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その勇者は魔王と同じだった。  作者: 白石アキラ
第五章「少年と旅人」
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第四十一話「モンデのいつもじゃない一日」

 俺、モンデは街へと出かけていた。

 学校ではいつもシックと居るが、休日に一緒に居ることはほとんど無い。

 彼女が何をしているかも知らないし、知ろうともしない。

 別に彼女も隠しているわけではないと思うが、わざわざ休みの時に何してるか聞くのは、相手は女の子だし、俺にとっては、やっぱりちょっと恥ずかしい。

 

 そういうわけで、俺はいつものように一人で外出することにした。

 

「何しようかな・・・・・・」


 いつも街に出ることはないから、たまには出てみようと来ただけなので、特別予定は決めていなかった。

 とりあえず、街中を歩くとした。


 すぐ目についたのは、武具店だった。

 学校では支給された物を使っていたので、自分で武器を買ったことはなかった。

 金持ちの生徒が、自分で色々揃えたりしているのを、見たことがあるが、俺には無理な話だ。


「いらっしゃい」


 無愛想な中年男性が、カウンターで膝をついて座っていた。

 客が来たにもかかわらず、歓迎する気は全く無さそうに見える。

 お客様は神様だ、とまでは言いたいわけではないが、ちょっと気分が悪い。

 

