幕間
「うーん・・・あ、あれ・・・・・・?私、今どこ・・・・・・?」
「やっと正気に戻った?良かったよ、このまま精神崩壊したままだったら、もうお別れだったね」
私はイーニに背負われていた。
いまいち記憶が曖昧だ。
レイスと戦っていたのは覚えているけれど、結局どうなったっけ・・・・・・。
そうだ、私はイーニに助けられたんだった。
私がもう殺されるってタイミングで、イーニが来てくれたんだった。
「ごめん・・・・・・」
「いいよ、これぐらい。僕たち仲間でしょ」
「自分のことが一番大好きな人から、そんなセリフが聞けるなんてね」
「随分元気そうだね。ここに置いていってもいいかい?野獣にでも食われてしまえばいいよ」
「ごめんって。背中、このまま貸して」
「サノンからそう言われるのも気味が悪いなぁ」
「ふふっ」
イーニは私に気を遣っているのか、なんだかいつもよりも優しい声色だ。
歪んだ性格の奴だけど、なんだかんだ自分の気に入った人には、こうして優しくしてくれる。
今はそれが少し嬉しい。
「あとちょっとだったのになぁ」
「うん、あと少しだったね」
あと少しで、レイスを殺すことができた。
本当に、あと一撃だった。
なのに、邪魔が入ってしまった。
「すごい落ち着いているね。僕が助けに入るちょっと前は、発狂したり放心状態になったりで忙しかったのに」
「今はそれどころじゃないかな・・・・・・。感情の起伏も面倒なほどに疲れちゃった」
お姉ちゃんを殺したレイスとは、今回が初めて会うことになった。
姉の仇、本来なら出会ってすぐに復讐心で満たされたのだろう。
けれど、実際会ってみても、復讐心らしいものは湧かなかった。
殺したいのは多分事実だ。
居るか居ないかで言えば、居ない方が良いと思う。
お姉ちゃんの唯一を持っていることに対して、私は少なからず嫉妬している。
でも、お姉ちゃんが殺されて許さないという感情では無かった。
何というか、まるで欲しいものを取られて、駄々をこねる子供のような気持ちだ。
「ねぇ、イーニ。私ってお姉ちゃんのこと愛してるのかな?」
「ええ?急にどうしたのさ」
イーニは困惑した表情になっていた。
そりゃそうだ。
私は散々姉の話をイーニにしている。
イーニが私と居る時、唯一嫌な顔をする時間だ。
「僕はね、君のことを気に入っているんだ。それは、自分の核をしっかり持っているからね。君の姉への愛がそうだ。それは間違いなく君の強さに繋がっていると、僕は思うよ」
「うん・・・・・・ありがとう、イーニ」
イーニの言葉は、私にとって温かいものだった。
うん、私はお姉ちゃんが大好きだ。
だから、その気持ちでここまで強くなれたんだ。
次は絶対に、確実に殺す。
どんな邪魔が入ってきても関係ないぐらいに。
お姉ちゃんを殺したあいつを殺してやるんだ。
この思いを持ち続けていれば、絶対夢は叶うはず。
「サノンって確かヒューゼ王国の育成学校の寮に住んでいたよね?その辺りまで連れて行けばいいかな?」
「うーん、イーニの家に行っていい?」
「僕の家?今日は突然なことを言う日みたいだね」
「別にいいじゃん。行きたいと思ったんだから。それで行っていいの?ダメなの?」
「姉の話をしないって約束するならいいよ」
「分かった。ちょっとだけにするから。それでいいでしょ」
「姉の話に関してだけは、君の言うことは信用できない」
「何それ。どっちにしろ、イーニの家に行っちゃダメってことじゃん」
「嘘だよ。普段は誰も呼ばないんだけどね。今回だけ特別に、ね」
「ふふっ。ふふふっ」
「その気味の悪い笑い方は何?」
「別に?面白かっただけ」
「変なこと言ったつもりはないんだけど。失礼すぎない?」
「違う。私自身が面白いの」
「ますます意味分からない。それに、その優しい口調も調子が狂う」
「今だけは、許してね」
「仕方がないな」
「ねぇ、イーニ」
「今度は何?」
「ありがとう」
「・・・・・・どういたしまして」




