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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第六章「少女と人狼」
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第五十四話「特技自慢」

 次の休みの日も、私は山の頂上へと行った。


「あ、ウェルフだ」


「おう」


 ウェルフは木にもたれかかって、寝ていた。

 私が声をかけると、目を開けて、私に挨拶をしてくれた。


「ウェルフって、何でここに居るの?」


「何でって、怪我してあんまり遠くに行けなかったから、ここらへんにずっと居ただけだ」


「もう怪我は治ったのに?」


「それは・・・・・・気分だ」


 ウェルフは頭をかいて、目をそらした。

 何か裏がありそう。


「何か隠してるでしょ」


 私はウェルフに顔を寄せて、問い詰める。


「お前には絶対に言わねぇ」


 ウェルフは、右手で私の顔を掴んで、私を遠ざけた。


「ふぅん。それならそれでいいや」

 

 それ以上追求するのは無駄だと思って、私はウェルフから離れた。


 こうやって、ウェルフと話すことは嫌いじゃないが、そもそも私が山の頂上まで来た理由は他にある。

 

「今から、ちょっと闇属性使う練習するから、邪魔しないでね」


「勝手にしろ」


 私は山の頂上を離れ、頂上から少しだけ下った場所にある、森へと入った。

 障害物が多い方が、目で見えない部分が多いため、探知の鍛錬に関しては、こっちの方が面白くて飽きにくい。


 周囲を軽く目で見て、特に危ないものは無さそうだと確認する。

 よし、早速やっていこう。


 今回はどこまで範囲を広げられるか、全力を出してみようと思う。

 学校の演習場ぐらいの大きさでは、物足りなさを感じてきたので、目標は山全部かな。


 出せる力を全て使って、一気に闇を展開する。

 覆えた部分は・・・・・・七割ほどだった。


「・・・・・・っ、はぁっ」


 すぐに疲労が溜まり、私はドサッと地面に倒れた。

 全くキープができないなら、まるで実用的でないなと思った。

 それに、肝心の探知は何もできていない。

 ただ、闇を広範囲に広げただけだった。


「何倒れてんだ?」


 私が地面に仰向けになっているところに、ウェルフがやってきた。


「え、着いたきてたの?」


 起き上がる気力が無いので、地面に倒れたまま会話することにした。


「何かしてんなと思って来た。それだけだ」


「私のこと、気になったの?」


「めんどくせぇやつだな・・・・・・」


 ウェルフは呆れた目で、私の方を見た。

 ウェルフは、完全に私のことをバカにしているような気がする。

 

「だったら何してたか、見せてあげる」


「ほう。じゃあ頼んだ」


 ウェルフは少しだけ興味深そうな顔になって、こっちを見る。


「十分だけ寝させて」


 ウェルフは何も言わず、ただ片手で頭を抱えた。


 それから結局十五分ほどして、ようやくちゃんと動けるようになった。

 言っていた時間よりも、長く経ってしまったが、ウェルフは何も言わずに、私の隣に座って、無言で待ってくれていた。


「それじゃ、やるよ」


「おう」


 私が立ち上がると、ウェルフも一緒に立ち上がった。


 さすがに大規模でやるのは無理だから、範囲はすごく小さくした。

 近くの茂みに何があるか、それが分かるだけでも、私のことを見直すだろう。


 早速、目の前の茂みに、兎が居ることを認識できた。

 目で確認することはできない場所だ。

 私はその茂みに、指差した。


「あの茂みの中、何かの動物が居る。ウェルフには分かる?ちなみに、私は分かるよ」


 私はふふんと鼻を鳴らし、自慢げにウェルフの方を見た。

 しかし、ウェルフは私の顔はちっとも見ずに、茂みの方を見ている。


「ああ、兎が居るな」


「・・・・・・」


 ウェルフはしれっと言った。

 しかも、兎が居るのは当たっているし、私の面目丸潰れだ。


 私は不満そうにウェルフを睨みつけているが、ウェルフは全く気にする様子もない。


「ここら一体に、闇が漂ってる気配を感じる。お前の仕業だと思ってるが、探知もできんだな。それは知らなかった」


「え?」


 ウェルフは淡々と話した。

 びっくりした。

 探知をするとき、他の人には気づかれないようにしているが、ウェルフはそれを看破しているようだった。


「凄い、分かるんだ」


「まあ、以前似たようなことされたからな」


 闇を漂わせて、探知をするのは、私オリジナルだと思ったが、先駆者が居たようだ。

 レイス先生だろうか?

 学校では教えてくれなかったのに。


「じゃあ、兎って分かったのは?」


「オレ様は嗅覚が優れてるからな。匂いで分かるんだよ」


 ウェルフは、自身の鼻をツンツンと指で叩いた。


「匂いで分かるってことは、匂いがないものはわからないってこと?!」


 私はつい前のめりになって、ウェルフに近づいた。


「ああ、そうだよ。分かったから、そんなに近づいてくんな」


「私はそういうの関係なしに、全部分かるよ」


 私はもう一度鼻を鳴らし、自慢げな顔をした。


「何をそんなに張り合おうとしてるんだよ。意味わかんねぇ奴だな・・・・・・」


 ウェルフは、理解できないと言わんばかりに、困り顔を見せた。


 でも、私自身もよく分からない。

 ウェルフがワーウルフで、自分にとって珍しいから?

 刺激が欲しかったから、こうやってウェルフと仲良くなりたいのかもしれない。


 それから、もう少しの時間鍛錬をした。

 ウェルフは何か口を出してきたりするわけではなく、ただ私の鍛錬を無言で見続けていた。

 ウェルフはガタイが良いのもあって、ちょっと圧を感じた。

 ガタイの良いウェルフから、無言で見られながらの鍛錬は、ちょっと緊張してしまった。

 

 その日の鍛錬も終え、私は山の麓まで、以前同様に、ウェルフに背負われて下った。


「今日もありがとう」


「ああ、また来るのか?」


「うん、多分」


「そうか」


 私は適当な返事をしたが、ウェルフは別に嫌そうな顔はせず、むしろちょっと嬉しそうに見えた。


 そういえば、そろそろ長期休暇に入る。

 今はたまにある休日にしか、ここに来れないが、長期休暇に入ったら、ここに入り浸ることもできるかもしれない。


「私、そろそろ暇な期間に入るから、その時はここにずっと遊びに来ていい?」


「好きにしろ」


「分かった」


 山から外は、人族の居住区で、魔族のウェルフはここから街の方へは出ることができない。

 私とウェルフは、ここで別れることにした。


「それじゃ、またね」


 私は笑顔で手を振った。


「ああ」


 ウェルフは、手を振りかえしてはくれなかったが、穏やかな顔つきで、頷くことで、返事をしてくれた。

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