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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第五章「少年と旅人」
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第四十六話「命、いただきます」

 せっかく街に来たというのに、結局俺と旅人さんは、街の近くにある森へと入り、狩りをすることにした。

 

 旅人さんは、街で弓を購入していて、それを俺に渡してきた。

 弓は一つしかなく、旅人さんは、特に狩猟道具は持っていないように見える。


「あの、旅人さんは何を使って狩りするんですか?」


 俺の質問を聞いて、旅人さんは一瞬不思議そうな顔で俺を見たが、すぐさま納得したような顔になった。


「ああ、いや俺はしないよ?狩りなんて飽きるほどやったし、わざわざやろうとは思わないな」


「ええ・・・・・・」


 だったら、なんで狩りに誘ったんだと言いたくなったが、この人にいちいちツッコんでも、面倒だと気づいてきたから、口をつぐんだ。

 代わりに、肩を露骨に落として、アピールする。

 それを見て、旅人さんはニヤニヤとしていた。


「ところで、狩りはしたことあるか?」


 旅人さんは、途端に話題を変えた。


「いや、したことないです。やろうと思ったことすらないですね。きっかけもなかったですし」


「じゃあ良いことだ。楽しもうじゃないか」


「はぁ」


 何が良いことかは分からないが、せっかくの狩り初挑戦なので、頑張ろうとは思った。


「まあ初めてだから心配はないと思うが、必要以上に生き物を殺さないように。最低限にするんだ。今日はそうだな、昼飯分確保できたらいいな」


「分かりました」


 あたりを軽く見回してみると、少し距離の離れた位置に、兎が一頭居た。

 目ではっきりと確認できる距離で、向こうはまだこちらに気付いていない様子だ。


 旅人さんは、腕を組んで、俺の方を見る。

 弓の扱いに関しては、全く教えるつもりはないらしい。


 一応、学校で自分に合う武器を探すため、弓に触れたことはあるので、使い方は分かる。

 弓を構え、右手で矢を水平に引き、獲物へと狙いを定める。

 しっかりと両目で対象を捉え、一呼吸を入れた後、右手を離した。


 矢は間違いなく、兎へと向かってまっすぐ進んだ。

 弓の扱いは慣れてはいないが、なかなか上手くいったのではないだろうか。

 

 と思っていたが、すんでのところで兎が動き、矢は命中しなかった。


「え、難しい!」


「あっはっはっはっはっはっ!」


 旅人さんは俺の後ろで大爆笑した。

 

「そんなに笑うならやってみてくださいよ!」


 俺は、旅人さんへと弓を渡した。

 旅人さんは、慣れた動きで、弓を構え、さっきの兎へと狙いを定める。


 すぐさま矢は放たれ、俺よりも早くまっすぐと矢は進み、そして兎には命中しなかった。

 兎は動いていないにも関わらず、単純にコントロールの問題で外れたのだ。


 他人のことを馬鹿にしておきながら、この人は俺よりもダメだったのか。

 俺はついジト目で、旅人さんを睨んでしまった。


「つまり、弓の扱いは難しい、ということだ、な!」


 旅人さんの目は泳いでいて、しばらく俺とは目を合わさなかった。


 結局、獲物一体を狩るのに、二時間ほどもかかってしまった。

 本日の、少し遅めの昼飯は、この兎一頭だ。


 旅人さんは薪を集め、そこに火属性の魔法で火をつけて、これで焼くことにした。


「そういえばなんですけど、魔法とか使えたんですね」


 今まで、属性を何かに使っていることを見ていなかったので、魔法を使ってるのは珍しく感じた。

 もっとも、無属性者の方が少ないので、使えないとは思っていなかったが。


「まあ俺は器用だし、結構努力したしな。火は得意じゃないけど、それでも人並みには使える」


 旅人さんは、自慢するわけでもなく、淡々と話す。

 火が得意じゃないなら、何が得意なんだろう?


「得意属性で、何か面白いことってできないですか?」


 興味本位で聞いてみた。

 すると、旅人さんはニヤりと笑みを浮かべる。


「面白いことならもうやってるんだよな。見とけよ・・・」


 そう言って、旅人さんは自分の左腕を指差す。

 俺はそれに注目した。


「はい!」


 旅人さんの合図で、義手の左腕はパラパラと崩れ落ちた。

 そこにあった腕は無くなっている。

 義手は砂になって消えていったのだ。


「え、え?どういうことですか?」


 見たこともない現象に、脳が追いつかなかった。

 腕があった場所と、崩れ落ちた砂を、思わず何度も見返してしまう。

 その様子を、愉快そうに旅人さんは見ていた。


「面白いだろ、まあ俺はこんなこともできるんだよ」


 そう言って、周囲の砂は、左腕のあった場所へと集まり、また義手となった。

 今まで見ていた義手は、砂の塊だったのか?

 それに、今まで接していて、違和感を感じないレベルで、それを動かしていた。

 もしかして、かなり器用な人なのだろうか?


 俺が呆然としているのを見て、旅人さんは満足そうだった。


「俺のこと、尊敬できるだろ?」


「うーん・・・・・・」


 とは言っても、他がアレなので、その言葉には素直に賛同はできなかった。


 昼飯も終え、狩りもこれ以上はするつもりは無く、街へと帰ることにした。


 街へ帰ると、何やら騒々しかった。

 今日の朝、軽く街を回った時は、呆れるほどに平和そうだったのに、街の人は不安そうにしている。


「どうかしたんですか?」


 すぐ近くにいた青年に、旅人さんは声をかけた。

 その青年はすごく不安そうな顔をしていた。


「人攫いが出たんだよ。街に悪党が来てさ、子供が誘拐されてしまったんだ」


「誘拐・・・ですか・・・・・・」


 街が騒がしい理由は、悪党による子供の誘拐が原因だった。


「攫われた子供の保護者が誰か知りませんか?」


「それなら、今警察署に居ると思うよ。この先真っ直ぐ進めば見つかるよ」


「ありがとうございます」


 旅人さんは青年に一礼し、俺もそれに従って頭を下げる。


 旅人さんは警察署へと向かって歩き出し、俺もそれに付いていった。

 その足は、すこし早足だった。


「モンデ、やってもらいたいことがある」


 旅人さんは、後ろについてくる俺を振り向かず、前を向きながら、俺に話しかけてきた。


「やってもらいたいことですか?」


 一体なんだろう。

 大体予測はつくが、やはり事件解決の手伝いだろうか。


「今回の事件、モンデが主体となって解決してみろ」


「お、俺が主体になって、ですか?!」


 しかし、どうやら頼み事とは、事件のことではあるが、俺がメインで解決しろとのことだった。

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