幕間
やっぱり僕は強い。
魔族相手にも、まるで引けを取らなかった。
才能が無い人間は、いったいどんな気持ちで生きているんだろう。
この、悦に浸る感覚を味わえない人生なんて、何を楽しみに生きているんだろう。
「終わった?」
突然女の声がした。
近くに誰か居ることは分かっていたが、その正体は分からないままだった。
けれど、その声が超上会の仲間の声だとすぐ分かった。
「盗み見してたの?」
「そんな訳ないよ。私、あなたみたいに目良くないもん。ちょうどこのタイミングで来ただけ」
この女は、僕にとって聞きやすい声量で話してくれる。
超上会にしては珍しく、他人を気遣えるような人間だ。
「それで、終わったの?」
「うん、多分ね」
「多分って?」
「死んでるところは見てないけど、瀕死だから多分死ぬんじゃないかな」
「何それ。そうやって前も失敗したじゃん?」
「うーん、まあそれはそうかも」
前も、あのワーウルフを殺したと思ったけど、結局生きていた。
まあ、あのワーウルフは絶対殺さないといけない対象では無かった気がするけど。
「超上会の仕事、ちゃんと分かってるの?」
「分かってるよ。でも、超上会に居る人って、ほとんど本来の目的のために活動してないでしょ。許してくれるんじゃないかな」
「そう言われてみると、否定できないのが意味不明ね。イーニは確か、強い人に出会いたくて、超上会に入ってるんだっけ?」
「正確に言えば、自分の才能の素晴らしさを実感するために、強い人と戦いたいって感じだけど、まあ概ねそうだね。超上会に入ってると、色々自由だから便利だよ」
「はぁ、ほんと変人だよね。マトモなのってイラトぐらいじゃないの?」
ため息をつかれてしまった。
僕は至って、マトモな人間だと思うんだけど。
「いや、イラトは超上会らしさはあるけど、マトモな人間ではないでしょ」
「ごめん、私も言ってからそう思った」
イラトも多分悪いやつじゃないと思うんだけど、あいつにはどうも気持ち悪い部分がある。
「ねぇ、復讐心って人を強くすると思う?」
「急にどうしたの?それに、よりによって私にする質問?」
「いや、君だからしたんだけど。あと、やっぱり答えなくていい」
「そう。何でもいいけど。とりあえず私、様子見に来ただけだし、もう帰るね」
「うん。またね、バイバイ」
「こう、変人にまともに挨拶されると吐きそうね・・・・・・」
「何?失礼すぎない?」
「冗談。じゃあね」
その女は、口笛を吹きながら、歩いてどこかへ行った。
ずいぶん自由人でお気楽な人に見えるが、本当はそうじゃないことは分かってる。
やっぱり、人の気持ちだの想いだの、ぱっと見で理解するのは難しい。
あの少女は、本当はちゃんと殺さないといけなかった。
でも、なんだかんだセンスがある子だし、面白いことになってくれないだろうか。
それに、あのワーウルフも楽しみだ。
きっと僕が憎くて憎くて仕方がない。
感情はどれだけ力を引き出してくれるのだろう。
彼女に、復讐心で強くなれるか聞かなくてよかった。
わざわざ自分で楽しみを減らすところだった。
「僕も、さすがに連日疲れたし、ちょっと休もうかな」
久しぶりの近接戦は、なかなか楽しかった。
次はいつなのだろう。
今からワクワクが止まらない。
でも、結局最後に思うことは同じなんだろうなと、つまらなく感じることもある。
やっぱり僕は強い、ってね。




