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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
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第七十四話「空想上で超越的存在」

 俺たち三人は、地図を頼りに、ドラゴンの居るらしい場所へと向かっていく。


「しかし、俺にドラゴン討伐ができるのか?人族や魔族を超越した存在なんだろ?」


「私も協力しますよっ!一緒に頑張りましょうっ!」


 アイリスは気合十分のようだ。

 アイリスは相当頼りになるし、これだけやる気があるならかなり頼もしい。


 俺はヒカリンはどうだろうかと、ヒカリンの方を見る。


「ん?何か言いたいことでもあるんです?もしヒカリンに恋しているなら、それはお断りなんですけど」


 ヒカリンはあまりやる気が無いようだ。

 そもそも人にお願いをするぐらいだし、自分積極的に働こうという気は無かったのだろう。


 しばらく歩いていると、ドラゴンが居る谷へと辿り着いた。


「この下に居るらしいんですけど、君はこれ降りられんです?」


 谷は結構深く、底が見えないわけではないが、そのまま飛び降りても無事で済むわけでは無い深さだ。

 少々の高さなら、衝撃を抑える闇を作って、それで着地することができる。

 けれど、この深さなら厳しい。


 どうしようかと悩んでいる時に、俺に一つの案が思い浮かんだ。


「なあ、アイリス。空間移動のやつ、この距離でもできるか?」


「あっ。できますっ!」


 アイリスは思い出したように、ハッとした。


「え、アイリスちゃんってそんなことできるんです?初耳なんですけど」


「ふふんっ、あなたにはできないでしょうっ!」


「むっ!ムカつくけど、これは素直に認めるしか無いんですけど」


 アイリスはマウントを取れたことが嬉しいのか、誇らしげな顔になっていた。

 ヒカリンは悔しそうにしていたが、アイリスに何か強く言うようなことはなかった。


 アイリスはすぐさま空間に闇のゲートを作る。


「はいっ、どうぞっ」


「ありがとう」


 そのゲートの中に入ると、谷の底へと繋がっていた。

 やはり理屈はイマイチ理解できないが、非常に便利だ。

 俺もいつか使えるようになりたいと思う。


「へー、空間という概念を飲み込んでるんですけど。光属性でも応用できそうなんですけど」


 ヒカリンは仕組みを一度で理解し切ったようだ。

 そこはさすが精霊というべきか、属性の応用に関しての理解の深さは高いようだ。


「やっぱりできますっ?」


「うん。でも、アイリスちゃんなかなか賢いんですけど」


「私も日々努力してますからねっ」


「うむ、なかなか偉いんですけど」


 珍しく、お互いいがみ合うことはなく、むしろ讃えていた。

 毎度こうならいいのだが・・・・・・。

 

 何はともあれ、地図の示した場所通りのところに、洞窟があった。


「この中にドラゴンが居るのか・・・・・・」


 洞窟の外からでも、確かに唸り声が聞こえる。

 この中に居ることは間違い無さそうだ。


 洞窟の入り口はかなり広く、高さにして、人の五倍ぐらいはある。

 相当大きいドラゴンが居ることを覚悟しても良さそうだ。


「よし、行くぞ」


 俺の言葉に、二人は無言で頷く。


 洞窟の中はさすがに暗かった。

 火属性を用いて、洞窟内を明るくする。

 

「なあ、そう言えば光属性で、辺りを明るくすることはできないのか?」


 自分で火属性を使ったすぐ後に、今は俺の側に光の精霊が居ることを思い出した。


「ああ、それぐらいならお安い御用なんですけど」


 そう言って、ヒカリンは突然両手を広げた。

 その広げた手からは、光を発する球体が生まれた。


「とりあえずこれでいいです?」


 ヒカリンは自分がしたことを自慢げにするわけでもなく、まるでなんてことないことだと言わんばかりに、涼しげな表情だった。

 けれど、彼女の作り出した光源は、非常に安定している。

 光源を作ることが、どれほどの難しさかは分からないが、これを平然とやってのけるのは、光の精霊ならではだと感じた。


 明るくなった洞窟内を俺たちは歩き続ける。

 奥へ進めば進むほど、唸り声は近づいてくる。

 間違いなく、ドラゴンへと近づいている。


 さらに進み続けると、少し先で物音が聞こえる。


「多分、この先に居るはずだ。準備はいいか?」


 俺は二人に問うと、二人とも頷いた。

 いつもは調子に乗った様子のヒカリンも、さすがに真剣な面持ちだ。

 いざドラゴンと戦うとなると、油断はならないのだろう。


「行くぞ!」


 持ってきている剣を手にする。

 俺が先頭になって、音の位置まで走り出す。

 アイリスはナイフを、ヒカリンは手ぶらで俺の後をついてきた。


 いざ、その場所に辿り着くと、ドラゴンが居た。

 

 全身は爬虫類のような緑の鱗に覆われ、大きな両翼が背中に広がっている。

 それで攻撃されたらひとたまりもない、鋭利な牙に鋭利な爪。

 その巨体は、人族の何倍あるかも計り知れず、今まで出会ったどの生物よりも巨躯であった。

 

 ドラゴンは俺たちが来たことに気づき、俺たちの方へと向く。


「ぐぁぁぁぁぁぁ!」


 耳が塞ぎたくなるほどに大きな咆哮が、洞窟内へと響き渡る。

 それからまもなく、ドラゴンは口から炎を吐いた。


「ディザ様っ!」


 アイリスは俺たち三人の前に、闇で障壁を作り、ドラゴンのブレスを防ぐ。


「間違いないな。物語で語られているのと一致している。こいつが、ドラゴンだ!」


 俺たちは、空想上の存在と思われていたドラゴンに出会った。

 今から、人族と魔族と精霊で力を合わせて、この超越した存在のドラゴンへと挑む。


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