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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第八章「人魔和平委員会」
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第八十一話「人魔和平委員会」

 サノンとの戦いを終え、俺たちは魔王城へと戻った。

 ドラゴン討伐の報告は、アイリスがやってくれるとのことで、すぐにシックのところに戻ることができた。

 ヒカリンもいつの間にか俺たちについてきていて、今は昨夏の様子を見てくれている。


 アルも一緒に魔王城に来ていた。

 アルは人族だが、どうせ俺が魔王をやっていることはバレている。

 だが、助けてもらったとはいえ、アルは俺の魔王としての活動に反対していた。

 これから話をするとのことだが、場合によっては、今度こそ確実に殺さないといけないかもしれない。

 

 アルには恩義がある。

 嫌いな人間というわけではない。

 けれど、邪魔をするならそれは排除しないといけない。


 魔王室で一人待っていると、ドアがガチャっと音を出して開いた。


「へぇ、随分良い部屋だな。お偉いさんの部屋ってわけか」


 だいぶ軽い調子で、アルが部屋に入ってきた。

 

「シックの調子はどうだ?」


「あの女の子か?結構危なかったらしいけど、とりあえずは安心な状態になったらしい。まあ光の精霊様なら問題無いだろうな」


「そうか、それは良かった」


 時間稼ぎのように、シックの話をする。

 大丈夫だということはすでに分かっているが、何となく本題に入るのが怖かった。


「それじゃ、そろそろ本題に入るか」


「・・・・・・ああ」


 唾をゴクリと飲む。

 いったい何を言われるのか。

 俺は覚悟を決めていた。


「まず、どうして俺が生きているか。俺はお前も知っている人に助けられたんだ」


「俺も知っている人?」


「ああ」


 いったい誰なのだろうか。

 俺も知っている人、ますます不都合な気しかしない。


「イル先生だよ。俺が死にかけのとき、イル先生が通りかかって、救ってもらったんだ」


「イル先生?!イル先生が?!」


 イル先生は、俺が学生時代にお世話になった先生だ。

 先生は魔王軍の勢力が強まって、しばらく学校から姿を消していた。

 そして、学長曰く、どこか遠くに行ってしまったとのことだ。

 俺はてっきり魔王軍によって死んでしまったものだと思っていた。


「落ち着けよ、ちゃんと話すから」


 俺が驚いた様子を見て、アルは宥める。

 俺も話をきちんと聞く必要があると思い、一度深呼吸を入れて、心を落ち着かせた。


「イル先生は秘密裏に動いている人なんだ。まあ、とある団体があって、そこのトップだ。それで、俺が倒れているところをたまたま見かけて、そして協力してほしいと頼まれたんだ」


「待て、話の内容がいまいち掴めない。もっと詳細に話してくれ。とある団体って?協力って何をだ?」


「ちゃんと全部説明するって言ってるだろ」


 ちゃんと全て話すと言われても、早く詳しい内容を知りたいと思ってしまう。

 それほどに、アルの話す内容は分からないことだらけだ。


「イル先生は、人魔和平委員会って団体の会長をやっているんだ。まあ、勝手にそういう名前をつけているだけで、どこかに認められた正式な団体ってわけじゃないけどな。その団体の目的は、人族と魔族の関係を良好にすることだ。名前の通りだな」


「人魔和平委員会・・・・・・?人族と魔族の関係の良好・・・・・・?」


 いったいどういうことだ?

 人族と魔族の関係を良好にするための団体?

 どうしてそんなことをするんだ?


「ああ。目的の話は一旦後に回すとして、何故俺がお前を助けに来たかの話を先にしよう」


「わ、分かった」


 正直、ここまで話を聞くと、委員会の目的の理由の方が気になってしまうが、元々話の大事な部分はそこじゃない。

 後でちゃんと話してくれるなら、素直にアルの話を聞き続けるとしよう。


「人族と魔族の関係を良くするには、間違いなく超上会の存在は邪魔だ。奴らは人族の闇属性をとにかく排除しようとする。闇属性と魔族を強く結びつけようとしているのも奴らだ。俺たち和平委員会は、実質超上会の対抗組織と言ってもいい」


「それは、確かにそうだな」


 つまり、人魔和平委員会は超上会の敵であり、ならば俺の味方でもあるということであってるのだろうか。

 

「俺は和平委員会の一員として、人族の闇属性を助けるために行動している。お前の生徒であるモンデも、俺が少しの間世話を見ていた。今は信頼している奴に預けているから、モンデのことも当面は心配しなくていい」


「モンデのことを知っているのか?」


「ああ。勝手に旅に連れ回ってた。学校で学べないようなことも学ぶ必要もあると思ってな。ダメだったか?」


「いや、モンデのためになることなら問題ない。ありがとう」


「そうか。なら良かった」


 アルがモンデと知り合いということは知らなかった。

 育成学校は闇属性排除の思想を持った人間も居るから、他で彼が成長できるなら、むしろ良いのかもしれない。

 

「アルが超上会の敵であるから、俺を助けに来たのは分かった。それで、どうして俺のところまで来れたんだ?」


「そうか、その説明も必要だったな」


 アルはハッと思い出したかのような顔をした。

 

「お前のところに、アイリスって子がいるだろ。あの子も人魔和平委員会の一人なんだよ」


「アイリスが?!あいつもそうなのか?!」


「ああ。むしろ、俺はあの子から色々情報を貰ってる。随分と助けられているよ」


「確かに、あいつは色々なこと知りすぎてるところはあるからな・・・・・・」


「だよな?俺もビックリした。とにかく、レイスのことも聞いてるんだよ。光の精霊に会いに行くから、一応何かあった時に助けられるところに来てくれってな」


「そうだったのか・・・・・・」


 アイリスまでもが人魔和平委員会だったのか。

 じゃあ、俺は知らないところで、相当あいつに助けられていたのかもしれないな・・・・・・。


「いや、ちょっと待ってくれ。アイリスは魔族だぞ。魔族も人魔和平委員会に所属しているのか?」


 人族と魔族の関係を良くしようと考えているのは、人族だけでなく魔族側も考えているということ。

 冷静に考えれば、魔族側も人族と良好になりたいからこそ、和平委員会というものができているのかもしれないが、それでもどうも違和感が生まれてしまう。

 魔族側に人族と仲良くやっていきましょう、なんて考え方があるのだろうか?


「そうだな。それこそが、お前が一番聞きたかったことに繋がる話だな。人魔和平委員会が何故存在するか、その話を今からしよう」

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