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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
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第六十八話「精霊」

 俺たちは、アイリスの案内によって、魔王城からは遠く離れた渓谷へと訪れていた。

 

 遠く離れた場所とはいえ、時間はほとんどかかっていない。

 アイリスによる空間移動で、一瞬で辿り着いた。


 アイリスはすっかり自分の能力を秘密にすることはなく、むしろ俺に色々と教えてくれるようになった。

 空間移動の原理は、ゲートとなる闇を作って、そこと目標地点の距離という概念を飲み込むことで、空間移動ができるというものらしい。


 ハッキリ言って、何を言ってるのかさっぱり理解はできなかったが、これも闇属性の使い方の応用であって、俺にもできるらしい。 

 確かに便利で、使えるようになりたい技術ではあるが、習得するのは途方も無い道のりだろう。

 しばらくは、アイリスの空間移動にお世話になってもらうことにした。


「それにしても、この場所で合ってるのか?」


「多分、間違いないはずですっ」


「そうか・・・・・・」


 俺とアイリスが居る渓谷は、ゴツゴツとした岩肌に囲まれていて、植物もわずかな雑草が生えている程度だった。

 こんな荒れ果てた地に訪れることになるとは思っていなかった。


 アイリスが連れてきてくれたこの場所には、どうやら光の精霊とやらが居るらしい。

 あくまで噂程度らしいが、それでも行く価値はあるということで、ここに訪れた。

 光の精霊ならば、シックを治療することができるかもしれないというのが、アイリスの考えだった。


「そもそも、精霊なんて聞いたことないんだが。いったいどういう存在なんだ?」


「実はディザ様とかが闇属性を使えたりするのは、それぞれの属性に存在する精霊の力なんですよねっ。精霊は存在するだけで、属性を用いることができるようになる魔素を撒き散らしているんですっ」


「全然聞いたことない話だ。そうなのか?」


「はいっ。その魔素を感じることができたら、その属性を使えるようになります。だから、ディザ様は闇の精霊からの魔素を感じ取れたってことですねっ」


 アイリスからは聞いたこともない話が、スラスラと出てくる。


「何でそんなに詳しいんだ?」


 俺は素直な疑問をアイリスにぶつける。


「私も伊達に長生きしてませんからねっ」


 アイリスはどう見ても俺より若く見えるが、そこは突っ込んではいけないのだろうか。

 それとも、魔族は見た目以上に長生きなのだろうか。

 それが正しいということにして、俺はアイリスには突っ込まないことにした。


「それにしても、光って結構明るいイメージなのに。思ったより陰険な奴なのか?」


「それ、本人に言ったらダメですよっ。失礼ですしっ。その理論だと闇の精霊は陰険なイメージってことですかっ?」


 アイリスは頬を膨らませて怒る。

 確かに、イメージで語ることをしてはいけないというのは、俺が身に染みて感じていることだった。

 

「確かにそうだな。俺が悪かった」


 そう言うと、アイリスはそれ以上何も言ってこなかった。


「これは偏見のつもりじゃないけど、闇の精霊って可哀想だよな」


「そうですかっ?」


 アイリスはきょとんとした顔で、小首を傾げた。


「別に闇の精霊だって、何か悪いことしてるわけじゃないだろ。それなのに、人族に闇属性自体が嫌われていて。俺なんかよりも、よっぽど辛い思いをしているだろう」


「ディザ様は、闇属性を扱えるようになって、嫌だとは思わないんですかっ?」


「前も言ったと思うけど、俺はそうは思わない。愛着も湧いてきてるしな。むしろ、闇の精霊とやらのためにも、頑張らないとな」


「ディザ様のそういう優しいところ、私は好きですよっ」


 アイリスは満面の笑顔だった。

 

「俺が優しい、か・・・・・・」


「?」


 俺はアイリスに聞こえないほどに小さく呟いた。

 俺はずいぶんと自分勝手に生きている男だ。

 取捨選択をしているだけで、本当に優しい男かどうかは分からない。

 でも、それを伝える勇気はまだ無かった。


 渓谷のなかをしばらく歩いていると、あからさまに怪しい遺跡のような建物があった。


「ここか?なんだか、それっぽい場所ではあるが」


「そうですねっ、入ってみますかっ?」


「そうだな。中を調べてみよう」


 俺とアイリスは、遺跡の中へと入ることにした。


 松明代わりに、火属性の魔法を使い、遺跡内を照らす。

 遺跡の中は閑散としていた。

 ガレキがそこら中に散らばっていて、崩れ落ちないか不安になってしまうほどに、ボロボロな建物だ。


「すごい場所だな、ここは・・・・・・」


「けほっ、けほっ、煙たいですねっ」


 アイリスは咳き込んでいる。

 俺もあまり長居はしたくない。


 特に何も見つけることはなく、遺跡の最奥まで辿り着いた。

 そこには、ぼんやりと人影のようなものが見える。

 

「何か見えるな」


「はいっ」


 最奥まで辿り着いて、何もなくただのハズレかと思ったら、どうやら何か情報を手に入れることができそうだ。

 この人影が光の精霊自身だったら良いのだが。

 俺はさらに火を強めて、より明るくした。


「ま、眩しいんですけど!困るんですけど!」


 人影の正体が、眩しそうに目を塞いだ。


「ちょっと!何とかして欲しいんですけど!」


「あ、ああ。悪い」


 俺は急いで火の勢いを弱めた。


「こんなところまで人が来るなんて、珍しいんですけど。誰ですか?」


 人影の正体は、アイリスと同じぐらいの幼さの見た目だった。

 ただアイリスとは違って、髪の色は金色で、透明に透き通った羽を持っている。

 まるで妖精のような容姿だった。


「光の精霊を探しに来たんだ。何か知らないか?」


「ははーん、光の精霊を探しに来たんですか。それなら納得ですけど」


 その少女は、ふふんと鼻を鳴らして、ドヤ顔をして見せる。

 もしかして、この少女が?


「ようこそなんですけど。私が、光の精霊なんですけど。会えて光栄に思って欲しいんですけど!」


 光の精霊は、腰に手を当てて、威張って見せた。

 この少女が、光の精霊だったのか。

 俺は、初めて精霊に出会った。

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