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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第六章「少女と人狼」
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第五十二話「シックの出会い」

「俺はモンデと旅に出ようと思う。この手紙を学長に渡しておいてくれ。多分それで都合つくから」


 そして、突然モンデと旅人さんは旅に出てしまった。

 学長に手紙を出したら、学長はそれをさっと読み、分かった、と一言だけで済んだ。

 詳しいことはよく分からない。


 

 それから一週間ほど、モンデもレイス先生も居ない、一人での学校生活が続いた。

 学校の成績もそれなりで、不自由なく過ごせてる。

 実感できているわけではないが、成長もしていると思う。


「あ、そういえばモンデ居ないんだった・・・・・・。またやっちゃった」


 私はいつもの癖で、放課後にいつもの演習場へと足を運んでいた。

 リトラ村から学校に帰ってずっと、放課後ここに訪れてしまう。

 ここに来る意味などないのに。


「寮に戻ろうかな・・・・・・」


 いつも放課後に行っていたことも、寮の自室で出来る。

 特にやるべきこともないし、寮に帰ろう。


 寮の自室に帰って、いつもの闇の精度を上げる訓練をして、それから周囲の探知の練習もする。

 本当は悪いことなんだけど、隣の部屋が何をしているか、なんとなく分かっちゃうのも面白い。


「え?!う、嘘!」


 今日は、隣の部屋に人が二人いるのを感じる。

 いつもの人と、身体が大きい人の二人だった。

 身体が大きい方は、女にしてはさすがに大きすぎる。

 もしかして、男女二人で個室にいるってことなの?


「・・・・・・さすがにやめとこう」


 こっそり、隣室に漂わせていた闇を消した。

 男女二人が何をしているか、覗き見みたいなことをするのは、流石に気が引けた。

 それに、とんでもないことをし始めたら、明日から隣の子と顔を合わせることなんてできない。

 

「はぁー」


 私は深くため息をついて、ベッドに飛び込んだ。

 この学校には遊びに来てるわけではないが、それでも寂しいとは感じてしまう。

 切磋琢磨していたモンデも居なくっちゃったし、一緒に夢を叶えると言ってくれたレイス先生も、多忙なのか、学校には戻ってこない。


 毎日変わらない日常を送ってはいるが、それは悪い意味でもそうだった。

 どうにもつまらない日々が続く。


 そして、次の日も、普通に授業を受け、一日が終わる。

 毎日毎日刺激があるわけないと分かってるけど、今日もまた平凡で退屈だった。


 その日も、隣の部屋には、男女二人が居た。

 今日も、鍛錬をするには、イマイチ気が進まない。


 というか、普通に女子の部屋に男子が入ってるけど、校則違反じゃないだろうか。

 兎にも角にも、これじゃ鍛錬に身が入らない。


「次の休みの日にでも、外に出てみようかな・・・・・・」


 その日は特に何もすることなく、そのまま寝た。


 それから三日後、休日にさっそく私は外へと出かけた。

 街に出ても、人が多くて、自由に何かをするには向いていない。

 少し離れた場所にある、山にまでわざわざ出かけた。

 

 その山は、以前悪魔に襲われた場所で、私にとっては、強く印象が残っている。

 あの出来事がきっかけで、強くなりたいと気持ちが、さらに高まった。


「私のためにも、レイス先生のためにも、ついでにモンデのためにも頑張らないとね」


 その山の頂上には、人もほとんど居ないし、開けた場所だということは知っていたから、何かをするにはちょうど良いと思って、登頂した。

 私は体力自慢というわけでもないし、それでも戦いに体力は必要不可欠だし、山を登ること自体も悪くない。


「風、気持ち良い・・・・・・」


 ひんやりとした風が、肌に触れた。

 とても心地が良い。


 長く伸びた黒髪も、風に揺られ、なびいている。

 髪の手入れは結構しっかりしているので、遠くから見ると、もしかしたら美人に見えるんじゃないだろうか?


「ふふふっ・・・いっ!」


 風で前髪が揺れて、それが目に入った。

 もしかして、調子に乗った罰?

 擦っちゃダメだと分かってるけど、涙目になりながら私は目を擦った。


 こんなしょうもないことを考えるのはこれぐらいにして、せっかく良い場所に来れたんだから、さっそく探知の練習をしよう。


 周囲に、目では分かりづらいほどに薄く、そして広く闇を漂わせる。

 普通の人からすると、ちょっと暗くなったかもしれないが、気のせいだろう、と思うレベルだ。

 こうやって、広範囲に、精密に闇を扱うのも、だいぶ慣れたものだ。


 物の正確な位置、それの大体の大きさや形を把握することができる。

 闇の精度が低かった頃は、何となくそこに何かあるかもぐらいにしか感じなかったが、慣れた今では、闇に触れたものをはっきりと認識できる。

 三百六十度を見渡せる、第三の目を持っていると言っても過言ではない。

 間違いなく、私の得意技と言える技術だ。


 ただ、当然のことながら、相当体力を消耗してしまう。

 だから、こうやって訓練をしないことには、長時間使うことなんて無理だし、積み重ねが必要だ。

 

 山の頂上は見晴らしが良いので、目の確認によって、物の把握に補正をかけたくなく、目を閉じて、周りを認識することにした。


 すると、人型ではあるが、明らかに人ではないであろうものを認識した。

 明らかに、頭の上の部分に耳が生えている。

 

 目を開けてみると、山の頂上に来た時には全く気にしていなかったが、木の下でワーウルフらしき男が、木にもたれかかって寝ていた。

 ワーウルフは会ったことがなかったので、突然興味が湧いてきた。

 ここらへんでワーウルフが悪事を働いている話を聞いたこともないし、接触しても多分大丈夫だろう。


「おーい、起きてー」


 ワーウルフに近づいて、声をかけてみた。

 ワーウルフは熟睡していて、全く起きる気配がない。


「ねえ、起きて。起きてってば」


 私はワーウルフの肩を揺らした。

 

「ったくうるせぇな!こちとら大怪我したばかりなんだ、ゆっくりさせろ!」


 ワーウルフは大声で怒鳴ってきた。

 怪我をしているのは、ぱっと見では分からなかった。

 というか、よく見ても分からない。


 何はともあれ、これが私が初めてワーウルフと話した瞬間だった。

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