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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第七章「光の精霊」
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第六十六話「憩いの時間」

 今日こそ、今日こそ大事なことを言わなければならない。

 もう限界は近い、このままではいけない。

 だからこそ、俺は伝えないといけないことがある。


「アイリス、聞いてほしいことがある」


「・・・・・・何ですかっ?」


「俺は、まだ勇者としての活動をしている」


「なるほどっ。お手伝いが必要なら、いつでも言ってくださいっ」


「・・・・・・ああ」


 俺が最優先に解決しなければならない問題は、予想外ではあるが、ある意味予想通りに解決した。


 ウェルフが襲撃してきてからしばらくの間、俺は魔王城に滞在していた。

 魔王城と魔族を使って、超上会の情報を集めるように指示し、何か得られるものはないかと待ち続けた。


 しかし、冷静に考えれば、二十年以上生きてきて、超上会なんて言葉は、一度も聞いたことがない。

 もしかしたら、最近発足したからこそ、知らない可能性もあるが、超上会は秘密裏に動いているように思えるので、尻尾を掴みづらい方が正しそうだ。

 それならば、魔王城で待ち続けるよりも、人族での活動を優先した方が良さそうだと思った。


 しかし問題なのが、魔族の皆には俺がまだ勇者の活動をしていることを伝えていない。

 アイリスさえ説得すれば、後はアイリスが魔王城全体に俺が勇者の活動をしていても問題ないように、色々してくれるだろうと思った。

 全く根拠はないが、アイリスは頼めば大体のことをしてくれるので、そこは謎に信頼がある。


 そして、案の定、アイリスは俺がまだ勇者であることは否定せず、むしろ協力的だった。


「明日にはヒューゼ王国に向かおうと思う。しばらく留守にすることを魔王城全体に伝えておいてくれ。ついてきたいなら、ついてきていいぞ」


「ほんとですかっ!了解ですっ」


 アイリスは俺と一緒に出かけることが嬉しいのか、パァッと明るい顔になり、右手で敬礼をした。

 

 久しぶりにモンデとシックに会いたくなってきた。

 闇属性が人族に認められるには、俺一人ではなく、複数人の闇属性が、人族に有益であると示さなければならない。

 冷めた表現になるが、モンデとシックは必要な要素だ。


 それとは別に、半年も共に過ごしていたから、やはり愛着も湧いている。

 純粋に久しぶりに彼らに会うのが楽しみだ。


「それじゃ、また明日。今日は明日に備えてしっかり休め」


「はいっ」


 俺はアイリスを魔王室から退室させた。


「俺も風呂入って、後は休むか・・・・・・」


 久しぶりの遠出。

 体力をしっかり温存しておこう。


「ふぅー・・・あったまる・・・・・・」


 俺は大浴場の浴槽に浸かっていた。

 魔族にも、風呂の習慣はあるらしく、魔王城にも大浴場があった。

 いつもは魔族が好きに使うのだが、浴場の管理をしている魔族に言えば、俺のみ貸切することができる。

 魔族と裸で一緒に風呂に入る勇気は無いので、皆には申し訳ないが、一人で入らせてもらっている。


「やっぱり気持ち良いな、風呂は」


 魔王討伐の旅をしている時は、毎日温かいお湯に入れるわけでなく、水浴びで済ます時もある。

 一人でゆっくりとできるこの時間は、非常に貴重だ。


「さーて、お風呂お風呂っ!」


「はぁっ?!」


 浴槽でゆったりとしていると、急に裸にタオルを巻いただけのアイリスが浴場に入ってきた。


「背中流しましょうかっ?」


「いらん!出て行け!」


 俺はアイリスの視界を塞ぐよう、目の周りに闇を覆った。


「なっ、何も見えないーっ!」


 視界を奪われたアイリスは、手をバタバタさせている。

 わざわざ一人で風呂を堪能できるようにしてるのに、どうしてこいつはプライベートゾーンに易々と侵入してくるのか


「み、見えない〜っ、痛っ!」


 アイリスはつるんと滑って、床に尻餅をついた。

 痛そうに尻をさすっているのを見ても、自業自得だとしか思えない。


「さっさと出ろ」


 俺はアイリスの顔を覆った闇を消した。


「はい・・・・・・」


 アイリスはとぼとぼと浴室から出て行った。

 ようやく一人の時間に戻れる。


 寝室に勝手に入ってくるのは、まだギリギリ許すとしても、風呂の邪魔は許せない。

 そもそも、アイリスには男女という概念が無いらしいのが困る。

 俺は再び、温かくゆったりとした時間を過ごした。


 風呂から上がると、料理長のケイシーが更衣室で待っていた。


「ディザ様、どうぞニャ」


「ああ、ありがとう」


 ケイシーは風呂上がりの飲み物として、ミネラルウォーターが入ったコップを持ってきてくれていた。

 このミネラルウォーターが、また風呂上がりに飲むのに最高だ。


「ぷはぁっ。いつもありがとう。助かるよ」


「欲しい時に最適なものを提供する、それが僕のシェフとしての心得ですニャ」


 ケイシーは誇らしげにする。

 ケイシーは本当に料理で誰かを笑顔にすることを望んでいるのがよくわかる。

 魔王城での食事はいつもケットシーの料理を食べるが、全く飽きが来ない。

 食事に困らないのは、生活する上で非常に助かる。


 俺はコップをケイシーに返した。


「ついでにアイリスに、俺がもう風呂上がったことを伝えておいてくれるか?そしたら、大浴場がもう空いたことを、全員に伝えてくれると思う」


「了解ですニャ。それでは失礼しますニャ」


 ケイシーはペコりとお辞儀をして、更衣室から出て行った。

 

 ケイシーはケットシーだし、何となく裸を見られるのに抵抗は無い。

 どうもアイリスは人型なので、抵抗がある。

 そうやって区別するのはあまり良くないのだろうか・・・・・・。


 俺は一度部屋着に着替え、寝室へと向かう。

 寝巻きに着替えるのは、寝室に帰ってからだ。

 一応、魔王として威厳を保てるように、寝巻きで城の中を歩き回らないようにしている。

 多分、そんなことを気にするのは居ないだろうけど。


 魔王城の魔族は、俺が思っているよりも、ずっと平和的だ。

 何故魔族は人族を襲っていたのか、その理由が気になって仕方がないほどだ。

 将来的には、魔族と人族の隔たりも無くすことができないだろうか。

 闇属性が忌み嫌われている理由に、前の魔王が闇属性の使い手だったことも関係している。

 人族での闇属性の浸透のきっかけの一つになり得るかもしれない。


 寝室に帰ると、当たり前のように、アイリスが寝巻きに着替えて待っていた。


「大浴場はもう使えるようにしたか?」


「はいっ。大丈夫ですっ」

 

 アイリスは撫でて欲しそうに、頭を差し出す。

 俺はその頭を撫でてあげた。


「ディ、ディザ様が初めて頭を撫でてくれた・・・・・・!」


 アイリスは目をキラキラ輝かせて、俺を見つめる。


「たまたまそんな気分だっただけだ。もう寝るぞ」


「はいっ!」


 俺とアイリスはベッドへと入った。

 柔らかいベッドに身を沈ませ、俺は眠りについた。

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