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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第五章「少年と旅人」
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第五十一話「旅とは」

「良かった!無事だったのね!」


「お母さん!」


 街に帰ると、入ってすぐのところに母親が待っていた。

 娘の安否を確認できた母親は、とても安堵した顔をしていて、すぐさま走ってきて、親子で抱き合っていた。


「ありがとうございます、本当にありがとうございます!」


 母親は俺に対して、何度も何度も頭を下げて、お礼を述べていた。


「お役に立てて良かったです。頑張った甲斐がありました」


 俺は全身ボロボロでみっともない姿だったが、これも頑張った証ということにしよう。

 かっこはつかないけど、身の丈に合っているとも言えるだろう。


「娘を守ってくれて、本当に助かりました。この恩は一生忘れません」


「守って・・・・・・」


 母親が言った言葉が、やけに胸に響いた。

 俺は魔族に親を殺された過去から、みんなを守りたいという気持ちで、強くなろうとしていた。

 でも、知らずのうちに、魔族から守るということばかり考えていたのかもしれない。


「そうか、俺はこの女の子を守ることができたんだな・・・・・・」


 改めて女の子の方を向いて、無事を確認する。


「本当にありがとうございました!」


 女の子も、母親と同様に、頭をペコリと下げてお礼を述べる。


 魔族に母親を殺され、それから人を守れるぐらい強くなりたいという気持ちで、努力を続けていた。

 でも、心のどこかで、相手を魔族だけだと思い込んでいた。

 相手が魔族であろうと人族であろうと、ささいなことであろうと、困っている人を助けることには変わりはない。

 今まで視野が狭くなっていたことに、ようやく気づかされた。


「あの!私はルピナスと言います!あなたの名前を教えてくれませんか?」


 ルピナスと名乗る女の子が、胸に手を当てて、俺の名前を聞いてきた。


「俺はモンデっていうんだ。今は旅の途中だけど、ここを旅立っても、またいつかこの街に訪れるよ」


「はい!モンデさん!」


 俺とルピナスは、小指を交わして、約束をした。


 その後、ルピナスの家に歓迎され、食事をした。

 旅人さんも一緒に誘われたが、俺はいい、と言って、どこかへ行ってしまった。

 ルピナスの家に行ったのは、俺だけだった。


「私も旅に連れて行ってください!」


 テーブルを囲んで、俺とルピナスとその母親の三人が話していると、ルピナスが前のめりになって、真剣な目で俺に話した。


「旅に出たいの?」


「はい!」


 ルピナスは力強く頷いた。

 俺に触発されてか、旅に憧れを持ったとのことらしい。

 俺もまだ旅の経験はものすごく浅いけども。

 

「ルピナスって、体力あったりする?」


「いいえ、あまり身体を動かすのは得意じゃないです・・・・・・」


 ルピナスはしょんぼりとした面持ちだった。

 

 身体を動かすのが苦手なら、ついてくるのは難しいかもしれない。

 旅人さんは容赦無いところがあるし。


「ごめん、それだったら厳しいかもしれない」


「そうですか・・・・・・」


「でも、ルピナスが頑張って、体力つけてちょっと戦えるようにもなったら、その時は一緒に旅に出ようか」

 

 それを聞いて、ルピナスの表情は、パァッと明るくなった。


「分かりました!頑張ります!」


 それからは、俺の学校での話をした。

 同級生のシックや、勇者レイスに会ったこと。

 学校での授業の内容や、演習の話もした。


 ルピナスには、洞穴でみっともないところを見せたので、レイス先生に師事したことは、秘密にした。

 ルピナスの手前、つい見栄を張ってしまった。

 

 それから、傷の治療がある程度終わるまでの数日間、ルピナスの家にお世話になった。

 旅人さんも、旅に出るのは俺の傷が治るまで待つつもりのようで、その間別のところで何かをしているようだった。

 何をしているかは分からないが、旅人さんには謎が多いし、いちいち気にしないようにしている。


 そして、数日経って、傷も治り、旅の出発の日を迎えた。

 見送りに、ルピナスが来てくれた。

 

「モンデさん、お元気で。また会える日を楽しみにしています」


「俺も楽しみにしてる。一緒に旅をする日もね」


「はい!」


 そして、俺と旅人さんは、街を出た。

 ルピナスは別れを悲しんでいる様子はなく、笑顔で手を振ってくれた。

 俺も、それに笑顔で手を振って返した。


 しばらく歩いて、振り返ると、街もずいぶん小さくなった。

 滞在期間は長くはなかったが、愛着の湧いた街だった。


 旅は出会いと別れの連続だと想像をしていたが、別れの度に毎度寂しい思いをしていては、この先保たないだろう。

 別れと言っても、また出会うまでの時間だ。

 そう思うようにしよう。


「あの街に来て、良かったか?」


 旅人さんは穏やかな顔で、俺の様子を伺った。


「良かったですよ。自分がいかに視野が狭いかも気付けましたし」


「そうだな、あの街は魔族との関わりは全く無い場所だし、モンデにとっては目新しい場所だったかもな」


「知ってたんですか?!」


 俺は思わず、旅人さんの方に強く振り向いた。


「ああ、モンデは魔族のことしか考えていなかったしな。良い刺激になると思って、ここまで連れてきたんだ」


「今回の事件、俺に解決させたのも、そういう意図があって?」


「まあ、そうだな」


 旅人さんはサラッと言った。

 結局、旅人さんの掌の上だったってわけだ。


「星が綺麗なのも、魔族に困ってない人がいることも、狩りも、人族が敵になることも、全部未知のことだったろ。そういうのを知るのが旅なんだよ」


「そう、ですね」


 自分の視野の狭さは、見るものそのものが少なかったから。

 未知を知るという旅は、俺の凝り固まった考え方を広げるのに、もってこいのものだった。

 旅に出て良かったとも思えたし、これからも旅をしたいと思う。


「旅人さん、次はどの街に行くんですか?」


「面白いところに行きたいな。行き先何も考えずに進んでいくのも良いぞ」


「じゃあ、そうしましょう。未知のものを発見できるかもしれないですしね」


 この先の旅、いったい何に遭遇することができるのだろうか。

 自分の知らないものをもっと知りたい、そう俺はそう強く願うようになっていた。

 ワクワクを胸に、俺と旅人さんは歩き続ける。


「そういえば、洞穴で俺が意識失った後、助けに入ったみたいですね。もしかして、覗き見してました?」


「無茶しろとは言ったけど、死なれたら困るからな。見させてもらってた」


「はぁ、本当に死にそうだったんですからね。それに、男には膝枕しとけばいいって、何てこと教えてるんですか」


「はっはっはっ、まあ気にするな。良い思いできただろ」


 旅人さんを軽く睨んだ。

 予想してた通り、旅人さんは一切悪気はなさそうにしていた。


「それにしても、何のためにあんな袋持って行ったんだよ。何の役にも立ってなかったな」


 旅人さんはニヤニヤとしながらこっちを見る。


「そのことはもう忘れてください!」


 顔が熱くなりそうだ。

 あの洞穴でボコボコにされたことは、あまりにも自分が未熟すぎて、本当に恥ずかしい。

 自分が成長するために大事な出来事だったから、忘れてはいけないのだけれど。


 いくら俺が成長しても、結局こうやって旅人さんに振り回されるのは、きっと変わらないのだろう。

 まあでも、こんな風に振り回されても、悪い気はしないかな。

幕間を残して、5章終わりです!そして、6章が始まります。

6章も5章と同様、主人公以外のキャラがメインの話になります。主人公のレイスの出番は、もう少し先だ・・・・・・。

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