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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
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第七十六話「精霊の寵愛」

「俺が、精霊やドラゴンを超えた存在になる?」


「はいっ」


 アイリスは真剣な様子だった。


「こいつ、精霊を超えられるほどの力を持ってるとは思えないんですけど!たかが生族なんですけど!」


 ヒカリンはアイリスの言うことを信じられないようだ。

 確かに精霊ならば、俺と精霊がどれほどの力の差があるのか分かるのだろう。

 そのヒカリンが信じられないならば、そういうことなのだろう。

 

「光の精霊なら、何とかできるんじゃないですかっ?」


「ええ?!もしかしてやるの私?!面倒なんですけど!」


 なんと、アイリスはヒカリンへと丸投げしだした。

 アイリスからの提案だと言うのだから、アイリスが何か策があるのかと思えば、そういうことでは無いらしい。


 そして、逆にヒカリンには、何か策があるようだった。

 面倒だとは言っているが、できないとは言っていない。

 むしろ、できるけれどやりたくないようだ。


「ヒカリン、できるのか?」


「え、ええと、まあできなくはない気はする、こともない気がする、ような気もしなくはない気がするんですけど・・・・・・」


 ヒカリンはちらちらとアイリスの方を見ながら答える。

 その視線は鋭く、憎しみさえこもっているように見える。


「お願いしますっ」


「はぁ、もう面倒ったらありゃしないんですけど」


 なんだかんだ言いながら、ヒカリンは承諾した。


「さっそく始めるんですけど。君はちょっと目閉じて欲しいんですけど。アイリスちゃんはドラゴンが攻撃仕掛けてこないか、見張っといて欲しいんですけど」


「分かった」


 俺はヒカリンに言われるがままに目を閉じた。

 それから少しすると、突然身体の奥の方から力が湧き上がってくるような感覚がした。

 体温が上がっているような気がする。

 もはや意図的に制御する意識が無いと、全身が力の波動で破裂してしまいそうだ。


「終わりなんですけど。もう目が開けていいんですけど」


「こ、これは?!」


 自分でもどれほどの力か計り知れないほどに、属性の力を引き出すことができそうだ。

 匙加減すら分からない。

 もはや自分が自分で無いかのような感覚だ。


「精霊の寵愛を与えたんですけど。精霊が魔素をばら撒いて、それを受け取った生族が属性を扱うことは知ってると思うんですけど。それを意図的に君に送ったんですけど」


「なら、この得体の知れない力の感覚は、もしかして・・・・・・」


「君、今光属性を使えるんですけど。今だけの特別なんですけど」


 ヒカリンは俺の方をビシッと指差す。

 俺の身体の中にあふれる得体の知れない力は、光属性の力だったのか。


 だが、それにしても、あまりにも強大すぎる。

 俺が今まで感じたことのないほどの、エネルギー量だ。


「後のやり方は簡単なんですけど。適当に、体内のエネルギーを放出する感じでやれば問題ないんですけど。闇属性とたいして変わらないんですけど」


「分かった」


 俺は右手をドラゴンの方へと向けた。

 身体の中に溢れているエネルギーを、右手へと集中させる。

 

 この感覚に、違和感は無かった。

 闇属性の時にも無意識にやっているからだ。

 だが、その力の大きさと、闇属性との感覚の違いのせいか、より強く意識的に操作してしまう。


「はぁっ!」


 俺は、右手に溜めた光属性を一気に放出させた。

 俺の右手から放たれる光線は、目にも止まらなぬ速さで、一直線にドラゴンの方へと。


 そして、その光線は、ドラゴンの心臓部分へと突き刺さる。


「グォォアァ?!」


 ドラゴンの身体に綺麗な穴が空いた。

 光線の通った部分は、まるで初めからそこに何も無かったかのように、空間が生まれている。

 ドラゴンを見たことない者なら、これこそがドラゴンの本来の姿だと勘違いしてもおかしくないほどに、綺麗な穴だった。


「グ、ァア、ァァァ・・・・・・」


 心臓を貫かれたドラゴンは、絞り出すように声を出して、そのままドスンと音を立てて、倒れた。

 どうやら、討伐は成功したようだ。


 だが、討伐に成功したことの喜びよりも、あまりに強すぎる精霊の寵愛の力に、俺は内心恐怖していた。


「なあ、精霊の力って、こんなに強力なのか?」


 俺は思わず、ヒカリンに聞いた。


「うーん、まあ精霊だけの力では無いんですけど。精霊って魔素を大量に持っているだけで、その魔素って実はあまり精霊に適してないんですけど。だから、生族に寵愛を与えることで、属性の扱いに長けている生族に魔素を大量に与え、超強力な力を使えるようになるんですけど。相乗効果って奴なんですけど」


