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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第五章「少年と旅人」
56/175

幕間

 モンデが傷を治している間、俺は俺でやるべきことがあった。

 あいつが洞穴へと向かっている途中、今回の件に、何の関係もない邪魔者が混ざっていた。

 そいつには会っておきたい。


 以前は、俺の気配を察しられたのか、おそらく居るであろうと予測した場所からは居なくなっていた。

 日が変わって、もうどこかへ行ってしまったかもしれないが、それでも、またここに戻っているのではないかと思い、同じ場所へと赴いた。


「っ!」


 自分の額へと、極小の鉛が飛んできた。

 すんでのところで、致命傷をかわすことはできたが、頬をかすめていて、たらりと血が流れだした。

 もし額に命中していたなら、間違いなく絶命していただろう。


 間違いない、モンデを狙った奴と同じ奴が、次は俺を狙っている。


 次の攻撃はいつ来るかと警戒していたが、追撃は全く来なかった。

 十五分ほど経って、また逃げられたのかと思い、その場を立ち去ろうとした時、遠くから足音が聞こえてきた。


「二回も会いに来るなんて、僕に何か用?」


 黒髪で、黒の帽子を深く被り、服も黒色の、全身黒姿の人が姿を現した。

 随分と細い身体で、今にも折れてしまいそうだ。

 声は非常に小さく、聞き取ることが精一杯だった。


「いや、ずいぶん面白そうなことをしてる奴がいると思ってな。お名前でもお聞きしようと思ってな」


「うるさ・・・、そんな大声出さないでくれる?僕はイーニ。君の敵だ」


 俺は大声を出したわけでもなく、普通の声量で話したつもりだが、イーニは耳障りだと言わんばかりに、耳を塞ぎながら話した。

 

「そうか、俺の敵か。それなのに、のこのこと姿を現すなんてな。姿を見せるのにも時間かかったし、逃げるのを躊躇ったんじゃないか?」


「僕は君に攻撃を避けられてから、すぐここに向かったんだけど・・・・・・。心外だ」


 イーニは嘘をついている様子は見えない。

 イーニがどれほどの速さの持ち主かは分からないが、移動に十五分もかかる遠方から攻撃したことは事実だろう。

 

「超上会か?」


「そう。君の敵は、それぐらいしか居ないよね」


 イーニは素直に肯定した。

 超上会はモンデにも目をつけていたということだ。

 

「改めて聞くが、何故わざわざ俺に会いに来たんだ?」


「だから、うるさいって。もっと小さい声で話して」


 イーニはまた耳を塞いだ。

 俺は一度も大声を出したつもりはない。

 敵に気をつかうつもりはないが、どれほどの小さい声で話す必要があるというのだろうか。


「君に興味が湧いてきたからね。だって・・・」


 イーニは話してる途中で、腰につけているポーチに手を突っ込み、中から小さな鉛玉を取り出した。

 それを親指の腹に乗せ、人差し指で弾く。

 

 予備動作の時点で、嫌な気配を察した俺は、額の前に、土でできた左腕を構えた。

 それからすぐに、左腕に衝撃が走る。

 左腕の半分あたりまで鉛玉は到達していた。

 俺の左腕は、象が踏んでも問題ないほどに強力に作ってあっただけに、イーニの鉛玉の威力が凄まじいことが、容易に想像できる。

 もし、狙ってくる箇所を読み違えたらと思うと、ゾッとする。


「ほら、こんな至近距離で避けられるなんて初めてだ。強すぎる。勇者よりも強いんじゃない?」


 イーニは俺を褒めてはいるが、どこか心の余裕を感じる。


「いや、俺はその勇者と戦って、負けてるけどな。でも、お前の相手をするぐらいならできる」


「ふぅん」


 イーニの顔つきが変わった。

 まるで獲物を狙うかのような目つきで、いつでも俺のことを殺せるとアピールしているように、俺には見えた。


 だが、すぐにその表情は変わり、また余裕そうな顔に戻った。


「いや、今日はいい。何か特別な策でも隠されてたら困るし。僕はもう帰る」


 そう言って、イーニは俺に背を向け、人間の脚力とは思えないほどに力強く地面を蹴って、一気に遠くまで行った。


「おい!待て!」


 止まるように、大声をあげるが、それで止まってくれるわけがなかった。

 イーニの姿はとても小さくなっていた。

 走りながらも、耳を塞いでいるように見える。


 一応追いかけはしたが、すぐに姿を見失ってしまった。

 完全に逃げられてしまった。


「ちっ、余計なおしゃべりをするんじゃなかった!」


 俺は地面を軽く蹴った。

 厄介な遠距離攻撃をしてくる奴が、わざわざ俺の前まで来てくれたのに、その機会を逃してしまった。


 超上会は、レイスだけじゃなくて、モンデにも目をつけ始めてる。

 彼らはただ普通に生きているだけだというのに、無意味で勝手な都合で、こうして命を狙われている。

 この当たり前に過ごせているおかしな世界は、本来の世界にしなければならない。

 俺は、そう再認識した。

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