「魔王城で目覚めた少女」
目が覚めると、私は知らない部屋のベッドの上だった。
「あれ・・・?ここ、どこ・・・・・・」
なんだか頭がボーッとする。
とりあえず、私は身体を起こそうとした。
「い、いたた・・・・・・」
けれど、お腹には痛みがあって、起き上がることはできなかった。
「シック!目が覚めたか!よかった・・・・・・」
「あ、ウェルフ・・・・・・?」
ウェルフが私のことを心配そうに見ている。
ああ、そっか。
私、イーニって人に戦いを挑んで、それでウェルフが痛い目にあって、私も殺されかけて・・・・・・。
「私のせいで、ウェルフまで酷い目にあっちゃって、本当にごめん」
「いや、オレ様だってお前に乗っかったんだ。お前一人のせいってわけじゃねぇ。むしろ、オレ様がお前を守れるほど強くねぇのが悪いんだ」
ウェルフはすごく申し訳なさそうにしている。
その姿がちょっと面白くて、何だか笑ってしまいそうだった。
「ありがとう。今日のウェルフ、すごく優しいね」
「べ、別にいいだろ」
ウェルフは照れ臭そうに顔を逸らす。
多分こんな様子のウェルフを見ることは、滅多に無いだろう。
今のうちにしっかり覚えておいて、また今度いじってやろう。
「ところで、ここはどこ?私は誰に助けてもらったの?」
あの時、私は間違いなく致命傷を受けていた。
多分だけど、普通に治療したぐらいじゃ、私の傷は治らないぐらいに酷かったと思う。
誰か回復魔法とかに長けた人が助けてくれたと思う。
それに、この見覚えの場所もどこか気になってしまう。
ウェルフの知り合いのところとかだろうか?
予想をすることはできるけど、それしかできない。
「目が覚めたかニャ?良かったニャ」
「ね、いやケットシー?」
「そうだニャ。この城で料理長をやってる、ケットシーのケイシーニャ。君は人族で合ってるニャ?」
「う、うん。そうだけど・・・・・・」
私が居る部屋に、突然ケットシーが入ってきた。
ウェルフが連れてきた場所だから、当然魔族が居る場所のはずだけど、改めて魔族の拠点に居ると知ると、流石にびっくりする。
「どうぞニャ」
ケイシーは私に飲み物をくれた。
「あ、ありがとう・・・・・・。あ、おいしい」
ケイシーからもらったお茶は美味しかった。
人族の舌にも合うような味なのだろうか。
「ここは魔王城だ。オレ様の旧友がここに居てな。まあ、人族も多分受け入れてくれる場所だから、ここに来たんだ」
「ま、魔王城?魔王城なの、ここ?」
「そうニャ」
ケットシーは私の問いに頷く。
魔王って、人族を襲う魔族を束ねている長だ。
その魔王の城は、人族の私を受け入れてくれる場所?
ダメだ、頭が混乱してしまう。
「もしかして、魔王城に連れてくるのはまずかったか?」
混乱した様子の私に、ウェルフが声をかける。
「い、いや。もしここに来ないと、私が死んじゃってなら全然良いし、襲われる気配も無いから大丈夫だけど・・・・・・。魔王が人族の私を受け入れてくれているのが、どうも理解ができなくて・・・・・・」
「大丈夫ニャ。人族を襲ってたのは前の魔王様。今の魔王のディザ様は、城の中でグータラしてるか、外でなんかよく分からないことしてるかのどっちかだニャ」
「そ、そうなんだ。あの、私には関係ないかもしれないけど、魔王にそんなこと言っていいの?」
ケイシーは上司である魔王にも、容赦なく暇人認定している。
魔族はそんなフランクな関係なんだろうか?
「まあ、細かいことは気にしない人ニャ。今の魔王様は、すごく優しい人ニャ」
「ちょっと待って、人って言った?人って言ったよね?」
ケイシーは間違いなく、人と言った。
人という呼び方を普通は魔族相手にしない。
聞き間違いか言い間違いか、気になってしまって、つい聞き返してしまった。
「ああ、今の魔王は人族なんだ。オレ様も会ったことはあるけど、魔族相手にも普通に接する奴だったな。闇属性を扱うのは、前の魔王も今の魔王も同じだが」
「人族で、闇属性を扱う・・・・・・?!」
「そうニャ。珍しいよニャ」
「め、珍しいけど・・・・・・」
私の知ってる中で、闇属性を扱える人族は私を含めて三人しかいない。
私と、モンデと、レイス先生・・・・・・。
私は当然のことながら、魔王じゃない。
だったら、モンデかレイス先生だと思うけど、モンデはつい最近まで旅をしていたし、魔族を束ねられほどの人じゃないと思う。
「ねえ、ケイシー。今の魔王になったのって、いつ頃?」
「ニャ?確か、半年以上は前だったニャ」
「半年・・・・・・」
レイス先生が私たちのところに現れたのも、半年と数週間前の話だ。
逆に、モンデは旅に出ると言うまでは、ずっと育成学校に居た。
レイス先生は実力もあるし、勇者として旅に出ていたから、ここに来たこともあるかもしれない。
でも、もし新しい魔王がレイス先生だとしたら、前の魔王はどうなったんだろう?
どうして、レイス先生は魔王になったの?
分からないことだらけだ。
そもそも、先生が魔王とも限らない。
とにかく、人族の魔王とやらに会わないと。
まずはそこからだ。
「ねえ、ケイシー。お願いがあるんだけど」
「何ニャ?」
「私、魔王にお礼が言いたい。だから、魔王に会わせて」




