表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
75/175

第六十九話「光の精霊のヒカリン」

「お前が光の精霊なのか?」


「さっきそう言ったんですけど!もっと敬って欲しいんですけど!」


 光の精霊は、腕を組んで前のめりになりながら、ふわふわと浮いている。

 立っているのと飛んでいるのと、どっちが楽なんだろう。

 アイリスも体格が似ているし、羽も持っているので、今度聞いてみようか。


「ええと、光の精霊って名前とかあるのか?」


「名前?そんなの考えたことないんですけど。光の精霊だし、ヒカリンって呼べば良いと思うんですけど」


「ずいぶん適当だな・・・・・・」


 光の精霊ことヒカリンは、彼女にとって細かいことには執着しないようだ。

 精霊クラスにもなると、図太くなるのだろうか。

 比較対象が居ないから、全く分からないが。


「んん?んん?」


 腕を組んだ状態のまま、ヒカリンはアイリスの方を見つめる。


「こいつがここに連れてきたんです?」


 ヒカリンはアイリスの方を指差して、俺の方へ向き直した。


「ああ。アイリスのことを知っているのか?」


 散々俺を驚かせたり、俺の知らないことを知っているアイリスだ。

 光の精霊がアイリスのことを知っていても、今更俺はもう驚かない。


「ふーん。ま、私はアイリスとかいうのは知らないんですけど。こんな芋そうな男が、私のこと知ってるわけないと思ったからなんですけど」


「ちょっと!ディザ様に失礼ですよっ!」


 だが、アイリスのことは知らなかったようだ。

 そして、俺は芋っぽい男らしい。

 人生で一度も言われたことがないし、自分で言うのも何だが、どちらかというとかっこいい寄りだと思っただけに、ちょっとショックを受けた。


「ほうほう、随分デレデレなんですけど。アイリスちゃん?」


「もうっ!」


 ヒカリンはアイリスをからかうのが楽しいのか、ニヤニヤと笑っている。

 アイリスはそのからかいを真面目に受けて、ぷんぷん可愛らしく怒っている。

 

「アイリスはヒカリンのことを知っていたのか?」


「ここらに居るということだけは、噂で聞いていましたっ」


「なるほど」


 知り合った仲ではないのに、こんなにも仲が良さそうにしている。

 確かに、アイリスはコミュニケーション能力は高いだろうし、それがここでも活かされているのだろう。

 それとも、ヒカリンがやけにフランクだからなのか?


「大好きな人に役に立てて良かったんですけど、アイリスちゃん?」


「う、うるさいっ!」


 後者な気がしてきた。


「それで、何の用か聞きたいんですけど」


 ヒカリンはアイリスイジリをほどほどにして、今度は腕だけでなく足も一緒に組んで、飛んでいた。

 

「ああ、そうだ。光属性の応用で回復魔法が使えると聞いている。だから、光の精霊の力を借りたいんだ。大怪我を負って、目覚めない知り合いが居るんだ」


「まあ、確かに光属性は回復に長けているんですけど・・・・・・、原理は知ってるんです?」


「一応は。正確には癒しの力というよりも、消滅の力と聞いている。怪我の部分を無かったことにするイメージ、だったはずだ」


 俺は光属性を扱えないから、合っているかは自信がないが、多分こういう原理だ。

 光属性の中でも、結構イメージが重要な部類で、難易度が高いらしい。


「結構詳しいんですけど。まあだいたいはそうなんですけど」


 どうやら合っていたようだ。


「ちょっとその腰の剣貸して欲しいんですけど」


 ヒカリンに言われたので、俺は腰に携えている剣を、ヒカリンに渡した。


「これでいいか?」


「うんうん、何でもいいんですけど」


 そう言いながら、ヒカリンは右手で剣を持ち、左手を剣にかざした。


「つまり、光属性ってのはこういうことなんですけど」


 かざした手が急に光りだし、それからすぐにヒカリンの持っていた剣は消えてしまった。


「まあ、これでも手加減はしてるんですけど。生き物でもデカイ建物でも、そしてこの世界だって、私には全部消すことができるんですけど」


 ヒカリンはさらっと言い放つ。

 その口調は無邪気ではあるが、嘘をついているようには思えない。


「そんな偉大な光の精霊様のお力、本当に借りれると思うんです?」


 ヒカリンは口角を思いっきり上げながら笑う。

 俺は手汗が酷くなり、ごくりと唾を飲み込む。


「それでも、どうしても助けたい人が居る。力を貸して欲しい」


 俺は力強く答えた。

 シックを助けられる可能性があるなら、彼女は助けたい。


「ふーん?」


 ヒカリンはニヤニヤとした表情のまま、俺を見つめる。


「まあいいですけどね。私、今ちょっと困ったことあるんですけど。それを解決してくれるなら、協力してやらんこともないですけど」


 ヒカリンは飛ぶのをやめて床に着地し、遺跡の外を指差して、アイリスの方へ向く。


「アイリスちゃん、とりあえず先に外に出て欲しいんですけど」


「わ、私だけっ?」


「うん。私は、このディザって人に話したいことがあるんですけど」


「もうっ、分かりましたっ」


 アイリスはヒカリンの言うことに従って、遺跡の出口へと向かって行った。


「それで、話って何だ?」


 ヒカリンは俺だけをこの場に残した。

 いったい何の用があるというのか。


「君、回復魔法使える子を殺したことあるよね?」


「っ!」


 ヒカリンは、俺を脅した時と同じ顔で見てきた。


「私は知ってるんですけど。生族を殺すような奴が、生族を助けるために、回復に長けてる光の精霊に頼むなんて、面白いったらありゃしないんですけど」


「せ、生族?」


 色々と疑問はあるが、聞き慣れない言葉を真っ先に質問した。


「ああ、申し訳ないんですけど。精霊は人族と魔族のことを生族と呼ぶんですけど」


「そうなのか・・・・・・」


「まあ、君らには関係ない話なんですけど。ほら、アイリスちゃん待ってるし、外に行くんですけど」


 ヒカリンはテクテクと遺跡の外に歩いて行った。

 

 ヒカリンは何故俺が人殺しだということを知っている?

 それに、回復魔法を使えた俺の元仲間のメリーは、紛れもなく光属性の使い手だ。

 光の精霊は、俺のことをいったいどう思っているのだろうか。

 

 人族と魔族に属性を与えるような存在の精霊。

 俺の想像では計り知れないような存在の可能性だってある。

 俺は、こいつを信用できるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