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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第五章「少年と旅人」
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第四十五話「本日の予定」

「おーい、起きろー」


「起きてますよ!」


 宿の部屋の外から、ドンドンとノックの音と、旅人さんの声が聞こえる。

 どうせ、昨日のように早く起こされることは予想済みだったので、俺はすでに朝の準備を終わらせていた。


「はい、俺はもういつでも出られますよ・・・って?!」


 部屋を出ると、髪は寝癖だらけで、まだ義手も付けていない、眠そうな旅人さんが居た。


「俺だけ起こしにきて、そっちはまだ寝起きだったんですか?!」


「いや、一緒の時間に起きれば、同じ時間に支度も終わると思ったんだよ。ふぁ〜、眠い。ずいぶん早起きだな」


 旅人さんは半目の状態で、馬鹿でかい口を開けて、大きく欠伸をした。


「無理やり起こされた過去があったから、先に起きといたんですよ!」


「そうかそうか、まあドンマイだ。じゃあ俺の支度終わるまで待っててくれ、すまんな」


 そう言って、旅人さんは自分の部屋へと戻った。

 なんてマイペースな人なんだ・・・・・・。


 宿の自室のドアの外で待っていると、旅人さんが支度を終えたのか、髪も整って、義手もきちんと付いた状態で、彼の部屋から出てきた。


「悪い、待たせたな」


「いや、いいですよ。ただ、明日からは、俺も自分で起きられるんで、俺の相手するよりも先に支度とかしておいてくださいね」


「分かった分かった。そうするよ」


 やけに軽い口調で旅人さんは言って、さっさと宿を出ようとしていた。

 本当に分かっているのだろうか。

 いや、流石に分かっているか、そうであって欲しい。


「うーん、良い天気だ!」


 宿から出て、旅人さんは朝日を全身に浴び、思いっきり伸びをした。

 この日は晴天で、雲一つ見えない青空だった。

 あまりに気持ち良い日差しで、俺も一緒に背伸びした。


 旅人さんは軽くストレッチをして、その後俺の方を見てくる。

 俺も視線を返すが、旅人さんは何も言わずに数秒見続けてくる。

 それに耐えかねて、俺は自分から話すことにした。


「何なんですか、そんな急に見つめてきて」


「いや、今日は何する?って」


「ええ?!」


「ええ?」


 俺が驚くと、同じように旅人さんも驚いた反応をした。

 何で?


「何で旅人さんも驚いてるんですか?!てっきり、今日何するか、もう決めてるのかと思ってたんですけど」


「俺一人が勝手に決めてもつまらないだろ?もしかして、俺に全部投げるつもりだったのか?」


「まあ、そりゃそうですけど・・・・・・」

 

「な?」


 旅人さんは、完全に俺が予定決めるのを待つことに決めたらしい。

 俺に全部投げられてるような気がしてきたけど、そこをツッコんでも、また何か言われるんだろうな。


 じゃあ、今日は何をしようか。

 好きに遊ぶのも良いと思うが、この街は何があるかイマイチ把握していない。

 それに、宿代や食事代の金は全て旅人さんに出してもらっているので、遊びのお金まで出してもらったら、すぐ尽きてしまうのではないだろうか。


 旅の目的も、自分が成長するための旅だ。

 だったら、それに繋がることをするのが良いだろうか。


「街の人から情報集めて、悪さをしてる魔族が居ないか調べましょう。依頼でもされたら、報酬でお金を貰えるかもしれませんし。旅をする上で、お金は大事でしょう?」


「なるほどね、それじゃそうしようか」


 旅人さんは特に反応を示すわけでもなく、俺の提案を即採用した。

 自分なりに、なかなかの名案だとも思ったが、この反応は、ちょっと寂しい。


 とにかく、街の人に片っ端から話しかけることにした。

 とりあえず、近くに八百屋があったので、その店主のおばさんに話しかけることにした。


「すみません、何か困ったこととかってないですか?魔族に商品が襲われているとか、畑を荒らされているとか」


「そんなことはないねぇ。むしろ、ワームが畑の土を良くしてくれて、助かることはあるよ」


 ワームといえば、虫のような見た目をした魔族だ。

 魔族には遭遇したことがあるようだったが、おばさんはまるで困った様子ではなかった。


「そ、そうですか。失礼しました」


 俺は頭を下げて、すぐさま移動することにした。

 振り返りざまに、ちらっとおばさんが不思議そうな顔をしていたのが見えたが、恥ずかしいのでさっさと立ち去った。


 それから、街の警備員に話を聞くことにした。

 街の問題ごとは、きっとここに集まってくるだろうと思ったからだ。


「すみません、この街で魔族に対して何か困ったこととかって起きてないですか?」


 中年ぐらいに見える警備員の男性に、困り事はないかと尋ねた。


「いやぁ、そんなことはないねぇ。あるとするなら、食堂に猫が紛れ込んで、客がビックリしたことかな。魚をあげたら、おとなしくしてくれたけどさ、はっはっは」


「そ、そうですか・・・・・・」


 警備員に聞いても、これといった情報を手に入れることはできなかった。


 それから数人、様々な人から話を聞いたが、魔族に困っているような人は一人もいなかった。

 どうやら、相当平和な街なようだ。


「どうしましょう、やることがなくなりました」


 おそるおそる旅人さんの方を見ると、今にも大爆笑しそうで、顔をプルプル振るわせて、口を無理やり閉じていた。


「何がおかしいんですか!」


「はっはっはっ!いや、悪い!くっ・・・ふっ、はっはっは!」


 結局、旅人さんは街のど真ん中で大爆笑した。

 その声の大きさから、周りからも注目を浴びてしまって、視線が俺と旅人さんへと集まる。

 勘弁してほしい。


「それで、どうしましょう。今日・・・・・・」


 しょんぼりしている俺を気の毒に思ったのか、旅人さんはひとしきり笑った後に、俺の肩に手を置いた。


「仕方がないな、街の外にでも出て、狩りでもして遊ぼうか」


「せっかく街に来たのに、やることは街の外で狩りですか?!」


 俺の言葉を聞いて、旅人さんは、ビシッと親指を立てた。


「別に旅なんだから、何したって自由だろ?それに、モンデの予定は、失敗に、くふっ、終わったんだし、さ、くふふふ・・・」


「んぐぅ・・・・・・」

 

 旅人さんは、笑い声を漏らしながら話した。


 そう言われてしまっては、何も言い返すことができない。

 結局、俺は旅人さんの言う通りに従って、その日は街の外で狩りをすることにした。

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