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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
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幕間2

 これは、アルベルトがレイスのところに行く前の話。


「あの、旅人さん。出かけるってどこに行くんですか?」


「秘密だ秘密。どこに行ったっていいだろ」


 今、俺と旅人さんは山の中で野宿をしていた。

 旅の途中で、次にどの街に行くか決めていないが、見かけた街に行こうということになっている。


 俺が一緒に旅をしている旅人さんは、急に一人で出かけると言い始めた。

 いつも好き勝手してはいるが、旅の途中にいきなりこんなこと言われたら、俺はどうしたらいいんだ。


「俺一人でどうするんですか?勝手に旅続けていいのか、それとも学校に戻ればいいんですか?」


「おいおい、そんなに俺が居なくて寂しいのか?」


 旅人さんはニヤニヤとして答える。

 こういう時のこの人に付き合っても無駄だ。

 無視しよう。


「はぁ、今日もつれないな、モンデは」


 逆に旅人さんが寂しそうにしている。

 うん、やっぱりこの対応でいい。


「まあ、とにかく俺はちょっと行くところがあるから。その間にお前を守ってくれる奴呼ぶから。そいつに世話になっとけ」


「ええ?旅人さん知り合い居たんですか?」


「いや、当たり前だろ。俺を何だと思っているんだ」


 旅人さんは俺のこめかみに、ぐりぐりと拳を押し付けてきた。


「痛い痛い!」


 旅人さんは俺の痛がる姿を見て、満足そうにして、拳を押し付けるのをやめた。


「逆に、俺が友達少なそうに見えるか?」


「べ、別にそういうわけじゃないですけど」


 そういうわけじゃないけど、何だか一人が似合いそうなイメージを勝手に持っている。

 だから、誰か知り合いを呼ぶということが珍しく感じてしまったのだ。


「ということで、今来てもらう。頼みました、チーダ姉貴」


「あいあいよ」


 旅人さんに呼ばれて、茶と金色が混ざったような短髪の女性が現れた。

 年齢は旅人さんと同じぐらいだろうか?

 俺より年上なのは間違いない。


「あたしはこいつの面倒見ればいいんだね?」


「お願いします。姉貴に任せるのも申し訳ないですけど、姉貴ほど頼れる人は居ないんでね」


「分かってるじゃんか、アル。あたしのこと評価してくれてんだね」


「評価も何も、当たり前ですよ」


 旅人さんはやけにチーダという女性に、丁寧な話し方をしている。

 それほどまでに、この人は凄い人なのだろうか?

 あと、旅人さんの名前がアルということも今初めて知った。


「あんた、名前はなんて言うんだ?あたしはチーダ。よろしくな。姉貴って呼んでくれ」


 チーダさんは俺に握手を求めてきた。


「俺、モンデって言います。よろしくお願いします、チーダさん」


「おい!」


 俺がチーダさんに自己紹介をし、握手を交わすと、焦った顔で旅人さんが叫んだ。


「あたし、言ったよね。姉貴って呼んでね、って」


 チーダさんは俺の手を握り潰すぐらいの勢いで力を込めてきた。


「痛いです!わ、分かりました!姉貴!」


「分かればいいんだ」


 チーダさん、いや姉貴はにっこりとして、手を離してくれた。

 

「言うことは素直に聞いておけよ」


 旅人さんは俺に耳打ちをしてきた。

 俺も、すぐに旅人さんの態度を理解することができた。

 この人に逆らっちゃダメだ。


「あの、ところでチーダさ・・・姉貴ってどんな人なんですか?人の素性を聞くのは失礼かもしれないけど、さすがに全く知らないのもアレなので」


 チーダさんと呼びかけて、ギロりと睨まれた時は焦ったが、姉貴のことはある程度は知っておきたいと思った。

 旅人さんもほとんど見ず知らずの人だったけど、だからと言って、知らない人ばかりついていくのも、流石に危険だと思う。


「あたしか?あたしは土の精霊だよ。どんな人って言われても、人じゃないから、質問には実質答えられないな。はっはっはっ!」


「せ、精霊?」


 姉貴の屁理屈はともかく、精霊という単語を俺は聞いたことがない。

 それともなんだ、もしかしてそういうタイプの人なのか?

 それなら、一緒に行動するの不安なんだけど。


「え、言っちゃっていいんですか?」


「いいのいいの。アルの知り合いなんだろ?他言無用って言ったけば、心配は無いさ」


「俺を信用してくれてるのは嬉しいんですけど・・・・・・」


 旅人さんは困った表情だった。

 というかこの態度、精霊ってのは本当のことなのか?


「あ、あの。精霊ってなんですか?」


「ああ、そのことから知らないのか。説明してあげるよ」


 それから、精霊についての話を姉貴から聞いた。

 何となく使えてた属性の力は、精霊によるものだったのか。

 土属性が得意な旅人さんが、土の精霊に気に入られてるのも、なんとなく納得が行った。


「闇の精霊も居るんですか?」


「居るよ。どこに居るかは知らないけどね」


 やっぱり、闇の精霊も居るのか。

 まあ、闇属性もこの世に存在するなら、それもそうか。


「会いたかった?」


 俺が考えてる素振りをしていると、姉貴が声をかけてきた。


「うーん・・・・・・」


 正直、会いたいとは思わない。

 闇属性は人族に嫌われている。

 言ってみれば、闇の精霊はその元凶みたいなものだ。

 

 でも、この偏見も良くないってことは、もう分かってる。

 もし会うことがあったら、その時は偏見なしにありのままの姿を見よう。


「とりあえず、俺はもう行ってくるから。死ぬなよー」


「し、死ぬことあるんですか?」


「いや、旅は何があるかわからないだろ。死ぬかもしれないし」


「そういうことですか・・・・・・」


 真顔で答える旅人さんに何も言うことができない。

 もう面倒だから、これ以上はいいや。


「気をつけて行ってこいよ、アル」


「ありがとうございます。あいつに会うのは久しぶりだし、ちょっと緊張しますけどね」


 旅人さんは誰かに会いに行くみたいだ。

 しばらく会ってない人に会いに行くってことなら、特に止める気も起きないな。


「必ず帰ってきてください。俺、まだ一緒に旅したいですから」


 本心だ。

 俺にとって、この人は大きい存在になっている。

 ここで今生の別れにはなってほしくない。

 普通はこんなこと言わないけど、自由奔放な人だけに、ちょっと心配してしまう。


「ああ、ちゃんと帰ってくるって。お前も、俺の大切な人の一人だからな。また帰ったら、旅に連れて行ってやるよ」


 旅人さんは拳を突き出してきた。

 俺はそれに合わせて、拳をぶつける。

 旅人さんも、俺のことをそう思ってくれていることが、少し嬉しい。


 そうして、旅人さんは俺とは別にどこかに行った。

 一緒に旅をした時間は、ほんの少しだったけど、良い時間だったと思う。


 それに、また一緒に旅をする約束をしたんだ。

 その時を楽しみに待っていよう。

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