第七十四話「空想上で超越的存在」
俺たち三人は、地図を頼りに、ドラゴンの居るらしい場所へと向かっていく。
「しかし、俺にドラゴン討伐ができるのか?人族や魔族を超越した存在なんだろ?」
「私も協力しますよっ!一緒に頑張りましょうっ!」
アイリスは気合十分のようだ。
アイリスは相当頼りになるし、これだけやる気があるならかなり頼もしい。
俺はヒカリンはどうだろうかと、ヒカリンの方を見る。
「ん?何か言いたいことでもあるんです?もしヒカリンに恋しているなら、それはお断りなんですけど」
ヒカリンはあまりやる気が無いようだ。
そもそも人にお願いをするぐらいだし、自分積極的に働こうという気は無かったのだろう。
しばらく歩いていると、ドラゴンが居る谷へと辿り着いた。
「この下に居るらしいんですけど、君はこれ降りられんです?」
谷は結構深く、底が見えないわけではないが、そのまま飛び降りても無事で済むわけでは無い深さだ。
少々の高さなら、衝撃を抑える闇を作って、それで着地することができる。
けれど、この深さなら厳しい。
どうしようかと悩んでいる時に、俺に一つの案が思い浮かんだ。
「なあ、アイリス。空間移動のやつ、この距離でもできるか?」
「あっ。できますっ!」
アイリスは思い出したように、ハッとした。
「え、アイリスちゃんってそんなことできるんです?初耳なんですけど」
「ふふんっ、あなたにはできないでしょうっ!」
「むっ!ムカつくけど、これは素直に認めるしか無いんですけど」
アイリスはマウントを取れたことが嬉しいのか、誇らしげな顔になっていた。
ヒカリンは悔しそうにしていたが、アイリスに何か強く言うようなことはなかった。
アイリスはすぐさま空間に闇のゲートを作る。
「はいっ、どうぞっ」
「ありがとう」
そのゲートの中に入ると、谷の底へと繋がっていた。
やはり理屈はイマイチ理解できないが、非常に便利だ。
俺もいつか使えるようになりたいと思う。
「へー、空間という概念を飲み込んでるんですけど。光属性でも応用できそうなんですけど」
ヒカリンは仕組みを一度で理解し切ったようだ。
そこはさすが精霊というべきか、属性の応用に関しての理解の深さは高いようだ。
「やっぱりできますっ?」
「うん。でも、アイリスちゃんなかなか賢いんですけど」
「私も日々努力してますからねっ」
「うむ、なかなか偉いんですけど」
珍しく、お互いいがみ合うことはなく、むしろ讃えていた。
毎度こうならいいのだが・・・・・・。
何はともあれ、地図の示した場所通りのところに、洞窟があった。
「この中にドラゴンが居るのか・・・・・・」
洞窟の外からでも、確かに唸り声が聞こえる。
この中に居ることは間違い無さそうだ。
洞窟の入り口はかなり広く、高さにして、人の五倍ぐらいはある。
相当大きいドラゴンが居ることを覚悟しても良さそうだ。
「よし、行くぞ」
俺の言葉に、二人は無言で頷く。
洞窟の中はさすがに暗かった。
火属性を用いて、洞窟内を明るくする。
「なあ、そう言えば光属性で、辺りを明るくすることはできないのか?」
自分で火属性を使ったすぐ後に、今は俺の側に光の精霊が居ることを思い出した。
「ああ、それぐらいならお安い御用なんですけど」
そう言って、ヒカリンは突然両手を広げた。
その広げた手からは、光を発する球体が生まれた。
「とりあえずこれでいいです?」
ヒカリンは自分がしたことを自慢げにするわけでもなく、まるでなんてことないことだと言わんばかりに、涼しげな表情だった。
けれど、彼女の作り出した光源は、非常に安定している。
光源を作ることが、どれほどの難しさかは分からないが、これを平然とやってのけるのは、光の精霊ならではだと感じた。
明るくなった洞窟内を俺たちは歩き続ける。
奥へ進めば進むほど、唸り声は近づいてくる。
間違いなく、ドラゴンへと近づいている。
さらに進み続けると、少し先で物音が聞こえる。
「多分、この先に居るはずだ。準備はいいか?」
俺は二人に問うと、二人とも頷いた。
いつもは調子に乗った様子のヒカリンも、さすがに真剣な面持ちだ。
いざドラゴンと戦うとなると、油断はならないのだろう。
「行くぞ!」
持ってきている剣を手にする。
俺が先頭になって、音の位置まで走り出す。
アイリスはナイフを、ヒカリンは手ぶらで俺の後をついてきた。
いざ、その場所に辿り着くと、ドラゴンが居た。
全身は爬虫類のような緑の鱗に覆われ、大きな両翼が背中に広がっている。
それで攻撃されたらひとたまりもない、鋭利な牙に鋭利な爪。
その巨体は、人族の何倍あるかも計り知れず、今まで出会ったどの生物よりも巨躯であった。
ドラゴンは俺たちが来たことに気づき、俺たちの方へと向く。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!」
耳が塞ぎたくなるほどに大きな咆哮が、洞窟内へと響き渡る。
それからまもなく、ドラゴンは口から炎を吐いた。
「ディザ様っ!」
アイリスは俺たち三人の前に、闇で障壁を作り、ドラゴンのブレスを防ぐ。
「間違いないな。物語で語られているのと一致している。こいつが、ドラゴンだ!」
俺たちは、空想上の存在と思われていたドラゴンに出会った。
今から、人族と魔族と精霊で力を合わせて、この超越した存在のドラゴンへと挑む。




