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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
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第七十一話「荒野のオアシス」

 荒野を歩き続けると、オアシスが見えてきた。

 建物も複数立っており、街のように見える。


「一度あそこのオアシスに寄るんですけど。君たちもちゃんと来て欲しいんですけど」


「オアシス?何の用があるんだ?」


「あの街の人たちが困ってるんですけど。ドラゴンの詳しい情報はあそこで手に入ると思うんですけど」


「ヒカリンはドラゴンの場所を知らないのか?」


「ふっふっふ」


 ヒカリンは考えが甘いと言わんばかりに、歯をニッと見せて、右の人差し指を左右に振った。


「ドラゴンなんて希少な存在、場所がすぐ特定できるわけがないんですけど。君もドラゴン見たこと無いと思うんですけど。つまりそういうことなんですけど」


 ヒカリンは俺を小馬鹿にしたような目で見てくる。

 俺はドラゴンを討伐しろと言われたから、知ってるものだと思っていたのだが。

 何にせよ、俺はヒカリンの言うことを聞かなければならない立場なので、言い返すつもりはなかった。


「もし!ドラゴンが居なくて!骨折り損なら!どうするつもりなんですかっ!」


 しかし、アイリスは我慢できずに、ヒカリンの頬を掴んで、強く引っ張った。


「いだだっ!この子暴力的すぎるんですけど!保護者さん、何とかして欲しいんですけど!」


「アイリス、やめろ」


 俺はアイリスの肩に手を置いた。

 アイリスはヒカリンの頬から手を離し、俺の方へと向き直す。


「だって、ムカつきますっ!」


 アイリスはヒカリンを強く指差す。


「何をーっ!生族をイジったっていいと思うんですけど!」


「生意気言うのはこの口ですかっ!」


 アイリスは再びヒカリンの頬をつねる。


「いだだっ!ほんとにやめてほしいんですけど!」


「アイリス、ストップ」


 俺はアイリスの肩を掴んで、やめさせた。


 アイリスとヒカリンの相性はとことん悪いらしい。

 もう何度二人が衝突したことか。


 それでも、普段のアイリスに比べると、ここまで冷静じゃないのも珍しい。

 相手が精霊というのもあって、正直少し面白いと思ってしまっている。


 二人が何度もいがみ合い、その度に止めることを繰り返しながら歩き続けていると、ようやく街にたどり着いた。


「私が精霊ということは伏せて欲しいんですけど。君は女二人を引き連れているたらしって設定でお願いするんですけど」


 ヒカリンが精霊であることは秘密にする必要があるらしい。

 確かに、精霊のような上位存在が、そこらへんに居ることがバレたら、何か不都合が起こるかもしれない。


 アイリスの方をふと見てみると、拳を握ってぷるぷると震えている。

 おそらく、俺をたらし設定にするという発言が気に入らなかったのだろう。


「ヒカリン、面倒だからアイリスを怒らせるのは勘弁してくれ」


「もしかして、たらし設定にすることにイライラしてるんです?でも、仕方がないんですけど。思ったことがついに口に出ちゃうんですけど。あ、これももしかしたらダメかもしれないですけど」


「あのさぁ・・・・・・」


 ヒカリンは飄々とした口調で、より火に油を注ぐ。

 アイリスはさらに身体をぷるぷる震わせているが、何とか耐えた。

 さっきは面白いと思ったが、さすがに面倒な気持ちの方が強くなってきている。

 さっさとドラゴンを退治して、シックを助けてもらいたい。


 街の入り口には門番が居た。

 不審者は街に入れないということだろうか。


「ようこそ、ニミの街へ。すみませんが、持ち物検査をさせていただきます」


 俺の身体を調べるために、門番が少し近づいてきた。

 そして、俺の顔を見るや否や、驚いた表情へと変わった。


「も、もしかして。勇者のレイス様ですか?」


「ああ、そうだ」


「これは失礼しました!」


 門番は俺から少し離れ、申し訳なさそうに頭を下げた。


 この門番は俺のことを知っているようだ。

 勇者の顔と名前はしっかりと知れ渡っているのか。

 魔王としての活動するとき、注意をする必要があるかもしれない。


「ところで、後ろのお二人は・・・・・・」


 門番は俺の後ろ二人を指差す。

 そういえば、この二人は小悪魔と精霊だ。

 明らかに人族の見た目では無いが、大丈夫だろうか。


 焦って後ろを振り返ってみると、アイリスもヒカリンも羽が無く、人族と瓜二つの容姿になっていた。

 アイリスが姿を変えることができるのは知っていたが、ヒカリンも変えることができたのか。


「私たちは、こいつのあ・い・じ・ん、なんですけど!いたたっ!」


 ヒカリンがふざけたことを言ったので、隣に居たアイリスが、彼女の手の甲をつねった。


「従者ですっ」


「まあ、従者です」


「そ、そうですか。分かりました」


 門番の人は困惑した様子だった。

 勘違いをしてしまって、それを周りに言いふらすみたいなことが無いように願う。


 俺とアイリスとヒカリン、全員の持ち物検査が終わり、俺たちはとうとう街の中に入ることができた。

 街の中は非常に盛んで、路上に多くの店が開かれている。

 荒野の真ん中の街ということで、外から仕入れた物はここらで珍しいものばかりなのか、商品の価格が高めに設定されているように思える。


「とりあえず、いろんな人から情報を集めてみようか。一旦解散して、後で集合って形を取らないか?」


「了解ですっ」


「私も構わないですけど」


 アイリスは右手で敬礼して、ヒカリンもそれを真似して敬礼する。


「それじゃ、三十分後にあの建物の前に集合で」


 俺は街の真ん中にある、一番大きな建物を示した。

 あそこなら、街のどこに居ても、迷うことなくたどり着くことができるだろう。


 そうして、俺たちは三手に分かれて情報を集めることにした。


 一人になり、どこからどう情報を集めようかと考えながら歩く。

 やはり、手当たり次第一人一人聞いていく方がいいだろうか。

 それとも、有益な情報を集められそうな目星をつけるか。


 色々考えながら歩いていたせいで、俺は誰かとぶつかってしまった。

 俺とぶつかったのは、黒髪で長髪の女の子だった。

 女の子は、俺とぶつかったせいで、尻餅をついてしまった。


「すみません!私、不注意で!」


「いや、俺の方が不注意だった。すまない」


 俺は倒れている女の子に、手を差し伸ばす。

 女の子はその手を掴んで、立ち上がった。

 そして、俺の顔を見ると、門番の時と同じように、驚愕の顔になった。


「も、もしかしてレイスさんですか?!」


 この女の子も、どうやら俺のことを知っているらしかった。

 

「どうしてこの街に来ているんですか?」


「ちょっと集めたい情報がある。そのためにこの街に来たんだ」


「そうなんですね!」


 その女の子は、両手を合わせて組んで答えた。


「あの、私も手伝っていいですか?」


「情報収集を?」


「はい!私、この街の住人では無いですが、人と話すことは得意なんですよ。お役に立てると思います」


「それなら、頼もうかな」


「良かったです!」


 その女の子は嬉しそうに笑った。


「私、サノンって言います!よろしくお願いします!」


 サノンは俺に握手を求める。

 俺も手を出し、サノンと握手をした。

 サノンは、俺が痛いと思うほどに、強く握手をしてくれた。

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