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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第五章「少年と旅人」
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第四十七話「不安と決意」

「俺が主体に、なって・・・・・・」


 今まで、頼まれた依頼を、シックと一緒に解決てきたことはあった。

 でも、それはお互いに協力してのこと。

 対等の立場で、知恵を出し合って、力を合わせた。

 それが、今回は俺が一人で動かないといけない。


「あ、あの。俺自信ないです。全くどうすればいいか想像もできなくて・・・・・・」


 先ゆく旅人さんに声をかける。

 

「いや、やるんだ。お前にとって、必要なことになる」


 その言葉は力強かった。

 旅人さんはこちらの顔を見てもいないが、俺が不安に思っているのは伝わっていたのだろう。


 変わりたい、変えたもらいたい、という気持ちで旅に付き合うようになった以上、旅人さんの要求を強く否定するような意味は、俺にはあまり無かった。

 仕方がない、というわけではないが、俺はとりあえずやってみようと、心に決めた。


 歩いていると、警察署の前に、おどおどとした様子の女の人を見かけた。

 あの人が、誘拐された子供の保護者なのだろうか。

 ぱっと見、二十後半ぐらいに見える。

 街の警察と話しているようだったが、女性があまりにも混乱しているのか、警察の人は困り果てたように見える。


 旅人さんは立ち止まり、俺の方は振り返り、無言で頷く。

 行ってこい、ということなのだろうか。

 俺も無言で頷き返し、女性と警察のもとへと行った。


「すみません、誘拐された子供の情報を集めているのですが、知らないことは無いでしょうか?」


「あ、ああ・・・あ?」


 女性はひどく混乱してて、まともに会話ができそうにもなかった。

 これは、警察の人が困ってしまうのも仕方がない。

 俺は、警察の人に改めて話を聞くことにした。


「この人が、誘拐された子供の関係者なんですか?」


「そうだよ。母親らしくてね、パニック状態になってて、落ち着かせるのに精一杯なんだ・・・・・・」


 攫われた子と、この女性は、親子関係らしい。

 家族が危険な目に遭っていると知って、ものすごく不安になってしまったのだろう。

 その気持ちは、俺には痛いほど分かる。


「大丈夫です。俺が解決しますから。安心してください」


「あ・・・え、うん・・・・・・」


 女性の両手を握り、優しく語りかけた。

 とにかく、少しでも安心してほしい。

 女性は少し落ち着いた。

 

「本当に大丈夫かい?君、まだ子供だろ?」


 警察の人は、不審そうに俺を見た。

 確かに、俺はまだ十四だし、頼りないと思うのは当たり前だ。

 俺が警察の人と同じ立場なら、同じことを思う気がする。


「俺はヒューゼ王国の育成学校の生徒です。一応同学年内ではトップクラスの成績なので、人並み以上ではあると思います」


 俺の通ってる育成学校は、かなり名門だ。

 この名前を出せば、それなりに考えは変わってくれるだろう。


「え、その学生がどうしてここまで来てるんだい?学校に行かずに。あそこからここまで来るのに、四日五日はかかるだろう」


「あー、それは色々事情がありまして・・・・・・」


 しかし、警察の人の疑いの目は変わらなかった。

 自分にとって、一番痛いところを突かれた。

 旅人も、悪く言えば、素性の知らない不審者だし、ましてや子供なら、なおさら何かを任せる気は起きないだろう。


 助け舟が欲しくて、旅人さんの方をチラチラと見る。

 旅人さんは、やれやれと両手を広げて、それから俺たちの方に来てくれた。


「すみません、こいつのこと信用してやってください。多分やってくれるんで」


 旅人さんは、俺の肩に、バシンと音が鳴るほどに、強く手を置いた。

 痛い。

 

「ああ、あなたはこの前の。まあ、そうですね。それじゃ、頼むことにします」


 警察の人の態度は、さっきとは打って変わって、疑いの様子は無くなっていた。


「ここ、来たことあるんですか?」


 俺は旅人さんの方を向いて、質問をした。


「もちろん。じゃないと、ここに街があるって分からないだろ」


「う、うーん・・・・・・」


 旅人さんは、当たり前だろと言わんばかりに、普通の表情をしていた。

 確かにそれはそうなんだが、なんとも腑に落ちない。

 でも、それは気にしないことにして、警察の人から話を聞くことにした。


「誘拐した人の情報について、詳しく教えてもらえませんか?何故誘拐したとか、理由とか、どこへ行ったとか分かるといいんですけど」


「犯人の要求は、金銭らしい。身代金を用意して、持ってこいとのことらしい。場所は、ここの近くに洞穴があって、犯人はそこを拠点にしてるらしいんだ」


 犯人の要求は、とてもシンプルなものだった。

 お金欲しさに、人質を取って、お金を手に入れたら、即逃げるつもりなのだろう。

 

 今回の相手は魔族じゃなくて、人族。

 知性のない魔族ならば、純粋に力で対抗すれば良いのだが、今回は知性がある相手だ。

 シンプルに解決させることは難しいかもしれないが、逆に思考を持っているということを利用することができるかもしれない。


 色々なことを考えていると、突然、母親の女性が俺の手を取った。

 身体を震わせ、涙目になっている。


「あ、あの。夫も亡くなり、私にとってただ一人の家族なんです。身代金を払うほどのお金も、我が家にはありません。どうか、助けてください・・・!」


 女性の必死な気持ちが、俺にはしっかりと伝わってきた。

 家族を一度失い、唯一の家族が危険な目に遭っている。

 家族を失った経験のある俺だから分かる。

 二度、大切な人を失うようなことは、絶対に避けなければならない。


「任せてください!俺が絶対に、あなたの子供を助けますよ!」


 俺はその女性の手を、ぎゅっと強く握り返した。


 この事件を解決しろと言われた最初は、俺も不安な気持ちだった。

 しかし、俺以外の他の人にも、家族を失う悲しみをこれ以上感じて欲しくない。

 そんな悲しみ、無い方が良いに決まっているんだ。


 そうして、いつの間にか、事件解決を必ず成し遂げようという強い想いが、俺には生まれていた。

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