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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第五章「少年と旅人」
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第四十八話「一人で戦うということ」

 情報を集め終えた俺は、早速出発することに決めた。

 さすがに情報を集めたのに、無策で行くのは愚かだと思うので、一応の準備はしてきた。

 自分なりに考えた作戦、単純で陳腐なものだけど、俺の頭ではこれで精一杯だ。


「それじゃ、行ってきます」


 出発の前に、保護者の女性に声をかけた。

 

「よろしくお願いします」


 女性は不安そうではあったが、もう震えてはいないし、涙目にもなっていない。

 頼りにされているんだとしたら、頑張らないと。


 少しだけ、俺は緊張していた。

 身体がいつもよりかたく感じる。

 大丈夫、きっと大丈夫。

 それに、何としても救ってあげないと、何とか、どうやって、でも。


「よし、行くか・・・・・・」


「モンデ!」


「た、旅人さん?」


 いざ出発しようと思った時、旅人さんに止められた。

 その顔は、真剣そのものだった。


「一つだけ言っておくことがある」


「は、はい」


 一体なんだろうか。

 俺はちょっと身構えてしまった。


「無茶していいぞ」


「え?」


 しかし、旅人さんはまた突拍子もないことを言い出し、面を食らった。

 このパターンも何度目だろう。


「普通、無茶するなよって言って、送り出してくれるもんじゃないんですか?!」


「それぐらい頑張れってことだよ!」


 旅人さんは満面の笑みで、親指を立てた。


「俺はもう行きますからね。頑張ります」


 旅人さんに付き合うのはほどほどにして、俺はさっさと出ようとした。


「緊張、解けただろ?」


「あ・・・・・・」


 気づけば、気が楽になっているのを感じる。

 もしかして、俺が緊張してるのを分かって、それをほぐしてくれようとしたのだろうか?

 

「あ、ありがとうございます」


 旅人さんは、満足そうな顔になっていた。


「はぁ・・・・・・、重たっ!」


 俺は、小石の詰まった大きな袋を持って、洞窟へと行くために、森の中を進んでいた。

 この袋の中身を、身代金と勘違いして、それによって生まれた隙を狙うという作戦を立てていた。

 やはり、犯人の要求はお金だし、知性のない魔族と違って、目が眩まないわけがないと思った。


 でも、さすがに中身はもっと考えるべきだった。

 めちゃくちゃ重すぎる。


「俺は、アホ・・・・・・かっ!」


 あまりの重さに耐えきれず、一度地面に置いた。

 ドスンと大きな音が鳴る。

 その音だけで、いかに重いかを察することができる程だ。


「はぁ、はぁ、アホだ。俺はアホだ・・・・・・」


 これじゃ、辿り着いた頃には力尽きてしまっている。

 仕方がないから、中身をちょっと減らすことにした。


 袋の見た目はちょっと萎んで、しょぼくなってしまったが、口で何とか誤魔化すしかない。

 中身は高価なものばかりだ、とか言っておこう。


 荷物が軽くなって、少し歩くのが楽になった途端、急に寒気がした。

 

「・・・・・・」


 ただの勘だが、突然嫌な予感がしてきた。

 こんな時、シックだったら、周りを探知することができたのだろう。


 勘違いであってほしいが、一応警戒しといて損はないだろう。


「?!」


 突如、足元に衝撃が起きた。

 衝撃が起きた地面には、小さな穴ができていて、そこからは焦げた匂いがする。

 察するに、遠距離から何かが射出され、それが俺の足元目掛けて飛んできたのだろうか。


「・・・マジか」


 俺は冷や汗をかいていた。

 洞穴を拠点にしていると聞いたが、それまでに会敵することを考えていなかった。

 普通に考えれば、おかしくはないはずだ。


 どうしよう・・・・・・。

 得意分野ではないが、俺もシックのように探知をしてみるべきか。

 理論は分かってる、実践できるかどうかだけだ。


 呼吸を整える。

 繊細なことは苦手だ。

 でも、必要ならば、やるしかないだろう。

 今は俺一人なんだ。

 全て、俺ができるかどうか次第だ。


 あたりをふんわりと闇を漂わせる。

 俺は闇を集中させることはできるが、こうやって薄く広くすることは苦手だ。

 これはレイス先生には教えられていないことで、シックが独自に考えた使い方だった。

 そういった、発想力の点では、俺はシックには勝てない。


 何となく、後ろの方から、何かを感じる気がする・・・・・・。

 俺はそっちの方向を見てみる。

 すると、視線の先の茂みが、突然動き始めた。

 俺は腰に隠したナイフを手にし、その茂みから目を離さないよう、しっかりと見続ける。


 カサカサと動き続けている。

 手汗でナイフが滑り落ちてしまいそうだ。

 今までに無いほどの緊張感。

 唾を飲み込む。

 ゴクリと、音が耳に入る。


 そして、茂みの奥から物影が現れた。


「・・・・・・!・・・え?」


 中から出てきたのは、狐だった。

 狐はタッタと走り、俺の横を通り抜けて、どこかへ行ってしまった。


 まさか、そんなわけがないはずだ。

 あの茂みにいるのが狐なら、俺の足元に当たった攻撃は何だったんだ?


 俺の闇属性の練度では、これ以上気配を感じることはできない。

 だが、警戒しているとはいえ、立ち尽くしている俺に対して、何の攻撃も続かない。

 とりあえず、脅威は去ったということでいい、のだろうか・・・・・・?


「すぅー・・・ふぅー・・・・・・」


 心を落ち着かせるために、今一度深呼吸をした。

 情報を集めたと言っても、敵の目的と居場所を聞いただけ。

 それ以外のことは何も知らないのだということを、改めて認識させられた。


 不安な気持ちが少し湧いてきた。

 でも、ここで逃げて、やっぱり無理でした、だなんて、あの女性に伝えられるわけがない。

 手にしたナイフを片づけ、両手でバシンと頬を叩く。


「よし!」


 無理やりだが、気合を入れ直した。

 任せられてるんだ、やってやる。

 それに、無茶していいって言われてるんだ。

 止まるもんか。


 俺は、犯人が居るという洞穴へと、再び歩き始めた。

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