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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
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第七十八話「優秀で万能な妹」

「行きますよ・・・・・・それ!」


 サノンは巨大な火球を俺へ目掛けて、まっすぐ飛ばしてくる。

 そのあまりにも大きすぎる火球は、谷底の狭さでは避けることは難しい。

 何とか受け切るしか無い。


「わ、わ、わ、私は逃げるんですけどー!」


 ヒカリンはサノンから逃げるように、どこかに飛んでいってしまった。

 力を使い果たしたばかりだ、精霊に死の概念があるかは分からないが、仕方がないことだろう。

 それよりも、俺は目の前の火球をどうにかしないといけない。


「ディザ様っ!」


「アイリス!」


 アイリスは俺の後ろの方から、火球に負けないほどの大きさの闇の壁を作る。

 その壁は相当な密度で、サノンの火球を防ぎきることができた。


「悪い、助かった!」


 アイリスは無言で頷き、サノンの方を睨みつける。


「面倒なのが居るなぁ。ちょっとどいてもらえますか?」


 サノンはアイリスに、超高速の岩石を飛ばした。

 岩石は、アイリスの腹部ど真ん中に命中したはずだが、身体をすり抜けた。

 おそらく、アイリスの見せる幻覚で、そこにアイリスが居ると錯覚させているのだろう。


「何それ。よく分からないことしてくるなぁ。もう仕方がないや」


 そう言って、サノンは暴風を巻き起こす。

 暴風は、風の壁のように、俺とサノンのみを囲う。


「うっ・・・・・・」


 アイリスと俺は完全に分断されてしまった。

 この強烈な風の壁に触れてしまえば、ひとたまりもない。

 アイリスは壁の外で歯軋りをして、俺とサノンを外から見ることしかできなかった。


「これで、ちゃんと一対一ができますね。レイスさん」


「いいのか?こんな壁を作りながら戦うことなんてできるのか?」


 魔法をキープし続けることは、間違いなく本人の精神力を削り続ける。

 それに、今サノンが使っているのは、生物を一切通さない強力な暴風で、それを決して狭いとは言えない範囲に展開している。

 この状態のまま戦うのは、相当な負担がかかる。


「いいんですよ。私はお姉ちゃんみたいに無力で不器用で弱っちくて頭悪い魔法使いじゃないですからね。これで十分なんです」


 サノンは余裕そうな表情を見せる。

 油断は禁物ということだろうか。


「まあ、論より証拠ですね。さくっと殺しはしませんから、身をもって体験してください」


 サノンは再び、杖の先に岩石を作る。

 今度は、それを風の刃で粉々にした。

 その粉々になった岩石が、サノンの生み出す突風に乗って、一気に襲いかかる。


 どでかい一撃では無いだけに、避けきることは不可能だ。

 俺は闇で壁を作って、それを防ぐことにした。


 けれど、その小粒の攻撃は、信じられないぐらいに高密度だった。

 全ての攻撃を防げなかったわけでは無いが、壁を貫通してくる粒も少なくなかった。


「くっ・・・・・・!厄介すぎるな、どうしようもない攻撃ってのは!」


「ふふふ、それをどうにかしないと勝ち目はないですよ?」


 壁を貫通した砂粒が、全身を切る。

 衣服はところどころ破れ、そこから皮膚へ到達した攻撃は、皮を切り裂き、赤い血が流れる。

 頬、二の腕、太もも、様々な部分が赤色で彩られた。


 距離をとっていては、完全にサノンが得をする距離だ。

 何とか距離を詰めて、接近戦で仕留めるしかない。


「はぁっ!」


 俺は剣を構え、一気にサノンに向かって走る。


「まっすぐ走ってくる・・・・・・。離れていたらどうしようもないから、とりあえず近づく。まあ普通の考えですね」


 サノンは再度杖を俺の方に向ける。

 どんな攻撃が来ようと、必ず対応してみせる。

 杖先から決して目を離さず、俺は集中をした。


 しかし、サノンは杖先から何かを出すことは無かった。

 そして、俺の足元が急に不自由になる。


「何っ!」


 サノンの杖先は、俺の足元へと向けられている。

 俺の足元は、サノンの魔法によって凍らされていた。

 完全にバランスを崩した俺は、サノンの居る前方へと倒れる。


「わざわざ接近、ありがとうございます」


 サノンは杖で直接俺の腹を殴る。


「ガハッ!」


 俺は口から血を吐いた。

 その血はサノンの顔へと飛び散る。


 杖で腹を殴られて怯んだ俺の顎に、サノンは踵で蹴りつける。

 俺は少しの距離を吹き飛ばされて、地面に伏した。


「魔法使いに近づいたら、どうにかなると思いました?残念でしたね」


 サノンは鞄から、ミールの首を取り出した。

 サノンは、顔に飛び散った血を指で拭き取り、その指をミールの口の中へと突っ込む。


「はい、お姉ちゃん。今日のドリンクだよ。私がお姉ちゃん冷やしちゃってるからね。温かいものを飲んで、しっかりあったまってね」


 サノンはにっこりと笑顔を浮かべた。

 ミールの舌に、俺の血をしっかりとなすりつけた後、サノンは首を鞄の中にしまった。

 そして、サノンは再び顔に飛び散った血を指で拭き取り、今度は自身がそれをぺろりと舐めた。


「まずい・・・・・・。私、こんなものお姉ちゃんに飲ませちゃった。雑魚で役立たずで泣き虫なお姉ちゃんにピッタリだね」


 サノンは残念そうな表情になる。

 俺には、彼女の感情が全く読めない。


「いつまでそこで寝そべっているんですか?もう死にますか?弱すぎませんか?」


 サノンは倒れている俺をつまらなさそうに見下す。


 闇属性は敵を飲み込むイメージが重要だ。

 けれど、魔法の強さで言えば、間違いなくサノンの方が格上だ。

 何とかして、小細工で彼女を上回るしかない。


 だが、サノンの魔法の種類は多彩だ。

 人にはそれぞれ得意属性があるものだが、サノンはどれも高水準に扱える。

 その多彩さが、俺の小細工を潰しかねない。


「ずいぶんと厄介な相手だな。確かに、姉より数倍強い」


 俺は立ち上がった。

 このまま戦い続けると、間違いなく負けてしまう。

 何とか対抗策を考える必要がある。


「レイスさんがお姉ちゃんのこと語らないでください。いや、語ってもいいかも?いや、やっぱり語らないでください。語るなら半分ぐらい語ってください」


 サノンは不快感を露骨に顔に出して、意味不明なことを言い始める。

 

 情けない話だが、彼女はまだ俺を本気で殺しにかかっているわけではない様子だ。

 つまりは、まだ機会があるということ。

 ここからが、反撃開始だ。

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