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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第六章「少女と人狼」
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第六十一話「シックとウェルフ」

「火の匂いがするんだよね?」


「ああ」


 ウェルフに、鉛玉から火の匂いがすることを確認する。

 火属性を利用し、爆発の勢いで鉛玉を飛ばしてきたのだろうか。


「周囲に人の匂いは?」


「しねぇ。お前も居ないと分かってるだろ?」


「うん・・・・・・」


 私もさっきから探知を続けているが、何も引っかからない。

 ウェルフの鼻でも、私の探知でも、人の気配を感じることができない相手。

 身を隠すことに長けているのだろうか。

 でも、私もウェルフも、ただ視覚情報のみに頼っているわけではない。

 いったいどういうことなのだろう。


 思索していると、次の鉛玉が飛んでくるのを感知した。

 違いない、ウェルフだけじゃなく私も狙ってきている。


「くっ!」


 私は右へと飛び、飛んでくる鉛玉を避けた。

 今居る場所から、別の位置に飛べば、避けることは容易だ。

 だが、そんなことができるのは私だけだし、闇属性を使い続けなければならない。


「ウェルフ!右に避けて!」


「くそったれ!」


 ウェルフは右に飛んだ。

 そして、ウェルフの居る位置と、その少し左側にも、鉛玉が合計三個飛んできた。


「埒があかねぇな!」


 ウェルフは激昂する。

 だが、実際その通りだ。

 私たちはここに立ち尽くすばかりで、相手に何の干渉もできていない。

 

「ウェルフ!また右に飛んで!」


「ちっ!」


 ウェルフは攻撃を避けるべき、右へ飛ぶ。

 そして、私にも狙いが来ていたので、後ろへと飛んで攻撃を避けた。


 だが、何度も攻撃をされ続けているし、さすがに情報も少し手に入る。

 攻撃が飛んでくる方向は何とか分かった。


「ウェルフ、あっちの方に誰か居ない?!」


 私は、攻撃が来た方を指差し、ウェルフに調べるよう促す。


「いや、何の匂いもしねぇ・・・・・・。お前は何か見つけたのか?!」


 やはりウェルフの鼻では分からないようだ。

 そして、私も敵の位置を把握することができていない。


「ごめん!私も何も分からない!」


「くそっ、どうしろってんだよ!」


 ウェルフはイライラしているのか、地面を強く蹴りつけた。

 確かに、このままでは防戦一方で、現状は逃げるのが一番安全かもしれない。

 

 でも、今逃げたとしてどうする?

 ウェルフが狙われていることには変わりがなく、またいつか襲われてしまうかもしれない。

 私が居ないと、鉛玉が飛んでくることが分からないし、それじゃいつか死んでしまうかもしれない。


 それに、もし逃げ切れたとしても、ウェルフは私に気を遣って、もう会ってくれなくなるかもしれない。

 オレ様と関わったら危険だ、だからもう二度と近づくな、とか言って。

 そんなの、嫌だ。


「ウェルフ、落ち着いて聞いて。提案がある」


「あぁん?!どうした?!」


 ウェルフは声を荒げている。

 この状態で、私が今思いついたことを言ったら、猛反対されるかもしれない。

 でも、私の提案を聞いてほしい。


「襲ってきている奴、私たちで倒そう」


「はぁ?!」


 ウェルフは、信じられないと言いたげな目で私を見る。

 でも、私は本気だ。


「同じ敵がこうして襲ってきているなら、今逃げたとしても、また襲われるかもしれない。後回しにするぐらいなら、私と力を合わせて、今のうちに終わらせた方がいい」


「お前がオレ様の役に立てるってか?!自惚れてるんじゃねぇのか?!」


「自惚れじゃない。ウェルフは敵の攻撃を予測できないでしょ。私ならできる。私だからこそできるの」


「くっ・・・・・・」


 ウェルフは歯をギリギリと噛みしめる。

 分かってる、ウェルフが私を危険に晒したくないって思っていること。

 

「攻撃のパターンが一つしかないってことは、もしかしたら、敵も一人しか居ないかもしれない。なおさら、今が一番のチャンスだと思う。だから、お願い」


 私は真剣な眼差しで、ウェルフを見つめる。

 冗談とかじゃない、本当にウェルフの力になりたくて、私はこんなことを言っているんだと、伝わってほしい。


「いいのか、下手したら死ぬかもしれねぇぞ」


 さっきまでの荒れた様子から一変、ウェルフは落ち着いた声色で語りかけてくる。


「死ぬ覚悟ができてるってわけじゃないかも。でも、私の力でウェルフを守れるなら、私は引かない」


「・・・・・・そうかよ」


 ウェルフは、そう小さき呟き、私に背を向けた。


「オレ様の足の速さがあれば、敵が逃げようとしても追いつける。だから、お前はオレ様の背中に乗って、敵の攻撃からどう避ければいいか指示しろ」


 ウェルフは、全く私の方を見ようとしない。

 それでも、渋々かもしれないけども、私の提案を承諾したということは、ハッキリと分かっている。


「ウェルフ、頑張ろう。私がウェルフを守ってあげるから」


 私はウェルフの背中に乗った。

 もう何度目だろうか。

 ずいぶんと慣れたもんだ。


「お前がオレ様を守る、ねぇ。やっぱ自惚れてんじゃねぇか」


 ウェルフは少しふざけたように言う。

 戦うと腹を括ったことで、逆に心に余裕が生まれたのだろうか。


「もう、うるさいな」


「守るとか守られるとか、そんなの考えるんじゃねぇ。オレ様とお前は、共に戦う相棒みたいなもんだ。オレ様を守るとか、そんなくだらねぇ考えは捨てろ」


「ウェルフ・・・・・・」


 今まで私を馬鹿にしたり、からかったりしてきたウェルフが、今は私を対等に見てくれている。

 私もウェルフを守るだなんて、上から目線みたいな考えは捨てよう。

 私とウェルフは、共に同じ敵を倒すために戦う、相棒だ。


「行くぞ!一秒たりとも気を抜くんじゃねぇぞ、シック!」


「任せて!絶対に、絶対に敵を倒そう、ウェルフ!」


 ウェルフは敵の方へと走り出す。

 私は、より集中力を高め、闇での探知を精密にする。

 準備も覚悟も、もう済んだ。


 絶対に成し遂げると、決意がみなぎってきた。

 私たちの平穏な時間を奪われてたまるものか。

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