 とにかく、そんな店員のことは無視して、商品を見ることにしよう。

 接客態度がどうであれ、商品が良ければとりあえず良し、だ。


「うわぁ・・・・・・」


 銀色に煌めくロングソードや、まるで鏡のように透き通った鎧。

 今まで自分が使ってきたものに比べて、見た目の綺麗さはまるで違っていた。

 性能は使ってみないと分からないが、きっと素晴らしいものなんだろう。


「うっ・・・・・・」


 値段を見てみると、信じられないぐらい高かった。

 おそらく、この店の目玉商品みたいなものなのだろう。

 自分がもし大人になったとしても、こんなに高い買い物をする勇気が出るか分からないぐらい、高価だった。

 誰もが躊躇してしまうだろう。


 レイス先生は、これぐらい優れた装備をしているのだろうかか。

 でも、あの人なら、一番大事なのは自分の力だと考えていそうだけども。


 とにかく、高い装備は俺の手が届くような代物じゃない。

 雑多に、大量の剣が入ってる樽が、店内にはあった。

 俺はその樽の剣を一本一本取り出して見る。


「うーん・・・・・・」


 これはこれで、学校で支給されているものよりも質が落ちる。

 しかも、決して安い値段ではないのだ。

 このレベルのものなら、わざわざ買う必要などない。

 そう思うと、学校から支給されたものは、結構良いものだったのかも。


 学校のものより質が良い物でなくても、少し値段が張ってしまうものだったので、俺が買いたいと思えるような物は、ここには無いかもしれない。

 もう用がなくなったので、店を出ることにした。


「チッ」


 はっきりと聞こえるほどに、大きな音で店主が舌打ちをした。

 完全に冷やかしに思われてしまったのだろう。

 それとも、子供が来る場所じゃないと言いたかったのだろうか。

 でも、俺も見るだけ見て、何も買わずに帰ろうとしてるし、何となく申し訳なさがある。

 俺はそそくさと店を出て行った。


「ふぅー・・・・・・」


 怖かった。

 大人になって、お金いっぱい手に入るまでは、あの店にはもう行かないようにしよう。


 またしても、次に行く場所を決めていないので、ぶらぶらとそこら辺を歩くことにした。

 街はすごく栄えていた。

 モンデ自身、ヒューゼ王国の出身で、それもあまり田舎の方ではないとこで育ったが、今モンデが居る場所は、国内でもかなりの繁華街。

 その人の量には、圧倒されてしまう。


 突然、自分の腹の音が鳴った。

 気づいたら、ただ歩いているだけで相当時間が経っていた。

 あまり街に出ないだけあって、街並みや人混みを見ているだけで、時間が経つのを忘れてしまうぐらいには、面白かった。


 お腹が空いてきたので、食事をすることにした。

 やっぱり、ここに来たのなら、食事をするならマナさんの食堂だ。

 というか、行き慣れた場所が、レイス先生に紹介された、ここしか無い。

 色んな場所に挑戦してもいいけど、マナさんの食堂の料理は美味しいから問題ない。

 それに、他に客が居ないから、落ち着いて食事ができるしね。


「いらっしゃいませー!あ、モンデ君!」


 店に入ると、いつもと同じように、マナさんが笑顔で接客をしてくれた。

 さっきの武具店に比べて、マナさんの笑顔は気分が良くなる。


「今日は一人です」


 俺は右の人差し指を立てた。

 レイス先生が居ない時は、シックとここに来ることもないし、正確には、今日も一人、だが。

 でも何となく、今日は一人、って言いたい。


「了解!好きな席にどうぞー!」


 マナさんに言われるがままに、食堂の入り口から遠く離れた、奥の方の席に座った。

 相変わらず、この食堂は客が全く居なくて、どこでも自由に座ることができる。

 

「ローストチキンでお願いします」


「了解!」


 俺はいつも頼んでいる、ローストチキンを注文した。

 ここで頼む料理も、いつも別のものに挑戦したりせず、いつも同じ物を頼んでしまう。

 ちなみに、シックは俺と逆で、いつも違う物を注文している。

 マナさん曰く、二人のイメージと真逆、とのことらしい。


 注文を終え、ふと店内を見渡してみたら、ここだからこそ、見慣れないものが目に入った。

 俺以外に客が居る。

 普通なら別におかしなことではないが、珍しいことなので、つい気になってしまった。

 その男は、赤い髪色をしていて、全身ローブ姿なので分かりづらいが、身長は高そうだった。


「?」


「あ、すみません・・・・・・」


 視線を送っているのがバレて、目が合ってしまった。

 急いで目を逸らし、特に意味もなく、他の場所を見る。

 しかし、今度は向こうから視線が送られているのを、すごく感じる。

 気になるのは気になるが、また目が合うのも恥ずかしいので、とにかく無視することにした。


「おまたせ!ローストチキンだよ」


「ありがとうございます」


 しばらく視線から耐えていると、料理が運ばれてきた。

 これで食事に集中できるので、ちょうど良い。

 俺は、周りのことは忘れて、目の前の肉に集中することにした。


「もう、あまり他のお客さんに迷惑かけないでくださいね?」


 食べることに夢中になろうと思っていたけど、マナさんが、さっきの客に話しかけているのが、耳に入ってしまった。


「悪い、この店に客が居るなんて珍しくてな」


「ひどい、そんなこと言わなくてもいいじゃないですか」


「ごめんごめん。でも咄嗟に別の言い方、思いつかなかったんだよ」


 その男の人とマナさんは、仲が良さそうだった。

 この店にいつも人が居ないことを知っているあたり、常連の人っぽい。

 

「少年!名前なんて言うんだ?」


「?!むぐっ!」


 突然話しかけられて、思わずむせてしまった。

 見てみたら、マナさんはもう厨房に行ってて、この場には俺と赤髪の男の人しか居なかった。


「ははは、すまない。落ち着いてからでいいぞ」


 なんだか、主導権を握られている気分だった。

 いや、実際そうか。

 

 まあ、マナさんと仲が良い人っぽいし、悪い人ではない気がするので、素直に名乗ることにした。


「モンデと言います。育成学校の生徒です」


「ふぅん」


 男は、顎に手を当て、俺をジロジロ見る。

 早く解放されたい。


「今日は迷惑かけちゃったな。代金は俺が払っておくよ」


「いえ、元は俺があなたを見ちゃってたから・・・・・・」


「気持ちは分かる。この店、全く客居ないもんな」


 男は、明るい顔で話していた。

 まるで世の中に辛いことなどこれっぽいもないと言わんばかりだ。


「それじゃ、俺はもう行くよ。金はここに出しとく。ローストチキン一人前だよな?」


 そう言って男は、ローストチキン一人前の代金を、俺が座ったら先のテーブルに置き、食堂から出ようとした。


「あ、ちょっと、待ってください!あなたの名前も教えてください!」


 まだ俺は彼の名前を聞けていない。

 自分だけ名前を教えて、相手の名前を教えてもらえないなんて不公平だ。

 

 俺の声を聞いて、その男は立ち止まり、振り返った。


「俺の名前?旅人さんとかでいいよ。じゃあな!」


 結局、名前を聞くこともできず、旅人さんとやらは、食堂から出て行った。


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