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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
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第七十七話「サノンの愛情」

「超上会、だったのか。サノンは」


「はい!超上会だったんです。私は」


 サノンは杖を片手に、にっこりと笑う。

 先程の火球の威力は凄まじく、彼女は相当優れた魔法使いのようだ。


「なるほどな。俺に近づいてきたのは、俺を殺すための機会を伺うためということか?」


「そういうことです。ドラゴン討伐に行くとのことで、それが終わった隙なら、さっくり殺れちゃうかなと思ったんです」


「超上会の目的は何だ?いったい何がしたいんだ?」


「目的、ですか・・・・・・。まあ、単純な理由ですよ。人族にとって、闇属性は異分子なんです。だから、排除しないといけない。それだけの理由です」


 サノンは持っている杖をクルクルと回しながら答える。


 超上会にとって、闇属性は異分子?

 そんなの、ふざけている。

 

「どうして闇属性が異分子扱いなんだ?あなたは異分子です、死んでください、で済むわけがないだろう」


 俺は凄んでみせるが、サノンは一切怯まない。


「あー、これどこまで話していいか分からないんですよね。だから、ごめんなさい。秘密ということでお願いします」


 サノンは表面だけ申し訳なさそうな顔をする。

 けれど、その口調の軽さから、本気で言っていないことが分かる。


「結局のところ、サノンは超上会として、異分子である俺を排除しに来たというわけか」


「え?あ、えー。まあそう思われちゃいますよね。やっぱり超上会って名乗らない方が良かったかな・・・・・・」


 サノンは、それは違うと言わんばかりに、頭を抱えた。

 彼女には何か裏があるようだ。


「どういうことだ?全く何を言ってるか分からない」


 彼女の真意は何か、それを知るために俺は問う。


「それじゃ、これでも見てもらいましょうか。レイスさんも知ってるものです」


 そう言って、サノンは肩にかけていた鞄から、何かを取り出そうとした。


「はい!これは何でしょうか!」


 サノンが鞄から取り出したのは、かなり大きくて丸い物だった。

 それをよく見ると、その物は、見慣れた顔だった。


「そ、それって・・・・・・」


「レイスさんはもちろん知ってますよね。これはお姉ちゃんの首です。あなたと魔王討伐のためにパーティを組んでいた、あなたに殺された、私の大好きなお姉ちゃんの首です」


 サノンが取り出したのは、人の首だった。

 俺が以前に一緒に旅をしていた仲間の一人、魔法を得意としていた仲間の、ミールの首だった。


 その首は綺麗に手入れされていて、人の首を切り落としてすぐの状態と言われても、違和感のないほどに、丁重な扱いをされていた。


「ああ、お姉ちゃんが死んじゃって、こんな状態になっちゃって。おかげでずっと一緒に居られて。旅に出るって聞いた時は寂しかったけど、もうずっとずっと一緒なんだ」


 サノンは恍惚な表情で、ミールの首に口付けをした。


「冷たいっ!腐らないように冷凍してるから、やっぱりひんやりするなぁ。生きてたら温かいキスができたのに。まあ仕方がないか」


 サノンはミールの首を再び鞄にしまった。


「つまりお前は、姉を殺した本人に復讐に来たということか?」


「復讐?うーん、復讐なんですかね?よく分かりません」


「どういうことだ?」


 サノンの目的は、俺への復讐だと思っていたが、その言葉に彼女はピンと来ていないようだった。


「私の姉ってダメダメなんですよ。弱くて役立たずで雑魚で馬鹿で無能で泣き虫で非力でのろまでどうしようもないような人間だけどそれが可愛くて何かあれば私のところにすぐ泣きついてきて私がお姉ちゃんを慰めるとすぐに安心した顔になって完全に私が居ないと心がすぐ折れちゃうような人になっちゃってそれでも妹が凄いだけなのにデカい顔してそれで何か失敗したらまた私のところに泣きついてきてそれまでのしたり顔から一転して大泣きして顔面ぐちゃぐちゃになっちゃってそれが凄く可愛くて一生お姉ちゃんを離したくないと思ってもし私の物にならないならむしろ私も同じようにお姉ちゃんを殺して一生お姉ちゃんを独占しちゃおうかと思ったりもしましたよ」


 サノンが姉の話をする時、やけに饒舌になっていた。

 もはや人に聞かせるつもりが無いほどだ。

 自分が姉について語っていることこそが、彼女にとって重要なようだ。


「そう、結局私もお姉ちゃんを殺してたかもしれないんです。だって、死んでしまえば私とずっと一緒に居られるから。でも、もうお姉ちゃんは殺されちゃった。それから気づいたんです。お姉ちゃんに死を与えた唯一の人族は私じゃない。取られちゃったんですよ。あなたに。でも、イライラするわけじゃない。嫌悪感があるわけでもない。ただ、レイスさんはこの世に居る必要が無いと思っただけです。お姉ちゃんにとっての唯一を持ってる人間はこの世に必要無いと、本能で感じてるだけです。それこそ、異分子のように」


 サノンは無表情で、俺に杖を向ける。

 明らかに人を憎しむ顔ではない。

 俺は、サノンの感情を理解することができなかった。


「超上会はたまたま私と同じ目的を持つだけです。レイス先生が闇属性だからか、それとも姉を殺した張本人だからか、それだけの違いなんです。私としても、志が同じ仲間が居た方が心強いですからね。私が超上会に居る理由なんて、そんなもんです」


「結局のところ、俺を殺したいという意思があることには変わらないんだな」


「そうですね、その通りです」


 サノンの杖の先に火球が作られる。

 初めは小さい火球だが、徐々に大きくなっていき、その大きさは、人族の顔二十個分ぐらいの大きさになっていた。


「まあ何はともあれ。死んでくださいね、レイスさん」


 サノンはにっこりと笑った。

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