「なるほど・・・・・・」


 ヒカリンの言葉は納得ができた。

 元々、ヒカリンだけでこれだけの力を出せるなら、ドラゴン討伐を依頼する理由が無い。

 

「はー、疲れたんですけど!しばらくは生族一匹助けるぐらいしか力が出せないんですけど!これだから、嫌だったんですけどー」


 ヒカリンは地面にぺたりと座り込む。

 どうやら、シックを助けてくれる力だけは、ちゃんと残してくれていたみたいだ。

 なんだかんだ、律儀な部分が垣間見える。


 ドラゴン討伐は終わり、後は街に報告して、魔王城に帰り、シックを治療してもらうだけだ。

 だが、俺は少し気になったことが残っていたので、それをヒカリンに聞くことにした。


「ヒカリン、もし闇属性の精霊が俺に寵愛を与えたら、今より強力な力を使えたのか?」


「もちろんなんですけど。君は光属性を一切使えないと思うんですけど、それでアレなんだから、闇属性ならとんでもないと思うんですけど」


 ヒカリンは平然とした口調で語る。

 光属性を全く使ったことのない俺でも、あれほどの威力だ。

 冗談ではなく、世界を滅亡させることだって出来そうな力だ。


「ちなみに、闇の精霊ってどこに居るんだ?」


「えー、闇の精霊?まあ、知らないことは無いんですけど、教えるつもりも無いんですけど。あいつ、すごい面倒な奴なんですけど。それとも何です。世界滅亡させたいんです?」


 ヒカリンは今までで一番面倒な顔になっていた。

 それほどまでに、闇の精霊のことが好きじゃないのだろうか。


「いや、ただ単に俺にこの力を与えた奴に会ってみたかっただけだ。世界を滅亡させたいわけでも無い。闇の精霊を恨んでるわけでも無い。ただ、愛着の湧いたこの力を与えてくれた奴に、会いたいだけだ」


「ふーん」


 ヒカリンは打って変わって、面白いものを見つけた子供のように、ニヤッと笑った。


「その気持ちがあれば、いつか会えると思うんですけど。闇の精霊って面倒な奴だから、ちゃんと闇属性のこと好きであり続けるといいんですけど」


「ああ、そうするよ」


 俺はヒカリンの言葉には頷いた。


「話終わりましたかっ?そろそろ帰りますよっ」


 アイリスは俺とヒカリンの会話をずっと待ち続けていたようだ。

 待たせてしまって、申し訳ない。


「悪い、急ぐ必要もあるしな。さっさと帰ろう」


 そう言って、俺たちは洞窟の外へと出た。


 そして、洞窟の外へと出た途端、頭上にわずかに違和感のある熱を感じた。

 上を見上げると、巨大な火球が、俺たちへと襲いかかっていた。


「くそっ!」


 俺は急いで、闇を作ってその火球を防ごうとする。

 だが、その火球はとてつもなく高密度で、俺の闇で完全に防ぎ切ることはできそうも無かった。


「アイリス、ヒカリン、避けろ!」


 俺たち三人は、それぞれの方向へと、火球を避けるために転がる。

 俺たちが元居た場所に、巨大な火球が衝突し、轟音が起きる。


 大量の土埃と砂の破片に襲われる。

 そして、土埃が晴れ、火球の衝突した部分には、巨大な穴が空いていた。


「いきなり何なんだ、これは」


 俺の闇でも防ぎ切れないほどの魔法。

 それも、俺たちが洞窟から出るのを見計らったかのようなタイミング。

 明確な殺意を込められた攻撃であることは間違いない。


「あーあ、ドラゴン退治で疲弊して。そんなところに不意打ちでボンッ。あっという間に勇者は死んでしまいました。なんて、簡単には行かないなぁ」


 谷の上から、少女の声が聞こえる。

 そしてその少女は、谷の上から、俺たちの居る谷底まで飛び降りてきた。


 普通の人族なら、飛び降りたら命は無いような高さ。

 そもそも声が届くのもおかしい。

 そんな高さを、少女は何事もなく、ふわりと俺たちの目の前に着地した。


 そして、俺たちへと攻撃をしてきたその少女は、俺が見たことのある人物だった。


「また会いましたね。と言っても、会いに来たのは私からですが。改めまして、超上会所属、サノンです」


 サノンは不敵な笑みで、ニコッと笑った。

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