第八十一話「人魔和平委員会」
サノンとの戦いを終え、俺たちは魔王城へと戻った。
ドラゴン討伐の報告は、アイリスがやってくれるとのことで、すぐにシックのところに戻ることができた。
ヒカリンもいつの間にか俺たちについてきていて、今は昨夏の様子を見てくれている。
アルも一緒に魔王城に来ていた。
アルは人族だが、どうせ俺が魔王をやっていることはバレている。
だが、助けてもらったとはいえ、アルは俺の魔王としての活動に反対していた。
これから話をするとのことだが、場合によっては、今度こそ確実に殺さないといけないかもしれない。
アルには恩義がある。
嫌いな人間というわけではない。
けれど、邪魔をするならそれは排除しないといけない。
魔王室で一人待っていると、ドアがガチャっと音を出して開いた。
「へぇ、随分良い部屋だな。お偉いさんの部屋ってわけか」
だいぶ軽い調子で、アルが部屋に入ってきた。
「シックの調子はどうだ?」
「あの女の子か?結構危なかったらしいけど、とりあえずは安心な状態になったらしい。まあ光の精霊様なら問題無いだろうな」
「そうか、それは良かった」
時間稼ぎのように、シックの話をする。
大丈夫だということはすでに分かっているが、何となく本題に入るのが怖かった。
「それじゃ、そろそろ本題に入るか」
「・・・・・・ああ」
唾をゴクリと飲む。
いったい何を言われるのか。
俺は覚悟を決めていた。
「まず、どうして俺が生きているか。俺はお前も知っている人に助けられたんだ」
「俺も知っている人?」
「ああ」
いったい誰なのだろうか。
俺も知っている人、ますます不都合な気しかしない。
「イル先生だよ。俺が死にかけのとき、イル先生が通りかかって、救ってもらったんだ」
「イル先生?!イル先生が?!」
イル先生は、俺が学生時代にお世話になった先生だ。
先生は魔王軍の勢力が強まって、しばらく学校から姿を消していた。
そして、学長曰く、どこか遠くに行ってしまったとのことだ。
俺はてっきり魔王軍によって死んでしまったものだと思っていた。
「落ち着けよ、ちゃんと話すから」
俺が驚いた様子を見て、アルは宥める。
俺も話をきちんと聞く必要があると思い、一度深呼吸を入れて、心を落ち着かせた。
「イル先生は秘密裏に動いている人なんだ。まあ、とある団体があって、そこのトップだ。それで、俺が倒れているところをたまたま見かけて、そして協力してほしいと頼まれたんだ」
「待て、話の内容がいまいち掴めない。もっと詳細に話してくれ。とある団体って?協力って何をだ?」
「ちゃんと全部説明するって言ってるだろ」
ちゃんと全て話すと言われても、早く詳しい内容を知りたいと思ってしまう。
それほどに、アルの話す内容は分からないことだらけだ。
「イル先生は、人魔和平委員会って団体の会長をやっているんだ。まあ、勝手にそういう名前をつけているだけで、どこかに認められた正式な団体ってわけじゃないけどな。その団体の目的は、人族と魔族の関係を良好にすることだ。名前の通りだな」
「人魔和平委員会・・・・・・?人族と魔族の関係の良好・・・・・・?」
いったいどういうことだ?
人族と魔族の関係を良好にするための団体?
どうしてそんなことをするんだ?
「ああ。目的の話は一旦後に回すとして、何故俺がお前を助けに来たかの話を先にしよう」
「わ、分かった」
正直、ここまで話を聞くと、委員会の目的の理由の方が気になってしまうが、元々話の大事な部分はそこじゃない。
後でちゃんと話してくれるなら、素直にアルの話を聞き続けるとしよう。
「人族と魔族の関係を良くするには、間違いなく超上会の存在は邪魔だ。奴らは人族の闇属性をとにかく排除しようとする。闇属性と魔族を強く結びつけようとしているのも奴らだ。俺たち和平委員会は、実質超上会の対抗組織と言ってもいい」
「それは、確かにそうだな」
つまり、人魔和平委員会は超上会の敵であり、ならば俺の味方でもあるということであってるのだろうか。
「俺は和平委員会の一員として、人族の闇属性を助けるために行動している。お前の生徒であるモンデも、俺が少しの間世話を見ていた。今は信頼している奴に預けているから、モンデのことも当面は心配しなくていい」
「モンデのことを知っているのか?」
「ああ。勝手に旅に連れ回ってた。学校で学べないようなことも学ぶ必要もあると思ってな。ダメだったか?」
「いや、モンデのためになることなら問題ない。ありがとう」
「そうか。なら良かった」
アルがモンデと知り合いということは知らなかった。
育成学校は闇属性排除の思想を持った人間も居るから、他で彼が成長できるなら、むしろ良いのかもしれない。
「アルが超上会の敵であるから、俺を助けに来たのは分かった。それで、どうして俺のところまで来れたんだ?」
「そうか、その説明も必要だったな」
アルはハッと思い出したかのような顔をした。
「お前のところに、アイリスって子がいるだろ。あの子も人魔和平委員会の一人なんだよ」
「アイリスが?!あいつもそうなのか?!」
「ああ。むしろ、俺はあの子から色々情報を貰ってる。随分と助けられているよ」
「確かに、あいつは色々なこと知りすぎてるところはあるからな・・・・・・」
「だよな?俺もビックリした。とにかく、レイスのことも聞いてるんだよ。光の精霊に会いに行くから、一応何かあった時に助けられるところに来てくれってな」
「そうだったのか・・・・・・」
アイリスまでもが人魔和平委員会だったのか。
じゃあ、俺は知らないところで、相当あいつに助けられていたのかもしれないな・・・・・・。
「いや、ちょっと待ってくれ。アイリスは魔族だぞ。魔族も人魔和平委員会に所属しているのか?」
人族と魔族の関係を良くしようと考えているのは、人族だけでなく魔族側も考えているということ。
冷静に考えれば、魔族側も人族と良好になりたいからこそ、和平委員会というものができているのかもしれないが、それでもどうも違和感が生まれてしまう。
魔族側に人族と仲良くやっていきましょう、なんて考え方があるのだろうか?
「そうだな。それこそが、お前が一番聞きたかったことに繋がる話だな。人魔和平委員会が何故存在するか、その話を今からしよう」




