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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第六章「少女と人狼」
71/175

幕間

 やっぱり僕は強い。

 魔族相手にも、まるで引けを取らなかった。

 才能が無い人間は、いったいどんな気持ちで生きているんだろう。

 この、悦に浸る感覚を味わえない人生なんて、何を楽しみに生きているんだろう。


「終わった?」

 

 突然女の声がした。

 近くに誰か居ることは分かっていたが、その正体は分からないままだった。

 けれど、その声が超上会の仲間の声だとすぐ分かった。


「盗み見してたの?」


「そんな訳ないよ。私、あなたみたいに目良くないもん。ちょうどこのタイミングで来ただけ」


 この女は、僕にとって聞きやすい声量で話してくれる。

 超上会にしては珍しく、他人を気遣えるような人間だ。


「それで、終わったの?」


「うん、多分ね」


「多分って?」


「死んでるところは見てないけど、瀕死だから多分死ぬんじゃないかな」


「何それ。そうやって前も失敗したじゃん?」


「うーん、まあそれはそうかも」


 前も、あのワーウルフを殺したと思ったけど、結局生きていた。

 まあ、あのワーウルフは絶対殺さないといけない対象では無かった気がするけど。


「超上会の仕事、ちゃんと分かってるの?」


「分かってるよ。でも、超上会に居る人って、ほとんど本来の目的のために活動してないでしょ。許してくれるんじゃないかな」


「そう言われてみると、否定できないのが意味不明ね。イーニは確か、強い人に出会いたくて、超上会に入ってるんだっけ?」


「正確に言えば、自分の才能の素晴らしさを実感するために、強い人と戦いたいって感じだけど、まあ概ねそうだね。超上会に入ってると、色々自由だから便利だよ」


「はぁ、ほんと変人だよね。マトモなのってイラトぐらいじゃないの?」


 ため息をつかれてしまった。

 僕は至って、マトモな人間だと思うんだけど。


「いや、イラトは超上会らしさはあるけど、マトモな人間ではないでしょ」


「ごめん、私も言ってからそう思った」

 

 イラトも多分悪いやつじゃないと思うんだけど、あいつにはどうも気持ち悪い部分がある。

 

「ねぇ、復讐心って人を強くすると思う?」


「急にどうしたの?それに、よりによって私にする質問?」


「いや、君だからしたんだけど。あと、やっぱり答えなくていい」


「そう。何でもいいけど。とりあえず私、様子見に来ただけだし、もう帰るね」


「うん。またね、バイバイ」


「こう、変人にまともに挨拶されると吐きそうね・・・・・・」


「何?失礼すぎない?」


「冗談。じゃあね」


 その女は、口笛を吹きながら、歩いてどこかへ行った。

 ずいぶん自由人でお気楽な人に見えるが、本当はそうじゃないことは分かってる。

 やっぱり、人の気持ちだの想いだの、ぱっと見で理解するのは難しい。


 あの少女は、本当はちゃんと殺さないといけなかった。

 でも、なんだかんだセンスがある子だし、面白いことになってくれないだろうか。


 それに、あのワーウルフも楽しみだ。

 きっと僕が憎くて憎くて仕方がない。

 感情はどれだけ力を引き出してくれるのだろう。

 彼女に、復讐心で強くなれるか聞かなくてよかった。

 わざわざ自分で楽しみを減らすところだった。


「僕も、さすがに連日疲れたし、ちょっと休もうかな」


 久しぶりの近接戦は、なかなか楽しかった。

 次はいつなのだろう。

 今からワクワクが止まらない。

 でも、結局最後に思うことは同じなんだろうなと、つまらなく感じることもある。


 やっぱり僕は強い、ってね。

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